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元伴侶の戦い

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「お前、私を侮辱するつもりか!」彼は叫びました。

「侮辱ですって……それはこちらのセリフですよ……」

「あなたは何も分かっていないようだ……」ニックは彼を制圧しました。

「おい……放せ!!!」彼は暴れました。

「私を知っての狼藉か!」

「ああ、そんなことはどうでもいい。ただ……レイチェルを守れるならば処刑されたって平気さ。最も、お前さんを助けには誰も来ないと思うがな……」ニックは言いました。

「ふざけるな……私がこの場で死んだら……どういうことになるか分からないのか……おい、レイチェル。教えてやれよ、このわからずやに!」

「ねえ、もう止めませんか……」私は言いました。懐にはニックが託してくれたナイフを……。

「おい、お前何を持っているんだ!」

「レイチェル、君も覚悟ができたのか……」ニックは感心しました。

「おいおい……私を殺すつもりか!」彼は度胸がない……内弁慶なだけでした。この場で命が終わると思うと、身体が震えていました。

「なあ、レイチェル。何が望みだ?金か?金なら皇帝陛下に頼んで……いや、それはダメだ。ミンコフスキー王子に依頼して……いや、とにかくお前の欲しい額を教えてくれ。すぐに払ってやるから!そして美しく着飾ればいい!さすがは私の良き伴侶だ!」

 私は納得できずに首を横に振りました。

「金は要らない……そうか、ならば名誉が欲しいのか?そうそう、第二王子のアンダーソン殿下はもう自分の爵位を捨てたいとか戯言を言っていた……私だって、第二王子の地位なら将来得ることは出来るかもしれない……そうすれば、お前は第二王子の妻となる!どうだ、いい話だろう!」

 私は再び首を横に振りました。

「どうして……お前の希望はなんだ!?」

 私と彼の距離が段々と縮まりました。

「お前は何も分かってないな……」ニックは言いました。

「分かるわけない!こんな女が何を考えているのかなんて!」

「いや、お前のそう言う態度がそもそも問題だと思うけど……分からないなら仕方がないな。さあ、レイチェル。覚悟はできているな?」

 ニックの言葉に私は頷きました。

「あなたに私の残りの運命を託したい……ああ、やっと出会えた。愛しの旦那様……」

 ニックはいつしか、理想の旦那様になりました。私のために命懸けで彼を抹殺しようとする……ルーチアにばれたら大問題だったでしょう。場合によっては辺境伯爵の称号が消えるかもしれませんから。ルーチアが反対することを察したニックは、ルーチアを一時的に縛り上げて、地下室に閉じ込めたのでした。

 そこまでの覚悟……女のためにそこまで本気で向き合ってくれる男性なんて、他にいないでしょう。だから、私は彼の気持ちに答えようと思いました。ニックが……私の大切な伴侶となったその日。


 私は迷いもなく、元伴侶である彼の胸にナイフを突き宛てました。
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