最強の薬師、婚約破棄される〜王子様の命は私の懐の中〜

岡暁舟

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その16

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「ずいぶんひどいことになってしまったようだなぁ……」

ボアジエ公爵は、娘のリンプルが収監されている牢獄へ足を運んだ。娘に王子暗殺計画疑惑がかけられていることを、ホフマン公爵から聞いて飛んできたのだ。

「お父様、私はそんなことしておりません。事実無根でございます」

「ああ、私だってそう信じたいものだ……」

ボアジエ公爵は、リンプルの言い分を信じたいと思った。しかしながら、相手はホフマン公爵である。仮に事実でないとしても、あの男が証拠を捏造し、リンプルを裁く可能性は十分あると思った。

「私がいくら君の無実を信じたところで、必ずしも神様が微笑むとは限らない。こうなったら……最後の手を使うしかないか……」

ボアジエ公爵が一人でぶつぶつと呟くのを、横で聞いている者がいた。

「それはやめたほうがいいだろう。長きにわたるボアジエ公爵家の歴史に終止符を打つことにつながりかねないからな……」

声の主は、かつてのスペンサー伯爵、ジャックだった。

「ジャック……どうしてここに?」

「どうしてって、君はその理由をよく知っているだろう」

「ああ、だが君は確か処刑されたはずじゃなかったのか?」

「上の世界ではそう伝わっているのか。残念だから、このようにしぶとく生きているよ」


「お父様?お知り合いですか?」

「ああ、知っての通り、かつてのスペンサー伯爵だ。私の旧友だ。こういう形で再会するとは、いささか残念な気もするが……生きててよかったな」

「それはどうも、ありがとう」

本当ならば、昔話などをして会話が弾むのだろうが、この2人を見ていると、どうもそうならなかった。

「君がやろうとしていること……私にはわかるぞ。そして、君の気持ちもよくわかる。しかしながら、それは掟破りではないのかな。君は私と違うじゃないか。まだ上の世界の住人だ。君の娘さんだってそうだろう。私にはよくわかっているよ」

「わかるものか。君はすっかり上の生活を忘れてしまったのだろう。こうして、下の生活になれた人間の言いそうなことだ。これ以上、一体何を信じればいいんだ?」

ボアジエ公爵は、そっと空を見つめた。

「神様、かな?」

「それは違うと、真先に否定しておこう」

ボアジエ公爵は言った。



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