39 / 109
決意 14
しおりを挟む
死が目の前に近づき、体が震え奥歯同士がガチガチとあたる。
「わかった」
殿下の低い声が静かにし、ヒューゴ様の頭上の高くに振り上げられた。
父様、母様、兄様、姉様!力を貸して!
お願い!声よ出て!
体の奥深くに込めた力を、全身の力で爆発させる。
「ダ……ダメッ!」
声が出た。一瞬遅れて、弾けるように体が動く。
今だ!
頭を下げたまま跪いているヒューゴ様の背中に、覆い被さる。
声が出た!体が動いた!
できる!今の僕ならできる!
「僕です!全部、僕が決めて、僕が外に出たんです!クロエもヒューゴ様もここにいるみんな、誰も悪くないんです!全部、全部、僕自身が決めたことなんです!」
力の限り叫んだ。
また、いつ声が出なくなるかわからない。
そうなる前に、言っておかないといけないことは
全部言っておく。
「殿下、どうか僕だけに処分を」
目を大きく見開き僕を見上げるヒューゴ様の前に出て、今度は僕が殿下の前で跪き頭を下げた。
「ユベール。お前は俺との約束を破った。しかも俺がいない間にだ」
頭上から怒りに満ちた殿下の声が、僕の体に突き刺さる。
「はい」
「殺されかけたのも、忘れたわけではないだろうな」
「はい」
どんな処罰が下されるか、恐ろしくて仕方ない。
目の前の死。
本当は今すぐ立ち上がり、逃げ出したい。
閉じ込められ続ける生活にも、いつ殺されるかわからないこの環境も、もう何もかも嫌だ。
このままでは誰かに殺される前に、僕の心が死んでしまう。
何もかも放っておいてこの場から消えてしまいたい。
でも僕は僕の意思で決めた。
外に出ることを。自分の意思を通すことを。
だから受け止めるしかないんだ。
もっと何も考えられなくなるかと思っていたけれど、自分でも驚くほど頭がクリアになった。
視線の先にある殿下の靴の先をじっと見た。
「俺がどんな気持ちで言っているのか、どうしてわかってくれないんだ……」
さっきまで怒りに満ちた殿下の声だったのに、次は悲しみが満ち消え入るような声がした。
え?
見上げると、悔しそうにした下唇を噛み、瞳は悲しみに揺れている。
あんなに冷たく今にもヒューゴ様を斬りつけようとしていた殿下に、何があったの?
「どうして静かに暮らしていてくれない? 俺はお前を守りたいだけなのに……」
心の奥底にしまい込んでいた言葉たちを吐き出すように、殿下はいう。
「殿……下?」
「……」
呼びかけても返事がない。
「アレキサンドロス……様?」
「……」
殿下の目は僕を通り越して、何かを見ているようだ。
「アレク……様?」
「!!」
僕が殿下の名前を呼ぶと、殿下はハッと目を大きく見開き我にに返ったように、いつの冷たい視線に戻る。
「今回の処罰は後で告げる。部屋で大人しくしているんだ。ユベール、次はないと思え。ヒューゴ行くぞ」
殿下は踵を返し、僕たちの前から去っていった。
「ユベール様!」
殿下の姿が見えなくなった。
殿下の姿が完全に視界から消えると、その場にいた全員、脱力しその場に座り込んだ。
「わかった」
殿下の低い声が静かにし、ヒューゴ様の頭上の高くに振り上げられた。
父様、母様、兄様、姉様!力を貸して!
お願い!声よ出て!
体の奥深くに込めた力を、全身の力で爆発させる。
「ダ……ダメッ!」
声が出た。一瞬遅れて、弾けるように体が動く。
今だ!
頭を下げたまま跪いているヒューゴ様の背中に、覆い被さる。
声が出た!体が動いた!
できる!今の僕ならできる!
「僕です!全部、僕が決めて、僕が外に出たんです!クロエもヒューゴ様もここにいるみんな、誰も悪くないんです!全部、全部、僕自身が決めたことなんです!」
力の限り叫んだ。
また、いつ声が出なくなるかわからない。
そうなる前に、言っておかないといけないことは
全部言っておく。
「殿下、どうか僕だけに処分を」
目を大きく見開き僕を見上げるヒューゴ様の前に出て、今度は僕が殿下の前で跪き頭を下げた。
「ユベール。お前は俺との約束を破った。しかも俺がいない間にだ」
頭上から怒りに満ちた殿下の声が、僕の体に突き刺さる。
「はい」
「殺されかけたのも、忘れたわけではないだろうな」
「はい」
どんな処罰が下されるか、恐ろしくて仕方ない。
目の前の死。
本当は今すぐ立ち上がり、逃げ出したい。
閉じ込められ続ける生活にも、いつ殺されるかわからないこの環境も、もう何もかも嫌だ。
このままでは誰かに殺される前に、僕の心が死んでしまう。
何もかも放っておいてこの場から消えてしまいたい。
でも僕は僕の意思で決めた。
外に出ることを。自分の意思を通すことを。
だから受け止めるしかないんだ。
もっと何も考えられなくなるかと思っていたけれど、自分でも驚くほど頭がクリアになった。
視線の先にある殿下の靴の先をじっと見た。
「俺がどんな気持ちで言っているのか、どうしてわかってくれないんだ……」
さっきまで怒りに満ちた殿下の声だったのに、次は悲しみが満ち消え入るような声がした。
え?
