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【零和 一章・目覚めには、ショットガンの口付けを】
[零1-4・銃声]
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0Σ1-4
その声は、ガラスが割れる盛大な音の向こうから聞こえた。
私の視界に飛び込んできたその光景は、その微細な空気の振動すらもはっきりと感じ取れるほどに私の意識を鷲掴みにする。
背後の窓ガラスが砕け散って、その大小の欠片が空を舞う。
外から射し込んできた太陽光を受けて、ガラスの破片の断面は反射光を返し、空中にまるで虹がかかったかのようにそれは眩く煌めいた。
飛び散っていくガラスの嵐の向こうに、その黒い影を見て、私は空を仰ぐ。
私の背丈より二倍ほどあろうかという高い窓ガラス、それをその何かが外から突き破ってきたのだと言うことまでは分かった。
雹の如く降り注ぐその破片の嵐と共に、その影は空中から舞い降りる。
なびいた長い髪を見て、それが一人の少女であったと私はようやく気がついた。
彼女はロングコートとマントの合の子の様な上着を羽織っていて、その長い裾が着地の勢いで煽られるように踊る。
灰混じりの黒色のマントとは対照的に、その髪は鮮やかなブロンドだった。
横顔しか見えなかったが、私と歳は変わらないくらいに見える。
私と迫りくるゾンビの群れとの間に着地した彼女は、その手に長く、そして長方形の外見をした黒いものを抱えていた。
「耳を塞いでてください!」
その言葉と共に彼女がそれを右手で掴み左手で支える格好で前に向けた。
銃だ、と私は気付くと同時に両手の人差し指を耳の穴に差し込む。
彼女が抱える様にして持っているのはライフルの類いだった。
銃身は長方形状で全体的に角張っており、その表面は幾つもの凹凸が規則的に並んでいる。
彼女が左手を銃身の下部に添えると、それを掴んで前後に引いた。
映画で見たことがあるモーションだった。
弾倉-チャンバー-へと弾丸を送り込むリロードの動きだ。
彼女の右手の人差し指が、その引き金に触れて、躊躇いなく引き絞る。
勢いよく何かを叩き付けた様な音が反響していく。
銃声というものを初めて聞いたが、そう表現するほかなかった。
彼女から最も至近距離にいたゾンビから体液の混じった肉片が弾け散る。
肩から脇腹の辺りが大きく抉れて、弧を描くように身体の一部がなくなっていた。
その筋肉や内蔵らしき何かが露出して、その内側が人と大差ない姿を見せる。
飛び散った肉片が、床に水気混じりの音と共に落下すると同時に、そのゾンビは床に倒れ込んだ。
足元のカーペットが紅く染まる。
放たれた弾丸は一発だけのはずであったが、それが撃ち抜いたのは一点でなく一面であったころから、それがショットガンであると私は推測する。
彼女は再び銃身下部を思いきりスライドさせた。
彼女の足元に落ちた空の薬莢が金属性の光沢を返す。
ゾンビが掴みかかろうとしてくるその寸前でステップを踏んで軽やかに身を引くと、ゾンビの首元に銃口を向けた。
再度轟く銃声と共に、弾丸によって押し潰された肉とその衝撃で漏れでた血液が、ぶちゃり、と嫌な音を立てる。
ゾンビの首から上が只の肉塊へと姿を変えて宙を舞う中、脳からの電気信号を失い静止した身体を彼女のそのブーツの底で蹴り倒す。
その鮮やかな一連の動きは一切の淀みもなく、彼女は私に向けて怒鳴りながらも手を止めずに次の弾丸を装填していた。
「生存者ですか!?」
「少なくとも、ゾンビじゃない!」
私の言葉を聞くと同時に彼女は引き金を引いた。
ショットガンが無数の鉛弾をばら蒔いて、それがゾンビの皮膚を貫いていく。
今度は浅かったのか、放った一撃はゾンビの群れをよろめかせるだけであった。
しかし、その隙に彼女は私の元まで下がってくる。
そうして彼女はマントのポケットから銀色の小さな箱をPCの前に置いた。
一瞬手を翳すと、その上辺からレーザー光が漏れて、何かの機能が駆動した様に見えた。
ゾンビの呻き声が増して、床に転がった同族の死体を乗り越えてくるのが見えた。
「あたしはレベッカって言います、離脱するまで、あと10秒......いや20秒だけ待ってください!」
レベッカが私の返事も待たずにショットガンをぶっ放した。
銃声が轟く。
火薬の焦げ付く臭いが周囲に充満する。
ゾンビの肉体が、肉塊へと変わって弾け飛んでいく様子を前に私は自分の感性が既に麻痺しきっていることを改めて実感する。
一撃を叩き込んで、反動で跳ね上がった銃身を構え直し、銃身下部をスライドさせて装填に移る。
その流れるような動作のほんの僅かな隙にゾンビが一匹駆け込んで、レベッカの喉元へと手を伸ばす。
一瞬、銃声と被った呻き声。
血飛沫の向こうで彼女が身を翻して、肉片を創り上げていく。
吹き飛んだゾンビの残骸がその群れの中に突っ込み、彼等の足を物理的に止めた。
「脱出します!」
レベッカがそう叫んで先程の金属の箱を手早くマントの内側に仕舞った。
動揺して動けなかった私の手を引いて彼女は窓へと走り出した。
ショットガンの銃声と共に、撃ち抜かれた窓ガラスが砕けて割れた。
抱えていたショットガンをスリングを利用して背に回すと、腰のベルトで横に提げていたもう一丁の銃を構えた。
