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中編
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「でも、彼は恐れ多くも第一王子なのよ?私たちにできることなんて……何もないんじゃない?無理に刺激したら、処刑されるかもしれないわよ?」と彼女は悩む様子を見せた。
「だからこそ、君に必要なのは僕の力だ。僕たちは協力して彼に復讐する。君は決して、一人ではない」と私は彼女に語りかけた。
「そんな……」
「君は僕のことを白馬の王子様と言ってくれたね?だから……もう一度白馬の王子様になってみたいんだよ。君のため……」
これだけ伝えれば十分だと思った。最悪自分の力で……と思っていたのだが、彼女はやはり強い女だった。
「あなた一人にやらせるわけにはいかない。元はと言えば、これは私の問題だから……」彼女の力強い言葉に私も決意を強固にしたのだった。
まず手始めに、私たちはスミス王子を探し出すため城内を調べ回った。だが、彼を見つけることができなかった。
「どうして……いないのかしら?ひょっとして……予知能力でもあるのかしら?」
彼女はそう言った。
「予知能力だって?どうしてそう思うんだい?」
「いや、ひょっとして……。あなたのことを最初から知っていて……私たちが復讐するのを知っているとしたら、袋のネズミになってしまう……そしたら、処刑よ!」
彼女は随分と脅えていた。なるほど無理はない。これほど可憐な女の子を弄ぶ男なのだ。女を一人処刑するなんて簡単なことなのだ。それに……婚約破棄の原因はどうせ彼女が全面的に悪いってことにするんだろうが、そうすると公爵家が黙ってないはずだからな……。
「どうしよう、ねえ。ひょっとして今もこっそりと監視されているんじゃないかしら?」心配そうに尋ねた。
まあ、どちらにしても明確な根拠はない。スミス王子が私たちの命を狙っていること……そのため、私たちは彼女の言う通り監視されているってこと。あるいは、私と彼女の再会が非常に運命的なイベントであったと仮定し、だとすれば復讐を完遂させられるということ。
分からない時は、ひとまず楽観的に考える……意見は分かれるところだろうが、私は少なくともそうしている。だから、私は彼女に笑みを浮かべて言った。
「大丈夫だ。スミス王子はそこまでスマートな男じゃない。まだ僕たちの計画には気付いていないはずだ。そして、この城内のどこかで他の女たちを囲んでハーレムごっこでもしているに違いない。油断している時こそチャンスなんだ。彼の名誉を失墜させるにはちょうどいいタイミングってことかな。とにかく、もう少し探してみよう」
私は彼女を自分なりに励ました。すると、彼女は納得してくれて私の後に続いた。それ以上弱音は吐かなくなって安心した。
かれこれ1時間は経過しただろうか。長居すると怪しまれるのは確かだ。しかも、私の横にはクリスがいるのだ。時々兵士と顔を合わせる。互いに会釈し、彼女も型通りの会釈をする。彼らはきっと、私のことを不審に思うはずだ。でも、彼女が案外平然と歩くのを見て、今度は嘲笑の視線となる。
「あの女……婚約破棄されたらしいぜ?」
彼らはそんな顔をしている。本来であれば一発殴っておきたいところではあるが、ここで騒ぎを起こすと面倒なことになる。むしろ、そう言った下世話な話題に関心が向いている方がかえって都合のいい展開なのだ。
そんな兵士たちの厳重(?)な監視をくぐり抜けて、さらに城内を探し回り、ついにスミス王子がいる部屋を見つけ出した。
「意外と簡単に到着したわね……」
彼女は「簡単」と言い放った。なるほど、助けた甲斐があると思った。こういう女でなくちゃね。
「扉を開ける準備はできたかな?」私は質問した。
「ええ、もう何も怖くないわ。あなたがここにいてくれれば……。ああ、もう少し早くあなたに出会っていれば、私はこんなバカな運命を迎えなくて良かったのかもしれない。これも運命のイタズラってやつなのかしら……」
私は彼女の手を握りしめた。
「今まではそうだった……でも、ここから変えることだって、きっとできるんじゃないかな?」
だんだんかっこよくなってきたか……別に自惚れているわけではない。でも、強いて言うなら、私はずっと白馬の王子様でありたかった、というわけなのだ。
「ありがとう。勇気が出るわ!」
そう言って、彼女はなんと、足で扉を蹴っ飛ばしたのだった!これには思わずびっくり。彼女の力がすさまじかったのか、はたまた、扉がぼろかったのか、いずれにしてもすぐさま開いて中の様子を伺いしれた。私はすぐにスミス王子の姿を確認することができた。彼女は亢奮のあまり、まだスミス王子の姿を確認できていないようだった。
