クラウンクレイド零和

茶竹抹茶竹

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【零和 三章・多層世界に死線を引いて】

[零3-2・強襲]

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 断続的に轟く銃声がノイズとなって、ウンジョウさんの声に被る。
 ワイヤーによる移動でフレズベルクの攻撃を逃れながら、ライフルを片手で構えてぶっ放していた。
 けれどもその銃声にも弾丸にも恐れる素振りも無く、フレズベルクは滑空と急降下を繰り返してウンジョウさんを狙う。
 ウンジョウさんは動きを上手く読んでいるのかその一撃を躱していたものの、ライフルでの攻撃も有効打を上げられていなかった。
 そして。
 その弾丸が確かにその翼を撃ち抜いたけれども、それを無視して突っ込んできたフレズベルクが、ウンジョウさんのワイヤーを鉤爪に引っ掛ける。
 そして一気に急降下するとアンカーが引き剥がされる。
 空中で姿勢を崩して落下していくウンジョウさんの姿。
『そんな……隊長……嫌ぁっ!』
 アンカーを解除し下へと移動しながら、私は上空を飛ぶフレズベルクへ向けて右手を翳す。
「穿焔! 穿焔! なんで!」
 幾ら唱えても反応しない。
 これが私の現実だと、未来だと、そう誰かに言われているかの如く、風の音だけが鳴る。
 レベッカがワイヤーを張って、私の側まで移動してきた。
 右手でサブマシンガンを引き抜いて、上空のフレズベルクへと銃口を向ける。
 けたたましい銃声が数度轟いた。
 銃身が跳ね上がり、銃口から閃光が数度瞬き、弾丸を空を裂く。
 片手で放って、一点を狙い撃つのは至難の業の様で。
 ライフルの銃撃の中をフレスベルグは関せず飛んで私達の方へ狙いを定めた。
「っ、ビルの中に!」
 レベッカがビルのガラスへと弾丸を叩き込む。
 連射された弾丸は、一点に集中せず縦のラインを描くようにばら撒かれて。
 しかし、ビルのスモークガラスには細かいヒビが入っただけだった。
 この時代の高層ビルのガラスは、防弾ガラス並みの強度を兼ね備えているらしい。
 レベッカがサブマシンガンを放り捨てるように手放し、サブマシンガンに備え付けられていたストラップによって肩から銃身がぶら下がる。
 背負ったショットガンに持ち替えて、そして手早くぶっ放した。
 片手で抑えきれなかった反動によって、その銃身が大きく跳ね上がる。
 破裂音の如く銃声が轟くのに遅れて、ガラスが砕ける鋭い音がした。
 その一瞬。
「危ない!」
 私が真横のレベッカを咄嗟に突き飛ばす。
 レベッカの身体を、変色した腕が掠める。
 ビルの割れた窓ガラスから一斉に、ゾンビの腕が伸びてきて。
 私達へと飛び掛かってきたゾンビが空中を舞って落下していく。
 ビルの中から無数のゾンビが溢れ出してきていた。
 室内に密集していたその群れが、窓ガラスの割れ目から押し出されて数体のゾンビが地面へと落ちていく。
 その伸ばされた手から逃れようとして、体勢を崩した。
 ワイヤーが外れて落下するのが分かった。
 空中で身を捩る。咄嗟に撃ち出したアンカーが、ビルの壁面に食い込む。
 無理な体勢のまま無理矢理落下を引き留めた反動が身体に負荷をかけて。
 喉の奥で血の味が滲む。
 視界が一瞬暗転する。
『上っ!』
 黒い影が過った。
 私の直前に、鈍色の光沢が煌めいて。
 その巨大な鉤爪と、それを支える細身でありながら強靭な見た目をした脚部。
 鱗の様に硬く身を包む羽。
 空と視界を遮る、大きく広げられた巨大な翼。
 目の前に迫ったフレズベルクの姿を見て私は、ひどく生物離れした生き物がいたものだと場違いな感想を抱く。
 ゾンビが現れて、世界が壊れて、気が付けば未来にいて、空中を移動する対ゾンビ部隊があって、常識離れした巨大な鳥に襲われて。
 そしてそんな中で死にそうになっている。
「そんなの、認められるわけない!」
 身体を捻って張り詰めたワイヤーを大きく揺らす。
 AMADEUSの出力を最大にして、振り子の要領で真横へ身体をずらす。
 舞い降りてきたフレズベルクと擦れ違いざまに、アンカーを解除して、再度上空へアンカーを射出する。
 ワイヤーを引き上げて上空へ身体を持ち上げる。
 私の真横で銃声が轟いた。
 ワイヤーを伸ばし私の横まで高度を落としてきたレベッカがショットガンをぶっ放す。
 フレズベルクが大きく旋回して私達から距離を離す。
 足元ではビルに押し込まれたゾンビの群れがまた窓ガラスの隙間から落ちていって、地表のゾンビの群れの中に叩き付けられて、互いにひしゃげた亡骸を造り出す。
 私の横のレベッカに怒鳴る。
「あれを撃ち落とせないの!? そのショットガンで!」
「片手じゃ、当てるのなんて無理です!」
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