二度目の人生は魔王の嫁

七海あとり

文字の大きさ
39 / 44

魔王

しおりを挟む
「魔王?」
「はい」
「...魔王、魔王」    


カルミアはうわ言のように魔王という言葉を繰り返した。

初めて聞く単語ではないはずなのに、スッと頭に入ってこない。衝撃的な事実に、思考が凍結してるからだろう。



「魔王ってあれだよな?魔族の王様ってことだよな?」
「それ以外何があるんですか」
「だよな」



カルミアは乾いた笑みをこぼした。
そして一呼吸置いてーー。



「はぁぁぁぁぁぁ!?」

 

王宮全域に響き渡る程の大声を出した。





(なんだって魔王がここに。・・・・いや、呼び出したのはそもそも僕なんだけど。でもまさか魔王が召還されるなんてそんなの誰も思わないって。というかあの魔笛は一体どういう仕組みなんだ?魔笛を吹いたら魔王が現れるってどういうことだよ。)

とめどない疑問が浮かんでは消える。
つまるところカルミアは混乱していた。
カルミアはジキルの両肩を掴んで、ゆさゆさと揺さぶった。

 
「ジキル!!それならそうといってくれよ!!魔物だと思って抱っこしたりとか、軽々しく頭撫でたりとかしちゃっただろ!!」
「こ、こらカルミア、辞めなさい。そして敬語をつかいなさい敬語を」
「別に、いい」




カルミアは揺さぶる手を止めた。
頭一分背の大きいジキルを見上げる。
暗闇に浮かぶ緋色の瞳が、カルミアを射抜く。


「ジキル様」
「ジキルでいい」
「・・・でも」
「いいと言ったらいい。お前は特別だ」

 
そう言ってジキルはカルミアの頭を撫でた。
宝物を扱うような手つきに不思議な錯覚を覚える。
初めて触れられたはずなのに、なんだか懐かしいような気がするのは何故だろう。

二人は出会って間もないというのに、親しげな雰囲気を醸し出している。

ヨハンはそんな二人の様子を複雑そうに見つめ、けれど諦めたようにフッと息を吐いた。


「まぁ、聞きたい事は山ほどあるでしょうが、ギルバートに見つかってしまった今、ここも危険だ。早くこの王宮から抜け出して、フロレーテ家が所有している別荘に向かいましょう。カルミアに会わせたい人もいますしね」
「会わせたい人?」
「ええ。きっと会ったら驚くと思いますよ」



そう言って、ヨハンは悪戯っぽく笑った。
ヨハンが門まで歩きだそうと、カルミアに背を向ける。





「ーー待ってヨハン」

 

カルミアは慌ててヨハンの腕をつかんだ。
ヨハンの視線とカルミアの視線が交差する。

 

「・・・・・一つだけ教えて欲しい。何でそこまで、僕のためにしてくれるんだ?」
「何でって、友達だからでしょう?友達を助けたいと思うのは当然じゃありませんか?」
「それはそうだけど。でもたった数日会っただけの友達のために度が過ぎてるというか」



長年夢見てきたものを、そう簡単に諦められるもの?

計画がギルバートに知られたら、どんな報復が待ってるかも分からないのに、身の危険をおかしてまで、逃亡の手助けしようと思うもの?



カルミアは不思議で仕方なかった。



「...頃合いですかねぇ」
「...え?」
「いいえ、何でもありません。確かになんでもかんでも友達で片付けてしまうのはよくないですね。カルミアが気付いている通り、純粋な善意だけではありません」



ヨハンはゴホンと咳払いをした。

心なしか頬はほんのり桜色に染まっている。



「――私は、あなたが好きなんですよ。カルミア」


カルミアの瞳が限界まで開かれる。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

従者は知らない間に外堀を埋められていた

SEKISUI
BL
新作ゲーム胸にルンルン気分で家に帰る途中事故にあってそのゲームの中転生してしまったOL 転生先は悪役令息の従者でした でも内容は宣伝で流れたプロモーション程度しか知りません だから知らんけど精神で人生歩みます

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 最終回まで予約投稿済みです。 毎日8時・20時に更新予定です。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...