クラウンクレイド零和

茶竹抹茶竹

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【零和 三章・多層世界に死線を引いて】

[零3-3・信用]

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 涙目になりながらレベッカが私に叫ぶ。
 左手でWIIGを保持している必要がある以上、片手でしか銃を使えない。
 先程レベッカがサブマシンガンを撃っていたが窓ガラスの一点を狙うのも苦戦していた。
 ショットガンで窓ガラスを破壊出来たのは正確な狙いが必要なく、ある程度強引に撃てたからだ。
 フレスベルグに有効的に当てるにはある程度引きつけて撃つ必要があり、その距離で外すことは許されない。
 しかし、ショットガンを片手でぶっ放すのでは、当てるのは難しいとレベッカは言う。
 しかも、アンカーで空中に浮いた不安定な状態でだ。
 フレズベルクがその巨大な翼を空中で一度羽ばたかすと、急旋回してこちらへ向かってくる。
 レベッカと共に、ビルの壁を蹴り飛ばしながらワイヤーを巻き上げて斜め横に移動する。
 フレズベルクの鉤爪を寸前で躱したと思ったが、その鉤爪が私のワイヤーを少し引っ掛け、軌道が大きくぶれる。
 空中で体勢を整えるも、ビル壁面にぶつかりそうになって咄嗟に肩をぶつけた。
 鈍痛が骨まで染みる。
 上空へと一気に高度を上げたフレズベルクへ向けてレベッカがショットガンをぶっ放したが有効打にはならない。
 先程、フレズベルクはウンジョウさんのワイヤーを狙った節があった。
 それだけの知能があるのならば、退くにはリスクが高すぎる。私はレベッカの方を見上げて怒鳴る。
「私が抱える!」
「何を言って……」
「背中から抱えるから、両手でショットガン構えて!」
「無理です、無理! 空中で姿勢制御ですら難しいのに誰かを支えるなんて。重心も重量も反動もあるんです! そもそも背中から抱えるからってどうやって!」
 先程、レベッカに抱えられて飛んだ時、高度は急激に下がった。
 重心の崩れによる影響が大きく出るようだ、それに構造上重量制限もありそうだ。
 他のメンバーも確かに細身の人ばかりだった。
 私が小柄といえど、レベッカの背は高めでバストも大きい。
 不可能かもしれない。
「でも、あれを落とすしかない」
 隣のビルまでは長距離の移動になる。
 その無防備な状態の時にワイヤーを狙われては防ぎようがない。
 そして、今足場にしているビルはゾンビで溢れかえっている。
 上空のフレズベルクの姿が逆光の中に消えて黒い影に変わったのを見ながら、私はレベッカに言う。
「WIIGを私に預けて。フレズベルクの降下に合わせて二人で空中に飛び出す。私が両手でワイヤーを保持するから、レベッカはそのまま私に背中を預ける。ひきつけてショットガンを撃って、地表に叩き付けられる前に別れて飛ぶ」
 私の説明にレベッカが首を大きく横に振る。
 顔を真っ赤にして、涙で腫らした目元で私を睨み付け、掠れた声で怒鳴る。
「そんな難しい挙動が、AMADEUSを使ったばかりなのに出来るわけないです!」
「それでも」
 そう、それでもと。私は言う。
 例え、神様に見捨てられても。
 例え、この世界を見捨てても。
 私と明瀬ちゃんは生きていくのだ。
 その結末が、その贖罪が、業火に身を焼かれる最期であったとしても。
「でも、それは今日じゃない」
 何もかも分からないこの状態であっても、私の知らない世界であっても。
 それでも、私はまだ明瀬ちゃんの顔も見ていないのだ。
 上空の影が動いた。
 私はワイヤーを軽く緩めてビルの壁面を蹴る。
 命綱と共に斜面を下る登山家の姿を思い出す。
 レベッカの真横に身体を寄せる。
「WIIGを!」
「あなたが背中を預けるに値するかも分からないのに!」
「直ぐに分かる」
「分かりましたよ!」
 半ば自棄の様に叫び返してレベッカがWIIGから手を離す。
 私は咄嗟にそれを掴んで。
 空中に身を放りだしたレベッカに合わせて私もビル壁面を蹴った。
 WIIGを持ったまま両腕を広げると落下してきた彼女の身体が私に覆いかぶさる。
 目の前の視界が、彼女の頭部で阻害される。
 一気に重心が変わって、体勢が崩れそうになる。
 両手にしたWIIGを咄嗟に操作して。
 レベッカを抱えたまま、私達は背中から綺麗に落下していく。
 重量に負けて引き延ばされていくワイヤーが軋んだ音を二重に立てる。
 最大出力のAMADEUSが吐き出した翡翠色の光の粒子が私達を置き去りに空中へと舞い上がる。
 緑色の海の中を沈んでいくみたいな光景で。
 風で暴れる金髪で邪魔される視界の向こうで、落下していく私達を追ってフレズベルクが一気に急降下してきたのが分かった。
 レベッカがその両腕でショットガンを抱え弾丸をリロードする。
 構えた姿勢によってその肘が私の身体に食い込む。
「レベッカ!」
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