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お茶会その2
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「それでその時お母様が、怒ったのよ」
何処か歪なままお茶会が進む。
愛敵であるカルミアと話したくないのか。クローディアはギルバートと話してばかりいた。
「それでお姉様が」
「ディア」
ギルバートの突き放すような冷たい声が制する。
「俺とばっかり喋ってるけど、カルミアと親睦を深めたいんじゃなかったのか?」
「ちょ、ちょっと!!」
クローディアは頬を赤らめた。
「た、たしかにそうは言ったけど....」
「いつまで意地を張ってるんだ?このまま俺に一方的に喋ってても親睦は深まらないぞ」
「......」
クローディアは何か考え込むように俯いた。
そして数秒。数分経過した頃。
意を決したのか、ぽつりぽつりと喋りだした。
「確かに貴方のことは認めてないけど、いずれは側室に迎えられるんだものね。私は派閥を作りたいわけじゃないの」
正妻と側室。
様々な思惑が渦巻く王宮では派閥が作られるのが鉄板だ。
「親睦を深めたくて今日のお茶会に呼んだのだけど、なんだか貴方を見てたらもやもやして。ギルバートとばっかり喋ってしまったわ。ごめんなさい」
クローディアは気づいてないだろうが、それはおそらく嫉妬心からくるものだろう。
随分とギルバートは好かれているな、とカルミアは思った。
クローディアはカルミアに嫉妬する程ギルバートが好きなのだ。
ーーカルミアと同じように。
胸がきゅっと締め付けられるような気分になる。
「クローディア様、気にしないで下さい。僕も意地を張っていましたから」
「クローディアじゃないわ!ディアって呼んで」
「...しかし」
「私が良いって言ってるからいいの!私もカルミアと呼ぶわ。敬語も不要よ」
本来、身分が下の者が愛称で呼ぶのは失礼な事。ましてや相手は王女様だ。
敬語もつけないで喋るなんて考えられない。
しかしクローディアはどうしても親睦を深めたいらしい。
「ディア」
そう呟くと、クローディアはやんわりと微笑んだ。
ーーそれから二人は色々な話をした。
「へぇ。じゃあアーダルベルトでは侍女にも招待状出さないといけないのね」
「そうみたいだよ。」
「面白いわね。隣国なのにこんなにも文化が違うなんて」
クローディアはマカロンを口に頬張り、飲み込んだ。
「次は僕がお茶会に招待するよ」
「あら、楽しみにしてるわ」
育った環境も、ましてや国も違う相手と話すのは新鮮で話は弾む。
あっという間に時間は過ぎ去り、気付けばお茶会も中盤に差し掛かっていた。二人の間にあった溝は確かに失くなりつつあった。
そんな時だった。
「痛っ」
不意にクローディアは痛みで顔を歪ませた。
「お嬢様!?」
「だ、大丈夫よ。少しお腹がズキズキしただけ」
「大変。侍医を呼ばないと」
「呼ばなくていいわ!ほんちょっと痛んだだけだから」
「どうしたの?」
何処か病気でも患っているのだろうか、と心配になったカルミアはクローディアに尋ねた。
クローディアは怪訝そうに首をかしげた。
「あら、ギルバートから聞いてないの?」
「何も」
「まぁいいわ。いずれ分かることだものね」
クローディアは愛おしむようにお腹を擦って、言った。
「ーー実はここに子供がいるのよ」
カルミアは耳を疑った。
「子、供?」
誰との?という言葉が喉元まででかかったが、ぐっと飲み込む。誰との子なんて聞かなくても分かる。一人しかいないだろう。
ーーギルバートとの子だ。
「どういうこと、ギルバート」
恐る恐るギルバートに問う。
ギルバートは悪びれもせず言った。
「どういうことも何も、クローディアの言った通りだよ。」
「違う。僕が聞きたいのは、そういうことじゃない。どうして何も言ってくれなかったんだってことだよ」
子供が出来た。
そんなの一言だって、聞いていない。
いずれは子をなすだろうと思っていたが、こんな早くだなんて思ってもいなかった。
「...適切なタイミングじゃないと思ったからさ。今のカルミアに言ったら、嫉妬に狂うと思って」
確かに津波のように押し寄せてきた嫉妬心でどうにかなりそうだった。
しかしそれと同時に、内臓が震える程の激しい怒りも抱いている。
「ふざけるな!!!」
カルミアはテーブルをバンっと叩き、立ち上がった。
クローディアはびくりと肩を揺らし、怯えたような表情を浮かべた。
「カルミア?何でそんなに怒ってるの?」
「何で?何でってそんなの」
....ギルバートが子供を作った事を黙ってたからに決まってるだろう。飼われてる鳥のように僕を囲って、真実を教えないからだ。
「ギルバートが黙ってたから?」
「そうだよ。」
「でも早かれ遅かれ、嫌でも耳に入ることよ」
「確かにそうだけど。僕にだって心の準備が」
「心の準備も何も、いずれ子をなすことは分かっていたはずでしょ?それが早まっただけじゃない。何をそんなに恐れているの?」
恐れている?
