婚約破棄された令嬢の細やかな異世界生活

15

「カナエ様が生家に戻った・・・」

　サリーは頭を働かせた。

「ひょっとして、自分の家を壊して復讐するのかもしれないわね」

　サリーは人の気持ちを読むことに長けていた。実際のところ、公爵家が崩壊していくのは事実であった。名目は公爵の失踪ということだが、そこに誰が関わっているのか、考えずとも導ける問いであった。

「このままだと王家に影響が波及するかもしれないわ。状況を注視しないと・・・」

　サリーとは裏腹に昼寝をしているクロビッツ様。果たして次期皇帝の器なのかと疑問視する声も少しずつ上がっているのが現状である。

「でも、私がクロビッツ様を支えないといけないから。なんとしても、クロビッツ様がクロビッツ様でいていただけるようにしないといけないから・・・」

　サリーは必死だった。恩人であるクロビッツ様がなんとしてでも皇帝になるように努力しないといけないから。

「どうしたんだ、サリー。今日も浮かない顔をしているじゃないか？」

　クロビッツ様が目を覚ます。そして、サリーに語りかける。

「いいえ、私は大丈夫ですから」

「そうか？君はいつも私の前で強がるから、まあ無理はしないようにな・・・」

　クロビッツ様のギャップが激しくて、サリーはいつも困惑することとなる。厳しいというか、ぶっきらぼうというか、そんな感じかと思えば、人のことを思いやる？優しさを持ち合わしてもいるのだ。

「私は一生クロビッツ様についていきます！」

「おおっ、よろしく頼むよ。さて、サリーが守ってくれているからもう少し眠ることにしよう・・・」

　こんな感じで鈍感であるが、サリーはクロビッツ様に仕えることを誇りにしているのだ。

「だとしたら、作戦を変えるべきかもしれない。カナエ様はクロビッツ様の婚約者には向かないかもしれない。最悪、カナエ様と敵対することになるかもしれない・・・」