117 / 141
【零和 二章・認識齟齬の水面下】
[零2-2・部隊]
しおりを挟む
私は言われるままに頷いた。
レベッカの格好も所謂未来の服装というやつなのだろうか。
黒色のロングコートとマントの合の子の様な上着は丈が長く、膝下までの長さがあった。
下に着ているのは身体のラインにピタリと合わせたレザースーツで、それもまた黒と深い紺色で構成されていて、よく「なめして」いるようで鈍い光沢を湛えている。
首元から腰の辺りまでジッパーが伸びていて、どうやら一つつなぎの造りであるようだった。
レーサーなどが着ているものをもっと引き絞ったような感じだ。
その丈の長いマントと肌の露出を抑えたその格好は、ゾンビに噛まれない様に工夫したものな気がした。
腰と両足の太腿にはベルトで備え付けられたホルスターが付いていて、腰のホルスターの方には先程のハンドガンが収められている。
それと、観察していて気が付いたが、彼女は何かを背負っているようだった。
マントのせいで背中の方は見えなかったので気が付かなかったが、肩から伸びているベルトらしきものは、背中に背負っている何かのショルダーストラップだと分かった。
レベッカがその手に何も持たないまま、髪をかきあげ耳の辺りに触れる。
耳に装着された非常に小さなヘッドセットに指を触れたらしく、それが何かのキーであったかヘッドセッドから小さなランプの光が点滅する。
私には聞き取れなかったが、誰かと通信しているのは間違いが無かった。
数分後、ガラスの向こうで黒い影が踊って、それは突き破って室内に突入してくる。
驚く私を余所に、それは華麗に室内に着地した。
彼等、4人組の男女で、レベッカと同様の格好をしており、そしてまたワイヤーガンらしきものを持っていた。
それと共通点がもう一点、彼等は翡翠色をした粒子を引き連れていて、それが室内に充満した。
それらはたちどころに離散していき消失していく。
ワイヤーによる移動に何か関係しているのだろうか。
4人の中で最年長らしき男性が一歩進み出た。
切れ長の目元にはシワが寄り、彫りの深い顔をしている。
頬は少し痩け、顔の所々には切り傷の跡がある。
顔の造形は50代半ば位に見えるが、髪は長くそして黒かった。
彼は私の全身を、一瞬のうちに鋭く見据える。
その様子にどこか猛禽類のそれを連想した。
私が目を逸らさずにいると、彼はやや間を置いて口を開く。
「ウンジョウだ。ダイサン東京区画のハウンドを指揮してる」
ダイサン東京区画、そしてハウンド。
未だ得体の知れぬ言葉ではあるが、聞き覚えはあった。
レベッカの所属しているグループらしき何かの代表格ということになるのだろうか。
今、彼の後ろに並ぶ三人も同様にハウンドということかもしれない。
曖昧に頷く私を見て、レベッカが口を挟む。
「隊長、そう言っても分からないみたいです」
「祷です」
同意の意味を込めて私はわざとらしく肩を竦め、そして名乗った。
何か進展を望めるとは思っていなかったものの、彼は私の名前に興味を示さずに言葉を続ける。
「あの施設にいた生存者ということになるが、何処から入った?」
「気付いたらあそこにいたので、なんとも言えません。そこに至るまでの記憶もないですし」
多分記憶障害です、そんな言葉でレベッカは口出しした。
今が西暦2080年であるという現実を認め、なおかつ私が西暦2019年にいた事を長い悪夢であったと片付けないのであれば、双方の意見を擦り合わせるとそんな結論になるらしい。
西暦2080年という事実に大分歩み寄ってはいるけれども。
面倒な事に、私が今直面している現実は少なくとも私のいた時代とは確かに異なる様相ではあった。
夢なら早く醒めてくれ、そう再度自分に言い聞かせる。
ウンジョウ氏とやらがレベッカに指示を出す。
「とにかくダイサンへ帰還する。レベッカ、君が彼女を担当しろ」
「えぇー、あたしがですか」
「空中機動中にUTS15は使えないだろう。彼女を誘導する事に集中しろ。カイセ、予備のAMADEUSーアマデウスーを彼女に貸せ」
