クラウンクレイド零和

茶竹抹茶竹

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【零和 四章・空転する暫定神話について】

[零4-1・高層]

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 かつて明瀬ちゃんが言っていた言葉をふと思い出す。
 あれは一緒に映画を観に行った時の帰り道の事だった。
 SF映画だった。
 人が未来の事を語る時、それはいつだって今と地続きだと。
 そこが創造力の限界であり、そして未来とは決して魔法で成り立っているものではない、と。
 技術の進化は既存の技術の積み重ねであって、例え突然変異の様に見えても必ずそこには痕跡がある。
 私達は進化という言葉をとても便利で魔法の言葉の様に使うけれども、ある日突然鳥が恐竜に変わったわけではない様に、猿が人間に突然とって変わる事がない様に、そこには必ず連続性の限界が存在する。
 私はビル壁面に打ち込んだワイヤーでぶら下がったまま、2080年という60年後の未来の街並みを見ながらその言葉を思い出していた。
 ウンジョウさんに聞いた2050年以降の世界情勢。
 その説明において、納得が出来ない点の一つに、都市部への人口集中政策があった。
 関東全ての人口を東京に一極化して、それ以外の県を農地等に転用する。
 単純に考えて、東京の面積的にキャパオーバーになる筈だ。
 私の目の前に広がる圧倒的な光景をもってして、その疑問への回答とされた。
 ダイサン東京区画、とレベッカ達が呼んでいたのは私の目の前に今広がっているエリアを指すらしい。
 今まで高層ビルの間を縫うようにして、ワイヤー移動をしてきたがダイサンは全く違う光景が広がっていた。
 根本としては、決して特異なものではない。
 高層ビルが密集して立ち並ぶ、それらの意匠が多少奇抜ではあったが、基本的には都心部のイメージ通りではある。
 違いは、その高さだ。
 今まで私が見てきた高層ビルは、高さ300m前後。
 それが立ち並んでいるだけでも、かなりのものだったが、ダイサン東京区画はそれとは桁が違った。
「これがダイサン東京区画、ハイパーオーツ政策を受けて建設されたハイパービルディング群です。中心に存在するシンジュクGRビルの高さは2,000メートルです」
 レベッカの説明に、私はただ頷くしか出来なかった。
 シンジュクGRビルとやらが、確かに頭一つ飛びぬけているものの、その他の超高層ビルの高さも大差ない。
 密集しているビル群のその何れもが、信じがたい事に1,000メートルを超える建造物だった。
 私達のいる高層ビル街の向こうに見える、蜃気楼の如くその塔の群れ。
 高すぎて遠近感覚が狂いそうになる。天へと伸びたその先端には雲がかかり、全体的に白い靄がかかっている。
 今、高さ300m近いビルからぶら下がり、見えているその場所は。
 一体どれ程の光景が広がっているのだろうかと思った。
「ハイパーオーツ政策において、都市部への人口集中を目指した際に問題になるのは居住地の確保でした。関東圏の4,000万人をかつての東京23区内に集約する。2030年代以降の建設ラッシュにより高層ビルが乱立していましたが、それだけでは足りず。そうして作られたのがダイイチからダイサンまでの東京ハイパービルディング区画です」
 人は文字通り新天地を求めて空を目指したわけだ。
 あまりに高いその建物郡は、何れも末広がりの様な外見をしている。
 タワーと呼ぶには太く、やはりビルの延長線上の形ではあった。
 耐震性などの問題を、如何様にクリアしているのだろうか。
 ビルとビルの間を移動して、私たちはダイサン東京区画に到着した。
 近くに寄ると、やはり大きさは歴然である。
 高層ビルの間から顔を出し、見上げてみれば尚且つどこまでも伸びていく。
 雲に遮られてその先端を見ることは出来ないが、その圧倒的な存在感で空は狭く遠く見える。
 ビルに切り取られた空を、更に切り取って。
 未来の居住地とやらは、そびえ立っていた。
 AMADEUSで、ビルの中腹、とは言っても他のビルの天辺より更に上ではあるのだが、に到達する。
 通用口としているのか、一画の窓が私達が近づくとゆっくりと開いた。
 ワイヤーを使ってビルをよじ登り窓から中に入る、そんな事を経験する日が来ようとは思ってもいなかった。
 第三東京区画、細かな事情は一先ずとして、現状東京都というものは消滅しているらしい。
 コミュニティ事の自治区が、元東京都内に幾つか存在し、その一つが私の到着した第三東京区画、通称「ダイサン」という事になる。
 あまりにも様変わりしていたせいで、認識するのに時間を要したが、ダイサンは新宿の辺りに位置していた。
 ダイイチが旧中央区と千代田区、港区の丁度重なる辺り、ダイニが品川区と港区周辺、という事になる。
 東京区画はその三つが存在しているということだった。
 そのダイサンは、超高層ビルが密集する一帯を指しているらしい。
 ビルとビルの間をワイヤーで移動していく。
 私の目から見れば、どう考えても異様だったが、レベッカは何も言わずに進んでいく。
 高層ビル上層部は空中廊下があり、ビルとビルを繋いでいた。
 そのビル全てと繋がっている長い廊下の先を辿っていくと、一つの巨大な建物に辿り着く。
 途中で一つのビルの屋上に辿り着く。
 其処から建物内部に入る事が出来た。
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