僕が?
カルミアは胸の蟠りがスッと溶けるのを感じた。
ぐるぐると視界が回る感覚に、思わずポスリとソファーに腰を沈める。
確かに恐れている。
きっと子供なんて出来たら、ギルバートの愛情はそちらに向くだろうと思っていた。
僕は怖いのだ。クロエもいないあの部屋でギルバートを待ち続ける事が。
想像しただけでも、胃の奥から酸っぱい物が逆流する。
カルミアは思わず口に手を当て、俯きながら堪えた。
「ごめん。具合が悪いから部屋に戻る。茶会はまたの機会に」
するとギルバートは心配そうにカルミアの顔を覗き込んだ。
「大丈夫?送るよ?」
「いい!!ターニャをよんでくれ!!」
とにかく今はギルバートと話したくもない。それどころか顔も見たくない。夜の海に放り投げられたような気分に、カルミアはただただ塞ぎこんだ。
ーーカルミアは知らなかった。
嫉妬に染まり狂うカルミアに、ギルバートは満足そうに笑っていたことに。
何処か歪なままお茶会が進む。
愛敵であるカルミアと話したくないのか。クローディアはギルバートと話してばかりいた。
「それでお姉様が」
「ディア」
ギルバートの突き放すような冷たい声が制する。
「俺とばっかり喋ってるけど、カルミアと親睦を深めたいんじゃなかったのか?」
「ちょ、ちょっと!!」
クローディアは頬を赤らめた。
「た、たしかにそうは言ったけど....」
「いつまで意地を張ってるんだ?このまま俺に一方的に喋ってても親睦は深まらないぞ」
「......」
クローディアは何か考え込むように俯いた。
そして数秒。数分経過した頃。
意を決したのか、ぽつりぽつりと喋りだした。
「確かに貴方のことは認めてないけど、いずれは側室に迎えられるんだものね。私は派閥を作りたいわけじゃないの」
正妻と側室。
様々な思惑が渦巻く王宮では派閥が作られるのが鉄板だ。
「親睦を深めたくて今日のお茶会に呼んだのだけど、なんだか貴方を見てたらもやもやして。ギルバートとばっかり喋ってしまったわ。ごめんなさい」
クローディアは気づいてないだろうが、それはおそらく嫉妬心からくるものだろう。
随分とギルバートは好かれているな、とカルミアは思った。
クローディアはカルミアに嫉妬する程ギルバートが好きなのだ。
ーーカルミアと同じように。
胸がきゅっと締め付けられるような気分になる。
「クローディア様、気にしないで下さい。僕も意地を張っていましたから」
「クローディアじゃないわ!ディアって呼んで」
「...しかし」
「私が良いって言ってるからいいの!私もカルミアと呼ぶわ。敬語も不要よ」
本来、身分が下の者が愛称で呼ぶのは失礼な事。ましてや相手は王女様だ。
敬語もつけないで喋るなんて考えられない。
しかしクローディアはどうしても親睦を深めたいらしい。
「ディア」
そう呟くと、クローディアはやんわりと微笑んだ。
ーーそれから二人は色々な話をした。
「へぇ。じゃあアーダルベルトでは侍女にも招待状出さないといけないのね」
「そうみたいだよ。」
「面白いわね。隣国なのにこんなにも文化が違うなんて」
クローディアはマカロンを口に頬張り、飲み込んだ。
「次は僕がお茶会に招待するよ」
「あら、楽しみにしてるわ」
育った環境も、ましてや国も違う相手と話すのは新鮮で話は弾む。
あっという間に時間は過ぎ去り、気付けばお茶会も中盤に差し掛かっていた。二人の間にあった溝は確かに失くなりつつあった。