レベッカの格好も所謂未来の服装というやつなのだろうか。
黒色のロングコートとマントの合の子の様な上着は丈が長く、膝下までの長さがあった。
下に着ているのは身体のラインにピタリと合わせたレザースーツで、それもまた黒と深い紺色で構成されていて、よく「なめして」いるようで鈍い光沢を湛えている。
首元から腰の辺りまでジッパーが伸びていて、どうやら一つつなぎの造りであるようだった。
レーサーなどが着ているものをもっと引き絞ったような感じだ。
その丈の長いマントと肌の露出を抑えたその格好は、ゾンビに噛まれない様に工夫したものな気がした。
腰と両足の太腿にはベルトで備え付けられたホルスターが付いていて、腰のホルスターの方には先程のハンドガンが収められている。
それと、観察していて気が付いたが、彼女は何かを背負っているようだった。
マントのせいで背中の方は見えなかったので気が付かなかったが、肩から伸びているベルトらしきものは、背中に背負っている何かのショルダーストラップだと分かった。
レベッカがその手に何も持たないまま、髪をかきあげ耳の辺りに触れる。
耳に装着された非常に小さなヘッドセットに指を触れたらしく、それが何かのキーであったかヘッドセッドから小さなランプの光が点滅する。
私には聞き取れなかったが、誰かと通信しているのは間違いが無かった。
数分後、ガラスの向こうで黒い影が踊って、それは突き破って室内に突入してくる。
驚く私を余所に、それは華麗に室内に着地した。
彼等、4人組の男女で、レベッカと同様の格好をしており、そしてまたワイヤーガンらしきものを持っていた。
それと共通点がもう一点、彼等は翡翠色をした粒子を引き連れていて、それが室内に充満した。
それらはたちどころに離散していき消失していく。
ワイヤーによる移動に何か関係しているのだろうか。
4人の中で最年長らしき男性が一歩進み出た。
切れ長の目元にはシワが寄り、彫りの深い顔をしている。
頬は少し痩け、顔の所々には切り傷の跡がある。
顔の造形は50代半ば位に見えるが、髪は長くそして黒かった。
彼は私の全身を、一瞬のうちに鋭く見据える。
その様子にどこか猛禽類のそれを連想した。
私が目を逸らさずにいると、彼はやや間を置いて口を開く。
「ウンジョウだ。ダイサン東京区画のハウンドを指揮してる」
ダイサン東京区画、そしてハウンド。
未だ得体の知れぬ言葉ではあるが、聞き覚えはあった。
レベッカの所属しているグループらしき何かの代表格ということになるのだろうか。
今、彼の後ろに並ぶ三人も同様にハウンドということかもしれない。
曖昧に頷く私を見て、レベッカが口を挟む。
「隊長、そう言っても分からないみたいです」
「祷です」
同意の意味を込めて私はわざとらしく肩を竦め、そして名乗った。
何か進展を望めるとは思っていなかったものの、彼は私の名前に興味を示さずに言葉を続ける。
「あの施設にいた生存者ということになるが、何処から入った?」
「気付いたらあそこにいたので、なんとも言えません。そこに至るまでの記憶もないですし」
多分記憶障害です、そんな言葉でレベッカは口出しした。
今が西暦2080年であるという現実を認め、なおかつ私が西暦2019年にいた事を長い悪夢であったと片付けないのであれば、双方の意見を擦り合わせるとそんな結論になるらしい。
西暦2080年という事実に大分歩み寄ってはいるけれども。
面倒な事に、私が今直面している現実は少なくとも私のいた時代とは確かに異なる様相ではあった。
夢なら早く醒めてくれ、そう再度自分に言い聞かせる。
ウンジョウ氏とやらがレベッカに指示を出す。
「とにかくダイサンへ帰還する。レベッカ、君が彼女を担当しろ」
「えぇー、あたしがですか」
「空中機動中にUTS15は使えないだろう。彼女を誘導する事に集中しろ。カイセ、予備のAMADEUSーアマデウスーを彼女に貸せ」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる