クトゥルフの魔法少女アイリスの名状しがたき学園生活

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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第五話 わたし、島を出ます! (18)

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 すると、わたしの体は浮遊感に包まれた。
 しかもすっごく暖かい。このまま寝てしまってもいいと思えるくらい気持ちいい。
 だけど、その感覚はすぐに消え、わたしの目には新しい場面が映りこんだ。
 そこは知らない部屋だった。
 大きな暖炉があり、火が赤々と燃えている。
 置かれている家具はどれも高そうなものばかりだ。でも、古そうなものばかりでもある。
 窓から差し込む光は相変わらず薄青い。暖炉の赤と混じって、薄紫色の空間が作り出されている。
 部屋の中央にはベッドが置かれている。
 手すりがついており、それが妙に高いベッドだ。手すりが壁になっているせいで、誰が寝ているのかはわからない。誰かが寝ている気配は感じる。
 男の人はそのベッドのそばに立っている。
 そしてわたしはある異常に気付いた。
 男の人の顔が見えないのだ。
 影に覆われており、真っ暗だ。
 もう逆光になってはいない。窓の位置から考えても、その顔は照らされていなければおかしい。
 まるで黒い仮面をつけているかのよう。
 わたしがそう思った直後、その人は声を響かせた。 

「すまない。顔を隠しているわけではないんだ。私は自分の顔を思い出せないんだ。しかし今はそれよりも重要なことがある。こちらに来てくれ」

 わたしは言われるがままに、ベッドのそばに歩み寄った。
 ベッドの中は大量の花で飾られていた。
 そしてそこに寝ていたのは、わたしのおねえちゃんだった。
 それを見たわたしが「おねえちゃん」と声を上げるよりも早く、男の人は口を開いた。

「これは触手に捕まった時に流し込まれたものだ。家族関係を利用して君につけこみ、君を乗っ取るために送り込まれたものだ。だが、手術は無事に終わった」

 手術は無事に終わった? その意味を問うよりも早く、男の人は説明を始めた。

「かなり攻撃的な改造が施されていたが、そういう機能は既に排除してある。もう危険は無い」

 そして手術の内容はそれだけでは無かった。男の人は続けてそれを説明した。

「そして送り込まれたこれは、本人の魂のコピーだと思われる。なぜなら、本人の記憶と人格をほぼそのまま持っていたからだ。君につけこみやすくするためにそうしたのだろう。そしてその人格を傷つけること無く手術は完璧に完了した」

 おねえちゃんの魂のコピー? 傷つけずに攻撃的な改造だけをとりのぞいた?
 それを聞いたわたしは、頼み事の内容の予想がついた。
 そして直後に男の人の口から響いた言葉は、わたしが予想した通りの内容だった。

「そこで君に頼みがある。この複製された姉の魂をどうするかを君に決めてほしいのだ」

 魂のコピー。わたしの中にいる隊長さんは複製では無いから違うのだろうけど、もしも今のわたしの思いを声に出せば、きっと似たような関係が築ける。
 ならばわたしに迷いは無かった。
 わたしはその思いを声に出した。

「わたしは――」
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