【完結】偽りの花嫁 〜すり替えられた花嫁は冷血王子から身も心も蕩けるほどに溺愛される〜

葉月

文字の大きさ
98 / 109

罪人 ③

しおりを挟む
「待て!!」
 遠くから叫び声が聞こえる。

 その場にいた全員が声のした方を見ると、包帯で腹部をぐるぐる巻きにされ、刺された場所を押さえながらアレクが処刑台に走ってきているところだった。

「アレク!」
 アレクは生きている。
 目覚め、ちゃんと生きている。
 涙が溢れる。
「ユベール!」
 アレクは処刑台に駆け寄り、僕を抱きしめる。アレクの体温も速く脈打つ鼓動も感じる。

 これは夢じゃない。
 アレクは本当に生きている。

 刺された腹部に巻かれた包帯を見ると、血が滲み出ていて、額には脂汗が滲み出ている。
 走ったせいで傷口が開いたんだ!
「アレク、血が出てる!早く処置しないと、もっと傷口が開いてしまう」
 これ以上アレクの体に負担はかけられない。

「これぐらい大丈夫だ。それより俺は、今からしないといけないことがある。ユベール、それを俺のそばで見届けてくれるか?」
 本当はアレクの体が心配だったけど、傷口の手当をするよりも、しなくてはいけないこと。アレクが何を思っているのかわからないけど、僕もそばで見届けたい。
 大きく頷くと、アレクは僕の額に口付けをした。

「アレキサンドロス殿下。お目覚めになられ、本当に良かった……。しかしその者は殿下を殺そうとした罪人。今から罪を償わせないといけません。ですのでその罪人から離れてください」
 裁判長はキッとアレクを睨む。

「それは真実とは違うな」
 アレクは決して僕を離すまいと、抱きしめる力を強くする。

「俺に痺れ薬を盛り、刺客を招き入れたのはユベールではなくジェイダだ!」
 アレクは大声で言いきった。
「ですがマティアス様がこの罪人が殿下を刺しているのを目撃されています」
「それは嘘だ。刺された俺が違うと言っているのだから違う」
 アレクは裁判長を睨みつける。

「それは此奴を助けたいからではないですか?」
 裁判長もアレクの睨みに屈しない。
「ではその刺客に聞いてみよう」
「もしそんな者がいるのなら聞きたいものです」
「それはよかった。ヒューゴ、ここに連れてこい」
 一人の男が処刑台に連れて来られる。

「先ほどの話をしてみよ。さすれば命だけは助けてやる」
 連れて来られた男はアレクを見、そして震えながらマティアス様を見た。
「……」
「何も言わずにここで俺に殺されたいのか?さあ言ってみろ」
 今のアレクはすぐにでも、本当に目の前の男を殺す勢いがある。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました 2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。 様々な形での応援ありがとうございます!

生き急ぐオメガの献身

雨宮里玖
BL
美貌オメガのシノンは、辺境の副将軍ヘリオスのもとに嫁ぐことになった。 実はヘリオスは、昔、番になろうと約束したアルファだ。その約束を果たすべく求婚したのだが、ヘリオスはシノンのことなどまったく相手にしてくれない。 こうなることは最初からわかっていた。 それでもあなたのそばにいさせてほしい。どうせすぐにいなくなる。それまでの間、一緒にいられたら充分だ——。 健気オメガの切ない献身愛ストーリー!

処理中です...