最愛の旦那様に先立たれて~もう誰も愛せない~

岡暁舟

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対峙

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「レイチェル!ここにいるのは分かっているんだ!さあ、とっとと出てくるんだ!」

 彼はずっと叫んでいました。私はもはや恐怖を感じませんでした。だって、死ぬ勇気を持っていましたから。彼がこの部屋にやって来て、私を切りつけてそのまま死んでしまっても、それは仕方ないと思いました。

「レイチェル……貴様は何者だ!」

 彼の前に立ちはだかったのは、予想通りニックでした。

「お客さん、いけませんなあ。ここは生憎私の邸宅なのでねえ……見ず知らずの客人を招き入れるハウスではないんですよ。他を探してくださいな……」

「貴様……レイチェルを匿っているのか?」

 彼はニックに近づきました。

「レイチェル、誰ですか?」ニックはとぼけました。

「とぼけたって無駄だ……この家にいることは全て分かっているんだ……」

「なんだ、そうなのかよ……」ニックは舌打ちして、彼に唾を吐きかけました。その仕草にとうとう彼は炎上してしまいました。

「貴様……私に向かってその態度は……もう許さん!」

 そう言って、彼はニックに殴りかかりました。

「おいおい、よしてくださいよ。あんたと戦うつもりなんてないんだから……」

「うるさい!貴様がレイチェルを誑かしたんだろう!ふざけやがって!」

「誑かしただって?笑わせるな……最初からあんたのことなんて眼中にないんだぜ……」ニックは笑いました。

「なんだって……そんなはずはない!」

「だったら、本人に聞いてみるか?おーい、レイチェル!」

 ニックが私を呼びました。

「レイチェル、出てくるな!お前はこの男に騙されているだけだ!」

 なぜだか、彼は必死に叫んでいました。これで、私の味方をしているつもりだったのでしょうか。

「なあ、レイチェル。旦那様に言ってやれよ。君の本当の気持ちを!」

 ニックが煽りたてました。

「なあ、レイチェル!お前は私の愛しい伴侶だ……そうだよな?」

 彼は言いました。何を血迷っているのか……最後まで茶番でしたね。

「バカらしい……」私はとうとう言ってしまいました。

「バカらしいだって?何がバカらしいんだ!」彼は叫びました。

「一度でも、あなた様を信じたこと全てです!」私はもう何も怖くなかったのです。ニックが援護しました。

「いいぞ、レイチェル。もっと言ってやれ!」

 私はどんどん言い続けました。彼が惨めに悶えるたび、私には快感がもたらされるのでした。
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