婚約破棄された令嬢の細やかな異世界生活

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「カナエ様が戻ってまいりました！」

　私は正面から堂々と入り、結果として家族を驚かせることとなった。私の姿を確認してメイドたちが叫んだ。

「カナエが帰ってきただと？」

　一番敏感に反応したのは、当然の如くお父様であった。お父様は一瞬私の方を見て、ため息をついた。正直、しばらく家を空けて帰ってきた娘に対する顔や態度ではなかった。

「まあまあ、せっかく戻ってきて下さったのですから・・・あなた様ももっとカナエの姿を見てくださいな」

　お母様始め、家中の大半は正直なところ、私に同情的であった。

「そんなことを言われても・・・我が家の名誉が傷ついたことは事実だからな・・・」

「お父様、私のことはどうでも良いですか？」

　私はお父様に尋ねてみた。

「別に・・・どうでも良いというわけではないが・・・」

「よしましょうよ。そんな話は・・・ほら、カナエも喧嘩しないの」

　結果として我が家は私と完全に縁を切ったことで、公爵家として存続することが決まったようであった。そう、私を切り捨てることで達成したのだ・・・。

「やめた、もうここに私の居場所はないのね。ああっ、本当につまらない人生だったわ」

　お父様を睨みつけて、私は生家を後にした。

「こんなことではいけない。もう、私の代で終わらせた方がいいのかもしれないわね」

　私はシュトルツに声をかけ、耳打ちした。

「本当に、いいのか？」

「ええっ、仕方ないでしょう」

「・・・ある意味、君の存在が怖いなあっ・・・」

　それからしばらくして、我が公爵家は滅ぶこととなった。さようなら、お父様。お父様はどこか遠くへ行き、失踪したのだ。その原因として誰かが関与しているのか・・・それは直接私が把握する範疇を超えていた。