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第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神

第二十話 母なる海の悪夢(8)

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 その命令に副官が「承知いたしました。お任せを」と返すと、シャロンはある人物の方に振り返った。
 それはキーラ。
 シャロンはキーラに向かって口を開いた。

「キーラ! あなたも私についてきて!」

 キーラはそれを命令と受け取った。
 どんなにキツい命令でも従う、そう約束した。
 だからキーラは即答した。

「わかったわ。共に参りましょう」

 その答えを聞いたシャロンはある方向を指差しながら口を開いた。
 
「護衛の小型船を使うわよ! あなたは私のとは違う船に乗って!」

 そう言ってシャロンは走り出し、海に身投げするように甲板から飛び出した。
 下に待機していた護衛の小型船に見事に着地。
 言われた通り、キーラは後方の護衛船に着艦。
 そのキーラの着艦の音と同時にシャロンは声を上げた。

「護衛船はすべて集合! 私とキーラを中央に置いた二つの突撃陣形を組んで!」

 その指示に護衛船の兵士達は即座に応じた。
 両腕を回し、オールを漕ぐ。
 そして護衛船は前進しながら集合し、大型船の前方で陣形は完成した。
 その陣形は「突撃」という名の通りの三角形。
 シャロンとキーラの船は前に突き出した先端の位置。
 隊列は横並び。二つの三角が並んだ形。シャロンが右側で、キーラが左側であった。
 その隊列が完成した直後にシャロンは叫んだ。

「これより敵に強襲をかける! 全員衝撃に備えて!」

 衝撃に備えろ。その指示の意味は感知能力者で無い者にはすぐにはわからなかった。
 その意味は直後に明らかになった。
 シャロンの両手から爆発魔法が放たれる。
 単発では無い。絶え間の無い連射。全ての船に向かって放たれている。
 帆の後ろで次々と炸裂し、その衝撃波で加速を得る。
 キーラも同じやり方で、遅れずに並んでいる。
 その高速に流れる景色の中で、シャロンはキーラに向かって声を上げた。

「私は右から回り込む! あなたは左からお願い!」
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