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自分の生家が衰退し潰れていく様を見ていても、私は正直安心している。おかしいかもしれないが、こんな私を生み出した生家を始め、正直貴族社会自体に終焉の予兆なのだと思った。
「カナエ様・・・お気持ち察しますよ」
「お前はそれほど繊細じゃないだろう・・・」
シュトルツがカレンのことをバカにする。またいつものように懐かしい喧嘩が始まっている。
「やめてくれない?私の家のことで喧嘩してもナンセンスでしょうに・・・」
私は静かにため息をつく。
「ほらほら、またカナエに怒られてしまったじゃないか・・・」
「誰のせいだと思っているのよ!」
「いい加減にしてっ・・・破門するわよ?」
上位貴族が発する破門・・・詳細は割愛するがある意味死刑以上のインパクトのある言葉であるので、破門と聞くと震え上がってしまう。
「・・・冗談よ」
2人はそっと胸を撫で下ろす。
「なんだ、冗談ですか?あの、冗談でもその言葉だけはやめてくださいね?寿命が縮むかと思った・・・」
「安心しろ。今のコイツには破門するだけの権限もないだろうから」
シュトルツは冷静に答えた。お見事、その通りであるが。
「さて・・・もうこれ以上失うものは命くらいね。恐らくは・・・私は異端者として火炙りになるのかしら?」
「そんなに罪が重いんですか?カナエ様のなさっていることは?」
「まあ、結果として自分の家を崩壊に導いているので、非常に重たいでしょうねえ・・・」
「大丈夫ですよ。そんな時は神様にお祈りしましょう!」
聞くところによれば、カレンは敬虔な宗教家のようだった。もちろん、私は神様の存在を否定しているから、その時点で議論が噛み合わないのだが。
「そんなもの、いるわけないだろう!」
私と同意見なのか、シュトルツも叫んだ。
「だとしたら、私たちがこんな境遇に立つわけないだろうが!」
「・・・まあ、ある意味神様は強い者の味方を常にするのかもしれないね・・・」
カレンは答えた。まあ、そういうことなのだろう。
「冗談じゃない。死ぬまで私たちは戦い続けるんだ!」
シュトルツの言葉の響き・・・ある意味、カリスマのように勇ましいその響きに共感する人間が引っかかるのも、これまた不思議な運命の巡り合わせだと思った。
「その言葉、しかと聞き届けたぞ!!!」
近くの草むらから突如、大男が姿を現した。シュトルツよりもさらに良い体格で威圧感がすごかった。そのくせ、悪行を重ねているシュトルツと同じ、あるいはそれ以上の狂気的な眼力を持ち合わせていた。正直、聞き覚えのある声ではなかった。
「カナエ様・・・お気持ち察しますよ」
「お前はそれほど繊細じゃないだろう・・・」
シュトルツがカレンのことをバカにする。またいつものように懐かしい喧嘩が始まっている。
「やめてくれない?私の家のことで喧嘩してもナンセンスでしょうに・・・」
私は静かにため息をつく。
「ほらほら、またカナエに怒られてしまったじゃないか・・・」
「誰のせいだと思っているのよ!」
「いい加減にしてっ・・・破門するわよ?」
上位貴族が発する破門・・・詳細は割愛するがある意味死刑以上のインパクトのある言葉であるので、破門と聞くと震え上がってしまう。
「・・・冗談よ」
2人はそっと胸を撫で下ろす。
「なんだ、冗談ですか?あの、冗談でもその言葉だけはやめてくださいね?寿命が縮むかと思った・・・」
「安心しろ。今のコイツには破門するだけの権限もないだろうから」
シュトルツは冷静に答えた。お見事、その通りであるが。
「さて・・・もうこれ以上失うものは命くらいね。恐らくは・・・私は異端者として火炙りになるのかしら?」
「そんなに罪が重いんですか?カナエ様のなさっていることは?」
「まあ、結果として自分の家を崩壊に導いているので、非常に重たいでしょうねえ・・・」
「大丈夫ですよ。そんな時は神様にお祈りしましょう!」
聞くところによれば、カレンは敬虔な宗教家のようだった。もちろん、私は神様の存在を否定しているから、その時点で議論が噛み合わないのだが。
「そんなもの、いるわけないだろう!」
私と同意見なのか、シュトルツも叫んだ。
「だとしたら、私たちがこんな境遇に立つわけないだろうが!」
「・・・まあ、ある意味神様は強い者の味方を常にするのかもしれないね・・・」
カレンは答えた。まあ、そういうことなのだろう。
「冗談じゃない。死ぬまで私たちは戦い続けるんだ!」
シュトルツの言葉の響き・・・ある意味、カリスマのように勇ましいその響きに共感する人間が引っかかるのも、これまた不思議な運命の巡り合わせだと思った。
「その言葉、しかと聞き届けたぞ!!!」
近くの草むらから突如、大男が姿を現した。シュトルツよりもさらに良い体格で威圧感がすごかった。そのくせ、悪行を重ねているシュトルツと同じ、あるいはそれ以上の狂気的な眼力を持ち合わせていた。正直、聞き覚えのある声ではなかった。
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