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捕獲
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「何で、そこに、いるんだい?」
おそるおそるギルバートを見る。
ギルバートの顔には、戸惑いの色が見え隠れしていた。
横にいるクローディアは、ギルバートとカルミアを交互に見た。
カルミアが鎖に繋がれている事を知らないのだろう。カルミアがこの場にいるはずがない人間だということが分からないのだ。
満月のような美が露になったことで、群衆の視線が一人、また一人とカルミアに向いた。
「見て、あの人」
「わぁ、綺麗な人」
ざわざわと波紋が広がるように、賛美の声が伝染する。徐々に記憶の中に、カルミアが刻まれていく。
「カルミア、足枷はどうした?」
ギルバートは、バルコニーの手すりから身を乗り出すように前のめりになった。
その声色は優しげだが、苛立ちを含んでいるようにも聞こえる。
カルミアは不安を紛らわせるように、ジキルを抱き寄せた。
抱いている腕に力を込めると、ジキルは心配そうにカルミアを見上げた。
「誰の仕業だ?」
「...」
「クロエか?それともターニャか?」
「違う!!クロエでもターニャでもない!!」
「じゃあ誰だよ!!!!」
ギルバートが声を荒げる。
憤怒したギルバートを初めて見た群衆は、何事かとざわついた。
「カルミア様、こっちに」
ターニャはカルミアの腕を掴み上げ、無理やり引っ張るように走り出した。
背後から、「追え!!」とギルバートの緊迫した声が聞こえ、数名の騎士達が後を追う気配がする。
人と人の間をすり付けて、カルミアは一心不乱に走った。
背後から怒号が飛び交う。
おそらく十八年間という短い人生の中で、一番必死に走っていたと思う。
捕まるわけにはいかなかった。自分と周囲の身の保全を考えると、失敗するわけにはいかなかった。
けれど普段から鍛練している騎士達に敵うはずもない。
カルミア達と騎士達の距離はゆっくりと縮んでゆく。
やがて数名いる騎士の一人にカルミアは腕を捕まれた。
もうだめだ、とカルミアは思った。
ーーそんな時だった。
「そいつから手を離せ!!!!」
ジキルが憤激の雄叫びを上げた。
その刹那、カルミアの腕から眩いばかりの光が発せられた。
強い光によって、眩んだ網膜には七色の閃光が飛び交う。
カルミアは咄嗟に目を瞑った。
ふっ、と。
カルミアの腕からジキルの重さが消える。
(...ジキル?)
カルミアは怪訝に思い、薄目を開けた。
すると視界の真ん中で、小さな黒い影が徐々に大きな黒い影に姿を変えていくのが見えた。
ーー獣の短い手足は、長い手足に。
漆黒の艶やかな毛は、パラパラと抜け落ち、滑らかな皮膚へと姿を変えた。
ピンっと張った耳は、頭部に埋もれ、形を無くす。
真っ白な光の中で、人間が作り上げられていく。
「...っ?」
目の前で爆発を起こしたかのような白々とした光はたった数秒の間だった。やがてゆっくりと収束を迎え、白に支配されていた視界が晴れていく。
ーーそして正常になった視界に魔の色を宿した人間が映りこんだ。
背を向けていて顔は分からない。けれどカルミアは、なんとなくそれがジキルなんじゃないかと思った。
「誰の許可を得ている。俺の伴侶から手を離せ」
聞いた人間に驚きを与える程、怒りを宿した冷たい声が響く。
おそるおそるギルバートを見る。
ギルバートの顔には、戸惑いの色が見え隠れしていた。
横にいるクローディアは、ギルバートとカルミアを交互に見た。
カルミアが鎖に繋がれている事を知らないのだろう。カルミアがこの場にいるはずがない人間だということが分からないのだ。
満月のような美が露になったことで、群衆の視線が一人、また一人とカルミアに向いた。
「見て、あの人」
「わぁ、綺麗な人」
ざわざわと波紋が広がるように、賛美の声が伝染する。徐々に記憶の中に、カルミアが刻まれていく。
「カルミア、足枷はどうした?」
ギルバートは、バルコニーの手すりから身を乗り出すように前のめりになった。
その声色は優しげだが、苛立ちを含んでいるようにも聞こえる。
カルミアは不安を紛らわせるように、ジキルを抱き寄せた。
抱いている腕に力を込めると、ジキルは心配そうにカルミアを見上げた。
「誰の仕業だ?」
「...」
「クロエか?それともターニャか?」
「違う!!クロエでもターニャでもない!!」
「じゃあ誰だよ!!!!」
ギルバートが声を荒げる。
憤怒したギルバートを初めて見た群衆は、何事かとざわついた。
「カルミア様、こっちに」
ターニャはカルミアの腕を掴み上げ、無理やり引っ張るように走り出した。
背後から、「追え!!」とギルバートの緊迫した声が聞こえ、数名の騎士達が後を追う気配がする。
人と人の間をすり付けて、カルミアは一心不乱に走った。
背後から怒号が飛び交う。
おそらく十八年間という短い人生の中で、一番必死に走っていたと思う。
捕まるわけにはいかなかった。自分と周囲の身の保全を考えると、失敗するわけにはいかなかった。
けれど普段から鍛練している騎士達に敵うはずもない。
カルミア達と騎士達の距離はゆっくりと縮んでゆく。
やがて数名いる騎士の一人にカルミアは腕を捕まれた。
もうだめだ、とカルミアは思った。
ーーそんな時だった。
「そいつから手を離せ!!!!」
ジキルが憤激の雄叫びを上げた。
その刹那、カルミアの腕から眩いばかりの光が発せられた。
強い光によって、眩んだ網膜には七色の閃光が飛び交う。
カルミアは咄嗟に目を瞑った。
ふっ、と。
カルミアの腕からジキルの重さが消える。
(...ジキル?)
カルミアは怪訝に思い、薄目を開けた。
すると視界の真ん中で、小さな黒い影が徐々に大きな黒い影に姿を変えていくのが見えた。
ーー獣の短い手足は、長い手足に。
漆黒の艶やかな毛は、パラパラと抜け落ち、滑らかな皮膚へと姿を変えた。
ピンっと張った耳は、頭部に埋もれ、形を無くす。
真っ白な光の中で、人間が作り上げられていく。
「...っ?」
目の前で爆発を起こしたかのような白々とした光はたった数秒の間だった。やがてゆっくりと収束を迎え、白に支配されていた視界が晴れていく。
ーーそして正常になった視界に魔の色を宿した人間が映りこんだ。
背を向けていて顔は分からない。けれどカルミアは、なんとなくそれがジキルなんじゃないかと思った。
「誰の許可を得ている。俺の伴侶から手を離せ」
聞いた人間に驚きを与える程、怒りを宿した冷たい声が響く。
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