そんな時だった。
「痛っ」
不意にクローディアは痛みで顔を歪ませた。
「お嬢様!?」
「だ、大丈夫よ。少しお腹がズキズキしただけ」
「大変。侍医を呼ばないと」
「呼ばなくていいわ!ほんちょっと痛んだだけだから」
「どうしたの?」
何処か病気でも患っているのだろうか、と心配になったカルミアはクローディアに尋ねた。
クローディアは怪訝そうに首をかしげた。
「あら、ギルバートから聞いてないの?」
「何も」
「まぁいいわ。いずれ分かることだものね」
クローディアは愛おしむようにお腹を擦って、言った。
「ーー実はここに子供がいるのよ」
カルミアは耳を疑った。
「子、供?」
誰との?という言葉が喉元まででかかったが、ぐっと飲み込む。誰との子なんて聞かなくても分かる。一人しかいないだろう。
ーーギルバートとの子だ。
「どういうこと、ギルバート」
恐る恐るギルバートに問う。
ギルバートは悪びれもせず言った。
「どういうことも何も、クローディアの言った通りだよ。」
「違う。僕が聞きたいのは、そういうことじゃない。どうして何も言ってくれなかったんだってことだよ」
子供が出来た。
そんなの一言だって、聞いていない。
いずれは子をなすだろうと思っていたが、こんな早くだなんて思ってもいなかった。
「...適切なタイミングじゃないと思ったからさ。今のカルミアに言ったら、嫉妬に狂うと思って」
確かに津波のように押し寄せてきた嫉妬心でどうにかなりそうだった。
しかしそれと同時に、内臓が震える程の激しい怒りも抱いている。
「ふざけるな!!!」
カルミアはテーブルをバンっと叩き、立ち上がった。
クローディアはびくりと肩を揺らし、怯えたような表情を浮かべた。
「カルミア?何でそんなに怒ってるの?」
「何で?何でってそんなの」
....ギルバートが子供を作った事を黙ってたからに決まってるだろう。飼われてる鳥のように僕を囲って、真実を教えないからだ。
「ギルバートが黙ってたから?」
「そうだよ。」
「でも早かれ遅かれ、嫌でも耳に入ることよ」
「確かにそうだけど。僕にだって心の準備が」
「心の準備も何も、いずれ子をなすことは分かっていたはずでしょ?それが早まっただけじゃない。何をそんなに恐れているの?」
恐れている?
僕が?
カルミアは胸の蟠りがスッと溶けるのを感じた。
ぐるぐると視界が回る感覚に、思わずポスリとソファーに腰を沈める。
確かに恐れている。
きっと子供なんて出来たら、ギルバートの愛情はそちらに向くだろうと思っていた。
僕は怖いのだ。クロエもいないあの部屋でギルバートを待ち続ける事が。
想像しただけでも、胃の奥から酸っぱい物が逆流する。
カルミアは思わず口に手を当て、俯きながら堪えた。
「ごめん。具合が悪いから部屋に戻る。茶会はまたの機会に」
するとギルバートは心配そうにカルミアの顔を覗き込んだ。
「大丈夫?送るよ?」
「いい!!ターニャをよんでくれ!!」
とにかく今はギルバートと話したくもない。それどころか顔も見たくない。夜の海に放り投げられたような気分に、カルミアはただただ塞ぎこんだ。
ーーカルミアは知らなかった。
嫉妬に染まり狂うカルミアに、ギルバートは満足そうに笑っていたことに。
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