クトゥルフの魔法少女アイリスの名状しがたき学園生活

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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中等部編

第七話 警察沙汰で青春大ピンチ危機一髪! (2)

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   ◆◆◆

 学園を出たわたし達は城壁から離れ、列車に乗ることになった。
 二駅移動したところで列車を降り、そこからは徒歩になった。
 そして連れてこられた場所は、廃棄された工場だった。
 いまだ撤去されていない設備が錆だらけで並んでいる。
 工場内は暗く、そして湿っぽい。
 カビと錆の匂いに混じって腐敗臭がときどき鼻をつく。ネズミかなにかの死体があるのだろうか。それにしては匂いが強いような――いや、これは深く考えない方がいい気がする。
 そんな工場内を歩きながら浮かんだ当然の疑問を、わたしは素直に尋ねることにした。

「あのぅ、こんなところにステキなお店があるんですか?」

 ヴィーさんは即答した。

「何を期待していたのか知らんが、そんなものは無い」

 そっかぁ。やっぱり無いかあ。じゃあ、

「じゃあ、帰っていいですか?」
「ダメだ」

 なんでぇ? わたしは不快感をあらわにして抗議しようとしたが、状況は直後に変化した。
 前方にドアがある。
 事務室と思われる部屋だ。中から数人の気配がする。
 うわ、ちょっと、イヤな予感しかしないんですけど。
 わたしのそんな不安は無視され、ヴィーさんはドアを開けて中へと入っていった。
 しぶしぶ、わたしとクラリスも中に入る。
 するとそこには、三人の男がいた。
 左右の二人は屈強だ。中央の男のガードマンといった感じ。それぞれ手にアタッシュケースを持っている。
 そして守られている真ん中の男はビジネス用のスーツに身を包んでいる。
 しかしシャツの色がどぎつい。詐欺師、または危ない商売人って感じがする。たぶん後者で正解だろう。それとも両方か。
 そんなうさんくさい男は、ヴィーさんと視線を合わせながら口を開いた。

「今日も約束の時間ぴったりです、ヴィー様。すばらしい」

 ヴィーさんは挨拶もせず、すぐに本題に入った。

「ブツは?」
「こちらに」

 うさんくさい男がそう言うと、ガードマンっぽい二人が部屋の中央にある長机の上にアタッシュケースを一つ置き、わたし達に中が見えるように開いた。
 中に入っていたのは銃だった。
 ヴィーさんが携帯している銃と同じ形のやつだ。りぼるばー、って言うんだっけ?
 大きさも同じくらい。そして金ぴかだ。
 そしてうさんくさい男が「どうぞ手に取ってご確認を」とうながすと、ヴィーさんはアタッシュケースから銃を取り出した。
 銃をなめるように見回した後、構え、トリガーを引く。
 弾は入っていない。「カチリ」という音が響くだけ。
 この時、ヴィーさんの目は明らかに輝いていた。まるで新しいオモチャを手にした子供だ。
 だから聞いていいものか悩んだんだけど、我慢できなかったわたしは尋ねた。

「同じ銃に見えますけど、なんか違うんですか?」

 すると、ヴィーさんは「は?」みたいな目をこちらに向けてきた。「は?」なのはわたしなんですけど。
 ヴィーさんはその「は?」という気持ちを直後に言葉に変えた。

「見てわからないのか? グリップ、フレーム、ハンマー、トリガー、サイト、それらすべてが俺用にカスタムされてるんだぞ?」

 いや、わからないです、まったく。わかるわけないでしょ。
 わたしはその不満を言葉にしようとしたが、それよりもヴィーさんが口を開く方が早かった。

「気に入った。金はいつもの口座にあとで振り込んでおく」

 その言葉に、うさんくさい男は始めての笑顔を見せた。

「まいどあり」

 ヴィーさんはその笑顔には目もくれずに銃をケースに戻し、

「持ってろ」

 と言って、そのケースをわたしに放り投げてきた。
 えぇ……こんなところに連れてこられただけじゃなく、荷物持ちまでやらされるんですかあ?
 わたしがその不満を隠すことなく表情に出すと、ヴィーさんは口を開いた。

「そう怒るな。もう一つのブツはお前達へのプレゼントだぞ。おい、見せてくれ」

 ヴィーさんがうながすと、うさんくさい男はもう一つのアタッシュケースを机の上に置き、わたし達に見えるように開いた。
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