レベッカの手には大きすぎるくらいのサイズをしたハンドガンであったが、その銃身の下部には金属質の丸いケースらしきものが備え付けてある。
「飛びます!」
「え?」
その声は、ガラスが割れる盛大な音の向こうから聞こえた。
私の視界に飛び込んできたその光景は、その微細な空気の振動すらもはっきりと感じ取れるほどに私の意識を鷲掴みにする。
背後の窓ガラスが砕け散って、その大小の欠片が空を舞う。
外から射し込んできた太陽光を受けて、ガラスの破片の断面は反射光を返し、空中にまるで虹がかかったかのようにそれは眩く煌めいた。
飛び散っていくガラスの嵐の向こうに、その黒い影を見て、私は空を仰ぐ。
私の背丈より二倍ほどあろうかという高い窓ガラス、それをその何かが外から突き破ってきたのだと言うことまでは分かった。
雹の如く降り注ぐその破片の嵐と共に、その影は空中から舞い降りる。
なびいた長い髪を見て、それが一人の少女であったと私はようやく気がついた。
彼女はロングコートとマントの合の子の様な上着を羽織っていて、その長い裾が着地の勢いで煽られるように踊る。
灰混じりの黒色のマントとは対照的に、その髪は鮮やかなブロンドだった。
横顔しか見えなかったが、私と歳は変わらないくらいに見える。
私と迫りくるゾンビの群れとの間に着地した彼女は、その手に長く、そして長方形の外見をした黒いものを抱えていた。
「耳を塞いでてください!」
その言葉と共に彼女がそれを右手で掴み左手で支える格好で前に向けた。
銃だ、と私は気付くと同時に両手の人差し指を耳の穴に差し込む。
彼女が抱える様にして持っているのはライフルの類いだった。
銃身は長方形状で全体的に角張っており、その表面は幾つもの凹凸が規則的に並んでいる。
彼女が左手を銃身の下部に添えると、それを掴んで前後に引いた。
映画で見たことがあるモーションだった。
弾倉-チャンバー-へと弾丸を送り込むリロードの動きだ。
彼女の右手の人差し指が、その引き金に触れて、躊躇いなく引き絞る。
勢いよく何かを叩き付けた様な音が反響していく。
銃声というものを初めて聞いたが、そう表現するほかなかった。
彼女から最も至近距離にいたゾンビから体液の混じった肉片が弾け散る。
肩から脇腹の辺りが大きく抉れて、弧を描くように身体の一部がなくなっていた。
その筋肉や内蔵らしき何かが露出して、その内側が人と大差ない姿を見せる。
飛び散った肉片が、床に水気混じりの音と共に落下すると同時に、そのゾンビは床に倒れ込んだ。
足元のカーペットが紅く染まる。
放たれた弾丸は一発だけのはずであったが、それが撃ち抜いたのは一点でなく一面であったころから、それがショットガンであると私は推測する。
彼女は再び銃身下部を思いきりスライドさせた。
彼女の足元に落ちた空の薬莢が金属性の光沢を返す。
ゾンビが掴みかかろうとしてくるその寸前でステップを踏んで軽やかに身を引くと、ゾンビの首元に銃口を向けた。
再度轟く銃声と共に、弾丸によって押し潰された肉とその衝撃で漏れでた血液が、ぶちゃり、と嫌な音を立てる。
ゾンビの首から上が只の肉塊へと姿を変えて宙を舞う中、脳からの電気信号を失い静止した身体を彼女のそのブーツの底で蹴り倒す。
その鮮やかな一連の動きは一切の淀みもなく、彼女は私に向けて怒鳴りながらも手を止めずに次の弾丸を装填していた。
「生存者ですか!?」
「少なくとも、ゾンビじゃない!」
私の言葉を聞くと同時に彼女は引き金を引いた。
ショットガンが無数の鉛弾をばら蒔いて、それがゾンビの皮膚を貫いていく。
今度は浅かったのか、放った一撃はゾンビの群れをよろめかせるだけであった。
しかし、その隙に彼女は私の元まで下がってくる。
そうして彼女はマントのポケットから銀色の小さな箱をPCの前に置いた。
一瞬手を翳すと、その上辺からレーザー光が漏れて、何かの機能が駆動した様に見えた。
ゾンビの呻き声が増して、床に転がった同族の死体を乗り越えてくるのが見えた。
「あたしはレベッカって言います、離脱するまで、あと10秒......いや20秒だけ待ってください!」
レベッカが私の返事も待たずにショットガンをぶっ放した。
銃声が轟く。
火薬の焦げ付く臭いが周囲に充満する。
ゾンビの肉体が、肉塊へと変わって弾け飛んでいく様子を前に私は自分の感性が既に麻痺しきっていることを改めて実感する。
一撃を叩き込んで、反動で跳ね上がった銃身を構え直し、銃身下部をスライドさせて装填に移る。
その流れるような動作のほんの僅かな隙にゾンビが一匹駆け込んで、レベッカの喉元へと手を伸ばす。
一瞬、銃声と被った呻き声。
血飛沫の向こうで彼女が身を翻して、肉片を創り上げていく。
吹き飛んだゾンビの残骸がその群れの中に突っ込み、彼等の足を物理的に止めた。
「脱出します!」
レベッカがそう叫んで先程の金属の箱を手早くマントの内側に仕舞った。
動揺して動けなかった私の手を引いて彼女は窓へと走り出した。
ショットガンの銃声と共に、撃ち抜かれた窓ガラスが砕けて割れた。
抱えていたショットガンをスリングを利用して背に回すと、腰のベルトで横に提げていたもう一丁の銃を構えた。
レベッカの手には大きすぎるくらいのサイズをしたハンドガンであったが、その銃身の下部には金属質の丸いケースらしきものが備え付けてある。
「飛びます!」
「え?」
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