婚約破棄された令嬢の細やかな異世界生活

19

「ところで・・・あなた様はひょっとして、私どもを待ち伏せしていたのですか？」

　私はアーガイル様に尋ねた。

「そうだとすると、怖いですね・・・」

　カレンも言った。

「待ち伏せとは言葉遣いが乱暴であるが・・・まあ、待っていたのは事実だな」

「それは・・・私を何かに利用するため？」

「まあ、あながち間違いではないな」

「アーガイル様、まどろっこしい話はやめて、単刀直入にお話ください」

「そうか、それでは私の望みについてお伝えしよう。それはつまり、この世界のリセットである！」

　世界のリセット・・・子供っぽいというか、胡散臭いと言うか、私、カレン、そしてシュトルツは白い視線をアーガイル様に送った。

「なんだ、その目は？私のことを疑っているのか？まあ、無理もないか。いきなりこんな話をしても突拍子がないからな」

　アーガイル様が手を鳴らして合図をした。すると、草むらの背後から武装した兵士らしき屈強そうな男たちが姿を見せた。

「この者たちの姿を見てしまったからには・・・このまま帰すわけにはいかないな・・・」

「ああ、いいですよ。どうせ、ここにいる我々3人も捻くれて失う物はない・・・それこそ死場所を探しているような状況ですから・・・」

　珍しく、カレンが意味深な発言をした。なんだ、カレンは現状をしっかり理解出来ているのか、と感心した。

「そうかそうか、お前たちもまた、死場所を探しているのかっ！」

　アーガイル様は叫んだ。

「お前たちがどれほど不遇な運命を辿ってきたのか、その顔を見れば分かる。なんとなく笑っていても、その背後に潜む大きな闇・・・そいつを今解放する時だ！」

　アーガイル様から剣とピストルが配られた。

「これ以上、私が何も言わなくても良いな。ここまで来たら、もうやるしかないのだっ！」

　そう言って、王宮を指差した。

「私は自分の兄弟に虐げられ、兄弟に殺されかけた。兄弟の不正義の犠牲者・・・私に限らずお前たちもそうであろう！」

　血気盛んに正義を掲げるアーガイル様・・・このまま生きて恥を晒すくらいなら、いよいよ死の覚悟を決めて良い時だと判断した。