16 / 34
その16
しおりを挟む
「ずいぶんひどいことになってしまったようだなぁ……」
ボアジエ公爵は、娘のリンプルが収監されている牢獄へ足を運んだ。娘に王子暗殺計画疑惑がかけられていることを、ホフマン公爵から聞いて飛んできたのだ。
「お父様、私はそんなことしておりません。事実無根でございます」
「ああ、私だってそう信じたいものだ……」
ボアジエ公爵は、リンプルの言い分を信じたいと思った。しかしながら、相手はホフマン公爵である。仮に事実でないとしても、あの男が証拠を捏造し、リンプルを裁く可能性は十分あると思った。
「私がいくら君の無実を信じたところで、必ずしも神様が微笑むとは限らない。こうなったら……最後の手を使うしかないか……」
ボアジエ公爵が一人でぶつぶつと呟くのを、横で聞いている者がいた。
「それはやめたほうがいいだろう。長きにわたるボアジエ公爵家の歴史に終止符を打つことにつながりかねないからな……」
声の主は、かつてのスペンサー伯爵、ジャックだった。
「ジャック……どうしてここに?」
「どうしてって、君はその理由をよく知っているだろう」
「ああ、だが君は確か処刑されたはずじゃなかったのか?」
「上の世界ではそう伝わっているのか。残念だから、このようにしぶとく生きているよ」
「お父様?お知り合いですか?」
「ああ、知っての通り、かつてのスペンサー伯爵だ。私の旧友だ。こういう形で再会するとは、いささか残念な気もするが……生きててよかったな」
「それはどうも、ありがとう」
本当ならば、昔話などをして会話が弾むのだろうが、この2人を見ていると、どうもそうならなかった。
「君がやろうとしていること……私にはわかるぞ。そして、君の気持ちもよくわかる。しかしながら、それは掟破りではないのかな。君は私と違うじゃないか。まだ上の世界の住人だ。君の娘さんだってそうだろう。私にはよくわかっているよ」
「わかるものか。君はすっかり上の生活を忘れてしまったのだろう。こうして、下の生活になれた人間の言いそうなことだ。これ以上、一体何を信じればいいんだ?」
ボアジエ公爵は、そっと空を見つめた。
「神様、かな?」
「それは違うと、真先に否定しておこう」
ボアジエ公爵は言った。
ボアジエ公爵は、娘のリンプルが収監されている牢獄へ足を運んだ。娘に王子暗殺計画疑惑がかけられていることを、ホフマン公爵から聞いて飛んできたのだ。
「お父様、私はそんなことしておりません。事実無根でございます」
「ああ、私だってそう信じたいものだ……」
ボアジエ公爵は、リンプルの言い分を信じたいと思った。しかしながら、相手はホフマン公爵である。仮に事実でないとしても、あの男が証拠を捏造し、リンプルを裁く可能性は十分あると思った。
「私がいくら君の無実を信じたところで、必ずしも神様が微笑むとは限らない。こうなったら……最後の手を使うしかないか……」
ボアジエ公爵が一人でぶつぶつと呟くのを、横で聞いている者がいた。
「それはやめたほうがいいだろう。長きにわたるボアジエ公爵家の歴史に終止符を打つことにつながりかねないからな……」
声の主は、かつてのスペンサー伯爵、ジャックだった。
「ジャック……どうしてここに?」
「どうしてって、君はその理由をよく知っているだろう」
「ああ、だが君は確か処刑されたはずじゃなかったのか?」
「上の世界ではそう伝わっているのか。残念だから、このようにしぶとく生きているよ」
「お父様?お知り合いですか?」
「ああ、知っての通り、かつてのスペンサー伯爵だ。私の旧友だ。こういう形で再会するとは、いささか残念な気もするが……生きててよかったな」
「それはどうも、ありがとう」
本当ならば、昔話などをして会話が弾むのだろうが、この2人を見ていると、どうもそうならなかった。
「君がやろうとしていること……私にはわかるぞ。そして、君の気持ちもよくわかる。しかしながら、それは掟破りではないのかな。君は私と違うじゃないか。まだ上の世界の住人だ。君の娘さんだってそうだろう。私にはよくわかっているよ」
「わかるものか。君はすっかり上の生活を忘れてしまったのだろう。こうして、下の生活になれた人間の言いそうなことだ。これ以上、一体何を信じればいいんだ?」
ボアジエ公爵は、そっと空を見つめた。
「神様、かな?」
「それは違うと、真先に否定しておこう」
ボアジエ公爵は言った。
10
あなたにおすすめの小説
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
婚約破棄のススメ!王子の「真実の愛」見つけて差し上げます
パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢メロア・クレーベルの隣には、非の打ち所がない完璧すぎる婚約者、ジークハルト王子が君臨している。このまま結婚すれば、待っているのは「王妃教育」と「終わらない公務」という名の過労死コース……。
「嫌ですわ! わたくし、絶対に婚約破棄して隠居してみせますわ!」
決意したメロアは、入学したての学園で、王子の「真実の愛の相手(ヒロイン)」を見つけ出し、自分を捨ててもらうという作戦を開始する。
いいえ、ただ私は婚約破棄されたいだけなんです!
