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【17章・沈黙を切り裂いて/祷SIDE】
『17-5・才能』
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シルムコーポレーションのヘリに乗っていたあの男性は、加賀野さんの魔法を見て即座に魔女という可能性に行き着いた。そして魔女であれば保護するとも言っていた。救助任務に来たわけではない、と救助を拒否していたにも関わらず。
シルムコーポレーションは魔女について知っており、そして魔女を集めていた。シルムコーポレーションは製薬会社だ。安直な連想だという事を否定できないが、それでもゾンビ化ウイルスに対する研究を行っているとしたら。救助目的でないヘリを、この状況で飛ばしている理由が、ゾンビや魔女の研究だとしたら。
明瀬ちゃんや佳東さんは魔法の才能があった。そして、二人ともゾンビに噛まれても感染する事は無かった。明瀬ちゃんは最初にゾンビに遭遇した時に噛まれたが変化はなく。佳東さんが実は噛まれていた事を、小野間君が明かしていた。これは偶然だろうか。
明瀬ちゃんが私の言葉に腕を組んで唸る。
「魔法の才能を持っている人がゾンビへの抗体を持ってるってことはさ、ざっくり言うと魔女と普通の人と違うリンパ球を持ってるってことじゃん? 過去にゾンビウイルスに感染してるわけないし」
「うん」
「じゃあ、魔女って何なの。そもそもさ、魔法って何なんだろ」
その問いの答えを私は知らない。魔法とは、私にとってはそもそも存在して当然の物であったから。だから、魔法とは当たり前にあって、「そういう」ものであると理解していた。故に、魔法を科学的に説明する事は出来なかった。
その原理が分かっていないからだ。魔法を起こす手順や方法は知っている。けれども、それがどんな原理で発生しているのかは、私は知らない。
「例えば祷の魔法はさ、炎を起こすけどさ。それってどういう仕組みなのか分かんないんでしょ」
炎を起こす手段は知っている。呪文を唱えて、どの様な炎を起こすかイメージする。それは非常に感覚的なもので、魔女の知識は体系的にそれを捉える為にある。
明瀬ちゃんの言葉は続く。
「私達の世界には悪魔も精霊もいないんだよ。マナだとか魔力だとかそんなものもないんだ。この世界で炎が燃える為には、其処には酸素と可燃性の物質、何より火種がいるわけ。それは魔法じゃなくて科学なんだよ」
この世界の全ては突き詰めれば科学でしかない。魔法だって同じ筈だった。まだ解明がされていないだけで、もしくは誰も調べていないだけで、最後は科学の言葉によって説き伏せられなければならない。何故なら、私達の世界はゲームでも映画でもなく、科学と数式で成り立つ世界であるから。
かつて天災が神の怒りだと信じられた様に、かつて流行病が呪いだと信じられた様に、この世界の全ての事象はいくら「神秘がかっていても」、いずれ科学で解明されていくものの筈だった。
「これから、あたしの家に、向かっても良い? 魔女について調べたいの。あたしの家なら、魔女に関する文献が揃ってるから」
黙って話を聞いていた加賀野さんがそう言った。
加賀野さんの家は伝統ある魔女の家系だと聞いている。そうであれば、確かに魔女に関しての資料は揃っているだろう。だが、つまりそれは、ホームセンターを離れると言う事に他ならない。此処には、食料と安全、居住性がある程度確保されている。短期的な生存を考えた時、最適な場所ではあった。
「良いの?」
「此処にいても助かるわけじゃないわ」
確かにその通りではあった。私達はヘリに救助の可能性を見出していたが、それが潰えた以上、他の方法を考えなければならない。別の組織に救助を期待するにせよ、自力で生きていくにせよ、此処に残っていてはどちらも不可能ではある。
けれども、どうすれば良いのか私に分からない。加賀野さんの家で魔女についての情報を手に入れたとして、あわよくばその真実の深淵に近付いたとして、それでこの世界が変わるわけでも、私達が助かるわけでもない。魔女にゾンビへの抗体があったとしても、私達がそれをどうすることも出来ないし、ゾンビで溢れた世界を救えるわけでもない。
「あたしは、こうなったら行けるとこまで行ってやろうと思うわけ」
