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第二章 アリスは不思議の国にて待つ
第十五話 一つの象徴の終わり(3)
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「残念、はじまっちゃった」
少し遅かった、そんな言葉をベアトリスは思わずこぼした。
到着したばかりのアルフレッドとベアトリスは丘の上からシャロンに接触できる機会をうかがっていた。
しかし戦いが始まってしまった。これでは部外者が近づくのは難しい。
でももしかしたら、そんな思いをベアトリスは漏らした。
「シャロンさんは大将らしく後方にいるね……非武装で近づいて、敵じゃないことを説明したら会わせてくれたりしないかな?」
それはあまりにも楽観的すぎる考えであった。
それはベアトリス自身わかっていたことであるがゆえに、
「うーん、やっぱり無理かなあ。終わるまで待つしかないかな?」
ベアトリスは一人芝居のような一人問答で話題を完結させた。
しかしその芝居はアルフレッドの耳にほとんど入っていなかった。
アルフレッドはルイスを凝視していた。
(なんだあの怪物は……)
正確にはルイスが連れているナチャを凝視していた。
アリスはアレを太った死神と表現した。
昔はそうだったのかもしれない。しかし今のアレは明らかに違う。アレはそんな半端なものじゃない。
どう見ても神であるアリスより強い。数段は格上だ。
自分のドラゴンを三体、いや、五体たばねてようやく戦いになるかどうかというところ。
尋常じゃない。この世界にアレに勝てる化け物がはたしているかどうか、そう思えるほどだ。
ゆえに、
「……っ」
アルフレッドは己でも気付かぬうちに悔しさを感じていた。
歯がゆさも感じていた。自分が井の中の蛙であったことを痛感させられていた。
ドラゴンを作り出したという自負は消し飛んでしまっていた。その程度の力で強がっていた自分が恥ずかしく思えてきていた。
だからアルフレッドはルイスを凝視していた。
彼とあの化け物の戦い方をよく見ておかないと、そう思っていた。
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