鏡おもち
恋愛
伯爵令嬢ロニエ・エヴァンズには、ささやかな野望があった。それは、ハイスペックすぎて重すぎる愛を持つ婚約者、第一王子アレンから「婚約破棄」を突きつけられ、実家の離れで一生ダラダラと昼寝をして過ごすこと。
ロニエは学園入学を機に、あの手この手で「嫌われる努力」を開始する。
婚約破棄されたので、その場から逃げたら時間が巻き戻ったので聖女はもう間違えない
aihara
恋愛
私は聖女だった…聖女だったはずだった。
「偽聖女マリア!
貴様との婚約を破棄する!!」
目の前の婚約者である第二王子からそう宣言される
あまりの急な出来事にその場から逃げた私、マリア・フリージアだったが…
なぜかいつの間にか懐かしい実家の子爵家にいた…。
婚約破棄された、聖女の力を持つ子爵令嬢はもう間違えない…
冷徹公爵閣下は、書庫の片隅で私に求婚なさった ~理由不明の政略結婚のはずが、なぜか溺愛されています~
白桃
恋愛
「お前を私の妻にする」――王宮書庫で働く地味な子爵令嬢エレノアは、ある日突然、<氷龍公爵>と恐れられる冷徹なヴァレリウス公爵から理由も告げられず求婚された。政略結婚だと割り切り、孤独と不安を抱えて嫁いだ先は、まるで氷の城のような公爵邸。しかし、彼女が唯一安らぎを見出したのは、埃まみれの広大な書庫だった。ひたすら書物と向き合う彼女の姿が、感情がないはずの公爵の心を少しずつ溶かし始め…?
全7話です。
【完結】猫を被ってる妹に悪役令嬢を押し付けられたお陰で人生180度変わりました。
本田ゆき
恋愛
「お姉様、可愛い妹のお願いです。」
そう妹のユーリに乗せられ、私はまんまと悪役令嬢として世に名前を覚えられ、終いには屋敷を追放されてしまった。
しかし、自由の身になった私に怖いものなんて何もない!
もともと好きでもない男と結婚なんてしたくなかったし堅苦しい屋敷も好きでなかった私にとってそれは幸運なことだった!?
※小説家になろうとカクヨムでも掲載しています。
3月20日
HOTランキング8位!?
何だか沢山の人に見て頂いたみたいでありがとうございます!!
感想あんまり返せてないですがちゃんと読んでます!
ありがとうございます!
3月21日
HOTランキング5位人気ランキング4位……
イッタイ ナニガ オコッテンダ……
ありがとうございます!!
【完結】死に戻り8度目の伯爵令嬢は今度こそ破談を成功させたい!
雲井咲穂(くもいさほ)
恋愛
アンテリーゼ・フォン・マトヴァイユ伯爵令嬢は婚約式当日、婚約者の逢引を目撃し、動揺して婚約式の会場である螺旋階段から足を滑らせて後頭部を強打し不慮の死を遂げてしまう。
しかし、目が覚めると確かに死んだはずなのに婚約式の一週間前に時間が戻っている。混乱する中必死で記憶を蘇らせると、自分がこれまでに前回分含めて合計7回も婚約者と不貞相手が原因で死んでは生き返りを繰り返している事実を思い出す。
婚約者との結婚が「死」に直結することを知ったアンテリーゼは、今度は自分から婚約を破棄し自分を裏切った婚約者に社会的制裁を喰らわせ、婚約式というタイムリミットが迫る中、「死」を回避するために奔走する。
ーーーーーーーーー
2024/01/13 ランキング→恋愛95位 ありがとうございました!
なろうでも掲載20万PVありがとうございましたっ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる