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その3
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出来損ないほど可愛い、と親はよく言う。バークレー伯爵一家も同様だった。長女マリーは、完璧な女を演じることに不慣れだった。対照的に、妹のローズは完璧な女を演じることが得意だった。
両親は、マリーとローズを二人とも愛した。マリーは姉として妹のローズを愛した。しかし、ローズは姉であるマリーを愛することはなかった。ローズは、貴族らしく、戦いを好んだ。そして、自分が一番であると自惚れることにたくさんの時間を注いだ。
「王子様、お姉様がお世話になっております……と申し上げたいところではありますが……お姉様は王子様のことをなんとも思っていないようですわよ?」
「そんなことはないだろう?何を言うんだ?君は?」
狼狽える男を落ち着かせるのが、ローズは得意だった。自分がか弱いことを必死にアピールし、そのままハリスに抱き着いて、耳元で戯言をいくつか囁けば、それでいいのだ。
「王子様?私のことを好きになってくださったら、きっと後悔は致しませんわよ?」
「しかし……私はマリーと婚約することを決めたのだから……」
「そんなもの、どうとでもなるじゃありませんか?私ならば、王子様の妃として、社交界の振る舞いも心得ておりますし、何よりも、王子様に対して切先を向けることもございません!」
「切先を向けるだと?」
「あら、御存じなかったのですか?お姉様は平気で人に刃物を向ける危険な女なのですよ?ああ、ご存じなかったのですね?思い込みの激しい方でございますからね、敵だと思ったら、間違いなくあなた様を切ることだって厭わないでしょう!」
「マリーは……そんなに恐ろしい女なのか?」
「ええ、そうですわ。王子様が想像なさる以上に凶暴な女なのですよ。ほら、実際にその姿をご覧になればわかるでしょう?」
ローズは、ハリスと共にバルコニーからマリーの修行を見た。
「あの真剣な眼差し……間違いなく敵を意識しているのでしょう。どうですか?お姉様にあんな風に睨まれても、それでも平気だとおっしゃるのですか?」
「しかし……」
「しかし、ではありませんよ。お姉様がなんと言ったのか知りませんけれど、あの方は自分の理想を叶えるために武力を用いるのです。それが、王子様にとって必ずしもいい結果を残すとは限らないのでございますよ!」
「そんなこと……分かっているよ」
「ならば、今すぐ分かれて、私と婚約すればいいのですよ?ねえ?そうしまししょう?王子様?」
ローズに詰め寄られて、ハリスは中々返事に苦慮した。
「それが無理と言うのなら、私が無理やりしちゃいますから!」
ローズは永遠の眠りから覚める準備を勝手に始めた。
両親は、マリーとローズを二人とも愛した。マリーは姉として妹のローズを愛した。しかし、ローズは姉であるマリーを愛することはなかった。ローズは、貴族らしく、戦いを好んだ。そして、自分が一番であると自惚れることにたくさんの時間を注いだ。
「王子様、お姉様がお世話になっております……と申し上げたいところではありますが……お姉様は王子様のことをなんとも思っていないようですわよ?」
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狼狽える男を落ち着かせるのが、ローズは得意だった。自分がか弱いことを必死にアピールし、そのままハリスに抱き着いて、耳元で戯言をいくつか囁けば、それでいいのだ。
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「しかし……私はマリーと婚約することを決めたのだから……」
「そんなもの、どうとでもなるじゃありませんか?私ならば、王子様の妃として、社交界の振る舞いも心得ておりますし、何よりも、王子様に対して切先を向けることもございません!」
「切先を向けるだと?」
「あら、御存じなかったのですか?お姉様は平気で人に刃物を向ける危険な女なのですよ?ああ、ご存じなかったのですね?思い込みの激しい方でございますからね、敵だと思ったら、間違いなくあなた様を切ることだって厭わないでしょう!」
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「ええ、そうですわ。王子様が想像なさる以上に凶暴な女なのですよ。ほら、実際にその姿をご覧になればわかるでしょう?」
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「あの真剣な眼差し……間違いなく敵を意識しているのでしょう。どうですか?お姉様にあんな風に睨まれても、それでも平気だとおっしゃるのですか?」
「しかし……」
「しかし、ではありませんよ。お姉様がなんと言ったのか知りませんけれど、あの方は自分の理想を叶えるために武力を用いるのです。それが、王子様にとって必ずしもいい結果を残すとは限らないのでございますよ!」
「そんなこと……分かっているよ」
「ならば、今すぐ分かれて、私と婚約すればいいのですよ?ねえ?そうしまししょう?王子様?」
ローズに詰め寄られて、ハリスは中々返事に苦慮した。
「それが無理と言うのなら、私が無理やりしちゃいますから!」
ローズは永遠の眠りから覚める準備を勝手に始めた。
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