【完結】たとえ彼の身代わりだとしても貴方が僕を見てくれるのならば… 〜初恋のαは双子の弟の婚約者でした〜

葉月

文字の大きさ
44 / 105

デート ③

しおりを挟む
 美味しい香に誘われて、一軒ずつ屋台を回っていると、一軒だけ食べ物とは違う、爽やかな香りがする店があった。

 なんだろう?
 店に並べられた商品を見ると、そこには深い青色にキラキラと光るガラスが埋め込まれた小瓶に入っている香油が並んでいる。
 一瓶手に取り香りを嗅ぐと、とても濃厚なバラの匂いがする。

「わぁ、すっごくいい香りがする」
 今度は大きく息を吸い込み、香りを嗅ぐと吸った空気が全部薔薇になった気がした。
「お目が高いね」
 中で本を読んでいた50代ぐらいの女の人が、本から目を上げ僕を見た。

「その薔薇の製油、気に入ったかい?」
 僕が手にしていた小瓶を指差す。
「それは特別な製油で、一滴の中に薔薇の花が50本も入っているんだ」
「50本も?」
 50本といえば、両手で抱えてもたないと持てない量。
「しかも厳選された薔薇で、収穫時期も20~40日ぐらいしかなくて、巷では幻の小瓶と言われているんだよ」
 どうりで特別な香りがするんだ。
 そんな幻の製油に出会ったんだ。自分のお金で買えないだろうか?
 値札についている数字を数える。
 0が1、2、3、4、5、6……。
 中指ほどの小瓶なのに、僕の所持金を遥かにこえる金額。
 厳選されている製油。高額になっても仕方ないか……。

 諦めようとした時、
「これが欲しい?」
 後で僕と店主の女の人とのやり取りを聞いていたサイモンが、話しかけてきた。
「ううん」
 所持金が足りないなら、欲しくたって買えない。
「買ってあげようか?」
「ううん、大丈夫。サイモン、他の商品も見ていい?」
「それはもちろんいいけど、本当にいいの?」
 念押しするサイモンに対して大きく頷くと、サイモンは「好きなだけ見るといいよ」と頭をなでてくれた。

 やっぱり目を引くのはあの特別な小瓶だけれど、僕の所持金で買えるものを探そう。
 他の商品をよくよく見ると、蝋燭の中に花びらが一緒に練り込まれている物や、もっと大きな瓶が置いてある。
「この瓶の中には何が入っているの?」
「それは花の香りがするマッサージオイルだよ。香りに癒されながら肌がスベスベになるって、最高じゃないかい?ほら手を出してごらん」
 言われるがまま手を出すと、瓶からとろりと薔薇の香りがするオイルを出し、手の甲にのせマッサージしてくれる。

 オイルを塗られたところはほのかに暖かくなり、いい香りも広がる。
「触ってごらん」
 さっきマッサージしてもらったところに触れると、肌が吸い付くように滑らかだ。
「サイモン、これ凄いよ!こんなにスベスベする。ほら」
 そっとサイモンが触ると、よほど気持ちよかったのか、何度も手の甲を摩る。

 サイモンの顔つきも、大人なキスをする前みたいになっていって、なんだかとてもぞくぞく気持ちいい。
 ずっと触られてたら、変な気持ちになってしまいそう。
 外でしかも店主さんの前で、そんな気持ちになるなんて!
 サッと手を引くと、サイモンもハッと我に返ったような顔をした。
「ね、効果抜群。これ、ラベンダーの香りあっておすすめだよ。今2本買ってくれたら値引きするよ」
 提示された金額を見ると、僕の所持金でも買える金額。

「じゃあ、2本ください」
「お買い上げありがとね」
 僕からお金を受け取り、袋にいれた商品を手渡してくれた時、
「はい、これはおまけ。この飴は旦那と2人っきりの時に、食べるんだよ」
 と一粒ずつ白い紙で梱包された飴が袋の中に数個入った物を、サイモンには気付かれないように渡してくれた。

「ありがとう」
 僕もサイモンに気づかれないように小声でお礼を言うと、店を後にした。
しおりを挟む
感想 158

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

ちゃんちゃら

三旨加泉
BL
軽い気持ちで普段仲の良い大地と関係を持ってしまった海斗。自分はβだと思っていたが、Ωだと発覚して…? 夫夫としてはゼロからのスタートとなった二人。すれ違いまくる中、二人が出した決断はー。 ビター色の強いオメガバースラブロマンス。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

もう一度、その腕に

結衣可
BL
もう一度、その腕に

完結|好きから一番遠いはずだった

七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。 しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。 なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。 …はずだった。

僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた

いちみやりょう
BL
▲ オメガバース の設定をお借りしている & おそらく勝手に付け足したかもしれない設定もあるかも 設定書くの難しすぎたのでオメガバース知ってる方は1話目は流し読み推奨です▲ 捨てられたΩの末路は悲惨だ。 Ωはαに捨てられないように必死に生きなきゃいけない。 僕が結婚する相手には好きな人がいる。僕のことが気に食わない彼を、それでも僕は愛してる。 いつか捨てられるその日が来るまでは、そばに居てもいいですか。

処理中です...