俺のスパダリはギャップがすごい 〜いつも爽やかスパダリが豹変すると… 〜

葉月

文字の大きさ
215 / 217
俺のスパダリはギャップがすごい ー立花蓮sideー

椿の気持ち ①

しおりを挟む
真司‼︎

蓮は出て行く真司を追いかけようと、ドアのノブを握る。
すると、
「お兄ちゃん‼︎」
涙声の椿の声が部屋に響き、その声で蓮はピタッと動きを止めた。
「お兄ちゃん…私を置いて、真司さん…追いかけるの?」
椿の問いかけに、蓮はゆっくりと椿の方を振り返る。
「椿。俺は椿の事が大事だよ。そして真司も大切な人なんだ。今真司を追いかけないと、もう二度と俺のところへ帰ってきてくれないかもしれない。だからお願いだ椿。追いかけさせて欲しい」
蓮は悲しみと不安でいっぱいだ。

「…………。わかった…………」
しばらく黙っていた椿が口を開いたかと思うと、
「やっぱりお兄ちゃんも、私の話なんて聞いてくれないお父さんと一緒なんだ。私が話を聞いて欲しいって言っても、結局聞いてくれない。どうせ、私の言うことなんて、お父さんやお兄ちゃんにとっては、取るに足らない事なんだ…」
「椿、それは違う。椿の話もちゃんと聞く。だけど、今は待って欲しい…」
蓮は椿の手を取る。
「…お兄ちゃん。私、本当にお兄ちゃんが私の話聞いてくれるのを、本当に待ったよ。でも、私が何回連絡しても、全然聞いてくれなかったじゃん…」
「それは……」

それは椿の言う通りだ…
俺は、椿から目を背けて続けていた。
椿が連絡くれても、返事をしなかった。
『椿になんて言えばいいかわからない…』と、自分に言い訳して…

「ごめん、椿。今度こそ、ちゃんと聞くから…」
蓮が椿の顔を覗き込んだが、椿は顔を背け、
「どうせ、その場しのぎの言葉なんていらない」
蓮に握られた手を、椿は振り払い、持ってきていた大きな鞄を手に持ち、出て行こうとする。
「椿、待って……」
蓮は咄嗟に椿の手を掴もうとしたが、椿の手を掴めず、代わりに椿が持っていた鞄に手が当たり鞄が床に落ち、中身が散らばった。

‼︎‼︎
これは……

「椿……、これ……」
床に散らばった椿の荷物は、
数着の着替えと、学校の制服。
そして、勉強道具……

「もしかして、家出……、してきたのか?」
「…。お兄ちゃんには関係ないでしょ…」
散らばった荷物拾うと、椿は乱暴に鞄に詰め込む。
「関係ある!」
荷物をかき集める椿の手を蓮が止めるが、椿はその手を振りはおうとした。
「ないってば‼︎…離してよ‼︎」
椿が泣きそうになりながら、捕まれ振り解けない蓮の手を、払おうとする。
「椿‼︎」
いつも温和な蓮が大きな声を出すと、椿 体をびくりとし、蓮はそんな椿を抱きしめた。
「椿、俺が悪かった。話もちゃんと聞く。だから出ていくな」
「……」
「義母さんは、この事知ってるのか?」
椿の頭を撫でながら、蓮が優しく問いかけると、椿は首を横に振る。
「そっか…。まずは、椿の話を聞いてからだな」
その言葉を聞いて、椿が頷くと、
「お兄ちゃん…。ごめんなさい…」
そういうと、蓮の胸に椿は顔を埋めた。
「じゃあ、コーヒー煎れるから、ソファーに座って待ってて」
「うん…」
椿は素直に、蓮の言うことを聞き、
「お兄ちゃん……。真司さん、迎えに行ってあげて…」
蓮の顔を見上げ、そう呟いた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

趣味で乳首開発をしたらなぜか同僚(男)が近づいてきました

ねこみ
BL
タイトルそのまんまです。

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

電車の男 同棲編

月世
BL
「電車の男」の続編。高校卒業から同棲生活にかけてのお話です。 ※「電車の男」「電車の男 番外編」を先にお読みください

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

処理中です...