加賀野さんが、立ち上がる。床に置いていたチェーンソーを担いで、そうして私の目を見た。射貫かれそうな鋭い視線と、強い意志を感じる瞳。決意めいた言葉を彼女は口にする。
「最終的にシルムコーポレーションに向かうっていうのは、どう?」
シルムコーポレーションは魔女について知っており、そして魔女を集めていた。シルムコーポレーションは製薬会社だ。安直な連想だという事を否定できないが、それでもゾンビ化ウイルスに対する研究を行っているとしたら。救助目的でないヘリを、この状況で飛ばしている理由が、ゾンビや魔女の研究だとしたら。
明瀬ちゃんや佳東さんは魔法の才能があった。そして、二人ともゾンビに噛まれても感染する事は無かった。明瀬ちゃんは最初にゾンビに遭遇した時に噛まれたが変化はなく。佳東さんが実は噛まれていた事を、小野間君が明かしていた。これは偶然だろうか。
明瀬ちゃんが私の言葉に腕を組んで唸る。
「魔法の才能を持っている人がゾンビへの抗体を持ってるってことはさ、ざっくり言うと魔女と普通の人と違うリンパ球を持ってるってことじゃん? 過去にゾンビウイルスに感染してるわけないし」
「うん」
「じゃあ、魔女って何なの。そもそもさ、魔法って何なんだろ」
その問いの答えを私は知らない。魔法とは、私にとってはそもそも存在して当然の物であったから。だから、魔法とは当たり前にあって、「そういう」ものであると理解していた。故に、魔法を科学的に説明する事は出来なかった。
その原理が分かっていないからだ。魔法を起こす手順や方法は知っている。けれども、それがどんな原理で発生しているのかは、私は知らない。
「例えば祷の魔法はさ、炎を起こすけどさ。それってどういう仕組みなのか分かんないんでしょ」
炎を起こす手段は知っている。呪文を唱えて、どの様な炎を起こすかイメージする。それは非常に感覚的なもので、魔女の知識は体系的にそれを捉える為にある。
明瀬ちゃんの言葉は続く。
「私達の世界には悪魔も精霊もいないんだよ。マナだとか魔力だとかそんなものもないんだ。この世界で炎が燃える為には、其処には酸素と可燃性の物質、何より火種がいるわけ。それは魔法じゃなくて科学なんだよ」
この世界の全ては突き詰めれば科学でしかない。魔法だって同じ筈だった。まだ解明がされていないだけで、もしくは誰も調べていないだけで、最後は科学の言葉によって説き伏せられなければならない。何故なら、私達の世界はゲームでも映画でもなく、科学と数式で成り立つ世界であるから。
かつて天災が神の怒りだと信じられた様に、かつて流行病が呪いだと信じられた様に、この世界の全ての事象はいくら「神秘がかっていても」、いずれ科学で解明されていくものの筈だった。
「これから、あたしの家に、向かっても良い? 魔女について調べたいの。あたしの家なら、魔女に関する文献が揃ってるから」
黙って話を聞いていた加賀野さんがそう言った。
加賀野さんの家は伝統ある魔女の家系だと聞いている。そうであれば、確かに魔女に関しての資料は揃っているだろう。だが、つまりそれは、ホームセンターを離れると言う事に他ならない。此処には、食料と安全、居住性がある程度確保されている。短期的な生存を考えた時、最適な場所ではあった。
「良いの?」
「此処にいても助かるわけじゃないわ」
確かにその通りではあった。私達はヘリに救助の可能性を見出していたが、それが潰えた以上、他の方法を考えなければならない。別の組織に救助を期待するにせよ、自力で生きていくにせよ、此処に残っていてはどちらも不可能ではある。
けれども、どうすれば良いのか私に分からない。加賀野さんの家で魔女についての情報を手に入れたとして、あわよくばその真実の深淵に近付いたとして、それでこの世界が変わるわけでも、私達が助かるわけでもない。魔女にゾンビへの抗体があったとしても、私達がそれをどうすることも出来ないし、ゾンビで溢れた世界を救えるわけでもない。
「あたしは、こうなったら行けるとこまで行ってやろうと思うわけ」
加賀野さんが、立ち上がる。床に置いていたチェーンソーを担いで、そうして私の目を見た。射貫かれそうな鋭い視線と、強い意志を感じる瞳。決意めいた言葉を彼女は口にする。
「最終的にシルムコーポレーションに向かうっていうのは、どう?」
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