「…………」
彼が最初に見つめたのは私の方だった。驚き、あるいはこうなることを最初から分かっていたのか?しばらくは言葉が出ないようだった……。
「だからこそ、君に必要なのは僕の力だ。僕たちは協力して彼に復讐する。君は決して、一人ではない」と私は彼女に語りかけた。
「そんな……」
「君は僕のことを白馬の王子様と言ってくれたね?だから……もう一度白馬の王子様になってみたいんだよ。君のため……」
これだけ伝えれば十分だと思った。最悪自分の力で……と思っていたのだが、彼女はやはり強い女だった。
「あなた一人にやらせるわけにはいかない。元はと言えば、これは私の問題だから……」彼女の力強い言葉に私も決意を強固にしたのだった。
まず手始めに、私たちはスミス王子を探し出すため城内を調べ回った。だが、彼を見つけることができなかった。
「どうして……いないのかしら?ひょっとして……予知能力でもあるのかしら?」
彼女はそう言った。
「予知能力だって?どうしてそう思うんだい?」
「いや、ひょっとして……。あなたのことを最初から知っていて……私たちが復讐するのを知っているとしたら、袋のネズミになってしまう……そしたら、処刑よ!」
彼女は随分と脅えていた。なるほど無理はない。これほど可憐な女の子を弄ぶ男なのだ。女を一人処刑するなんて簡単なことなのだ。それに……婚約破棄の原因はどうせ彼女が全面的に悪いってことにするんだろうが、そうすると公爵家が黙ってないはずだからな……。
「どうしよう、ねえ。ひょっとして今もこっそりと監視されているんじゃないかしら?」心配そうに尋ねた。
まあ、どちらにしても明確な根拠はない。スミス王子が私たちの命を狙っていること……そのため、私たちは彼女の言う通り監視されているってこと。あるいは、私と彼女の再会が非常に運命的なイベントであったと仮定し、だとすれば復讐を完遂させられるということ。
分からない時は、ひとまず楽観的に考える……意見は分かれるところだろうが、私は少なくともそうしている。だから、私は彼女に笑みを浮かべて言った。
「大丈夫だ。スミス王子はそこまでスマートな男じゃない。まだ僕たちの計画には気付いていないはずだ。そして、この城内のどこかで他の女たちを囲んでハーレムごっこでもしているに違いない。油断している時こそチャンスなんだ。彼の名誉を失墜させるにはちょうどいいタイミングってことかな。とにかく、もう少し探してみよう」
私は彼女を自分なりに励ました。すると、彼女は納得してくれて私の後に続いた。それ以上弱音は吐かなくなって安心した。
かれこれ1時間は経過しただろうか。長居すると怪しまれるのは確かだ。しかも、私の横にはクリスがいるのだ。時々兵士と顔を合わせる。互いに会釈し、彼女も型通りの会釈をする。彼らはきっと、私のことを不審に思うはずだ。でも、彼女が案外平然と歩くのを見て、今度は嘲笑の視線となる。
「あの女……婚約破棄されたらしいぜ?」
彼らはそんな顔をしている。本来であれば一発殴っておきたいところではあるが、ここで騒ぎを起こすと面倒なことになる。むしろ、そう言った下世話な話題に関心が向いている方がかえって都合のいい展開なのだ。
そんな兵士たちの厳重(?)な監視をくぐり抜けて、さらに城内を探し回り、ついにスミス王子がいる部屋を見つけ出した。
「意外と簡単に到着したわね……」
彼女は「簡単」と言い放った。なるほど、助けた甲斐があると思った。こういう女でなくちゃね。
「扉を開ける準備はできたかな?」私は質問した。
「ええ、もう何も怖くないわ。あなたがここにいてくれれば……。ああ、もう少し早くあなたに出会っていれば、私はこんなバカな運命を迎えなくて良かったのかもしれない。これも運命のイタズラってやつなのかしら……」
私は彼女の手を握りしめた。
「今まではそうだった……でも、ここから変えることだって、きっとできるんじゃないかな?」
だんだんかっこよくなってきたか……別に自惚れているわけではない。でも、強いて言うなら、私はずっと白馬の王子様でありたかった、というわけなのだ。
「ありがとう。勇気が出るわ!」
そう言って、彼女はなんと、足で扉を蹴っ飛ばしたのだった!これには思わずびっくり。彼女の力がすさまじかったのか、はたまた、扉がぼろかったのか、いずれにしてもすぐさま開いて中の様子を伺いしれた。私はすぐにスミス王子の姿を確認することができた。彼女は亢奮のあまり、まだスミス王子の姿を確認できていないようだった。
「…………」
彼が最初に見つめたのは私の方だった。驚き、あるいはこうなることを最初から分かっていたのか?しばらくは言葉が出ないようだった……。
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