婚約者から悪役令嬢だと言われてしまい、仕方がないので娼婦になります。ところが?

岡暁舟

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その1

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私の名前はエリザベスと申します。第一王子マルク様の元婚約者でした。元、と言うのは、つまり、今はもう婚約者ではないというわけです。あらぬ疑いをかけられて、私はマルク様から婚約破棄を宣告されました。もちろん、私には何の関係もない話なのです。どうして、私が王子様が大切にされている馬を虐めたり、学友の悪口を言う必要があるというのでしょうか?

私の不名誉を嘆かれた両親や、親戚たちは、私を追放することを決めました。普通、娘の不名誉を疑い、何かしらの対抗手段に出るものでしょう?ですが、誰も私の味方にはなりませんでした。

さて、身寄りが無くなった私は、生きる手段がありません。修道院生活を選べば、なんとか生き続けることはできます。ですが、それは自ら罪人として生きることを意味するわけであって、到底納得できませんでした。

手っ取り早く金を稼ぐ手段として、娼婦がありました。自分の身体を売るということは、仮にも元令嬢として考えられない話です。しかしながら、ある意味プライドを保つことができます。私目当てに訪れる客は、私の価値を見出して金を払うのです。それは、悪くない話でした。

早速、近くの娼館に出向き、娼婦としての登録を済ませました。

元令嬢という肩書が功を奏して、私はいきなり一番の人気者になりました。客のグレードも上がっていき、遂には、諸侯の相手をするようにもなりました。みんな、私がマルク様の元婚約者だと分かったら、一体どんな顔をするのでしょうか?そんなことを想像しながら、日々を送っていました。

招かれざる客……どんな業界にも存在します。娼婦の業界では、女を拉致して傷物にする可能性のある男、あるいは、相当上位の人間で、言うことを聞かざるをえない男、などです。

「一つ、お相手願いましょう。エリザベス様……」

私の本名を知っている人間は多くありません。家族、親戚、あるいは、元婚約者であるマルク様、そして、マルク様の側近たちです。

「この店は……客の提案を断ることはないとお聞きしたものですから……」

私は、彼がマルク様の元から派遣された刺客なのだと思いました。いいえ、知っています。彼は王国の礎である国王軍の総帥にして、側近中の側近であるモーリス氏なのです。

「私の情報筋によりますと……あなた様はもうどこにも身寄りがないのですね?」

私はこの時点で脱帽しました。敵うはずがありません。

「実を言いますとね、一つお頼みしたいことがあるんですよ」

「なんでしょうか?」

「私が王子様の側近として、このようなことを申し上げるのは、非常に問題のあることだと思います。しかしながら……あなた様になら打ち明けても問題ないと思いますね。私は王子様の行いに疑問を抱くようになりました。あなた様の一件も……実際のところはどうなのでしょうか?私は、あなた様が無理やりお認めになった罪について、納得がいかないのです。これは私情ではありません。王子様の行いが私情によるものだとしたら、私はこれ以上仕える気がございません……」

モーリス氏の発言は、非常に心に刺さりました。


しかしながら、モーリス氏を完全に信じることはまだできませんでした。一流の軍人は、嘘も上手なのです。私を安心させておいて、行動を監視し、何かまずいことが起これば、身体を重ねている最中に、殺されるかもしれません。

「どうかご安心ください。私はあなた様の味方です。さあ、身体を私に預けてください……」

とは言うものの、モーリス氏の求めに応じない権利など、ありませんでした。私は身体をモーリス氏に委ねてしまいました。そもそも、彼はどうして娼館にやって来たのでしょうか?女遊びなど、城の中ですればいいことなのです。

そう考えると、やはり、私を監視するため……そう考えざるをえませんでした。


「お相手頂きありがとうございました。お元気で。さようなら」

招かれざる客第一号は、そう言い残して、帰っていきました。




 
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