見上げると、悔しそうにした下唇を噛み、瞳は悲しみに揺れている。
あんなに冷たく今にもヒューゴ様を斬りつけようとしていた殿下に、何があったの?
「どうして静かに暮らしていてくれない? 俺はお前を守りたいだけなのに……」
心の奥底にしまい込んでいた言葉たちを吐き出すように、殿下はいう。
「殿……下?」
「……」
呼びかけても返事がない。
「アレキサンドロス……様?」
「……」
殿下の目は僕を通り越して、何かを見ているようだ。
「アレク……様?」
「!!」
僕が殿下の名前を呼ぶと、殿下はハッと目を大きく見開き我にに返ったように、いつの冷たい視線に戻る。
「今回の処罰は後で告げる。部屋で大人しくしているんだ。ユベール、次はないと思え。ヒューゴ行くぞ」
殿下は踵を返し、僕たちの前から去っていった。
「ユベール様!」
殿下の姿が見えなくなった。
殿下の姿が完全に視界から消えると、その場にいた全員、脱力しその場に座り込んだ。
36
あなたにおすすめの小説
欠陥Ωは孤独なα令息に愛を捧ぐ あなたと過ごした五年間
華抹茶
BL
旧題:あなたと過ごした五年間~欠陥オメガと強すぎるアルファが出会ったら~
子供の時の流行り病の高熱でオメガ性を失ったエリオット。だがその時に前世の記憶が蘇り、自分が異性愛者だったことを思い出す。オメガ性を失ったことを喜び、ベータとして生きていくことに。
もうすぐ学園を卒業するという時に、とある公爵家の嫡男の家庭教師を探しているという話を耳にする。その仕事が出来たらいいと面接に行くと、とんでもなく美しいアルファの子供がいた。
だがそのアルファの子供は、質素な別館で一人でひっそりと生活する孤独なアルファだった。その理由がこの子供のアルファ性が強すぎて誰も近寄れないからというのだ。
だがエリオットだけはそのフェロモンの影響を受けなかった。家庭教師の仕事も決まり、アルファの子供と接するうちに心に抱えた傷を知る。
子供はエリオットに心を開き、懐き、甘えてくれるようになった。だが子供が成長するにつれ少しずつ二人の関係に変化が訪れる。
アルファ性が強すぎて愛情を与えられなかった孤独なアルファ×オメガ性を失いベータと偽っていた欠陥オメガ
●オメガバースの話になります。かなり独自の設定を盛り込んでいます。
●最終話まで執筆済み(全47話)。完結保障。毎日更新。
●Rシーンには※つけてます。
〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です
ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」
「では、契約結婚といたしましょう」
そうして今の夫と結婚したシドローネ。
夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。
彼には愛するひとがいる。
それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?
策士オメガの完璧な政略結婚
雨宮里玖
BL
完璧な容姿を持つオメガのノア・フォーフィールドは、性格悪と陰口を叩かれるくらいに捻じ曲がっている。
ノアとは反対に、父親と弟はとんでもなくお人好しだ。そのせいでフォーフィールド子爵家は爵位を狙われ、没落の危機にある。
長男であるノアは、なんとしてでものし上がってみせると、政略結婚をすることを思いついた。
相手はアルファのライオネル・バーノン辺境伯。怪物のように強いライオネルは、泣く子も黙るほどの恐ろしい見た目をしているらしい。
だがそんなことはノアには関係ない。
これは政略結婚で、目的を果たしたら離婚する。間違ってもライオネルと番ったりしない。指一本触れさせてなるものか——。
一途に溺愛してくるアルファ辺境伯×偏屈な策士オメガの、拗らせ両片想いストーリー。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
望まれなかった代役婚ですが、投資で村を救っていたら旦那様に溺愛されました。
ivy
BL
⭐︎毎朝更新⭐︎
兄の身代わりで望まれぬ結婚を押しつけられたライネル。
冷たく「帰れ」と言われても、帰る家なんてない!
仕方なく寂れた村をもらい受け、前世の記憶を活かして“投資”で村おこしに挑戦することに。
宝石をぽりぽり食べるマスコット少年や、クセの強い職人たちに囲まれて、にぎやかな日々が始まる。
一方、彼を追い出したはずの旦那様は、いつの間にかライネルのがんばりに心を奪われていき──?
「村おこしと恋愛、どっちも想定外!?」
コミカルだけど甘い、投資×BLラブコメディ。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる