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決意 ③

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 宮殿の入り口に近づくたびに、殿下との約束を破ってしまう罪悪感と、外に出られる期待で脈拍が早くなる。
 入り口の前までくると、足が止まった。
 今ならまだ引き返せる。

 今、この扉を押せば、目の前には自室から眺めることしかできなかった園庭が広がる。
 引き返す?前に進む?

 ここが最後の決断だと思った。
 園庭に出るのも出ないのも、誰に言われたでもなく、僕自身が決めること。
 僕が最後まで責任を取ること。
 頭をクリアにして、もう一度考えた。
 僕はどうしたいのか?

「クロエ、ヒューゴ様。一つお願いがあるんだ」
「なんでしょう?」
 僕が扉のノブになかなか手を伸ばさないことを、心配そうにみていたクロエが言う。

「僕は僕の意思で園庭にでる。だからこの先、何かあっても僕の責任。何かあった時に罰を受けるのは、僕だけにしてほしいんだ。あとね、もし何かあった時、殿下は何も悪くないって、みんなに言って欲しいんだ」
 僕はクロエとヒューゴ様の目を見て言った。

 外に出ることに、僕がどうしても尻込みしていたこと。
 それは殿下との約束を破ってしまうこともそうだけれど、僕がしたことで誰かに迷惑をかけてしまうかもしれないということ。
 自分でしたこと、決めたこと、それは自分で責任をとらないといけない。
 もし何かあれば優しいクロエとヒューゴ様は、きっと僕を庇ってくれると思う。
 だからどうしても外に出る前に、責任は僕自身が取ることを、しっかりと伝えておきたかった。

「でもお誘いしたのは私です。ユベール様だけが罰を受けるのは……」
「クロエ。僕は僕のせいで、誰にも罰を受けてほしくないんだ。それにね、本当は殿下にも迷惑をかけたくない気持ちもあるんだ。僕は殿下との約束を自ら破る。もし何か問題があって、殿下が何か罰を下されても悪いのは殿下でなく僕だということを、みんなに話して欲しいんだ。僕のせいで殿下のことを悪く言われたくないだ」
 クロエは殿下は不器用な方だと言っていた。

 幼い頃より敵が多かったと言っていた。
 だから僕のせいで、もっと殿下のことを悪く思われたくない。
「わかりました」
 ヒューゴ様がいい、
「でも、ユベール様だけ罰を受けるなんておかしいです」
 クロエは難色を表す。

「クロエ、私たちはユベール様の気持ちを大切にするためにいるのではないのか?」
「それはそうですが……」
 クロエは歯切れが悪い。
 きっとクロエは僕を守ろうとしてくれている。

「クロエ、気持ちは本当に嬉しいよ。クロエが僕を守りたいのと同じように、僕もクロエを守りたいんだ。僕は僕が大切だと思う人たちを、守っていけるようになりたいんだ」
 どうか僕のこの気持ちがクロエに届きますように……。

「わかりました。私たちはユベール様のご意志に従います」
 心配そうに見つめていたクロエの表情が、ふっと緩んだ。
「ヒューゴ様、クロエ、ありがとう」
 僕の気持ちを汲んでくれた2人にお礼をいうと、僕は扉のノブを回した。
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