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第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神

第二十二話 Deus Vult(主はそれを望まれた)(21)

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 爆発魔法が次々と炸裂し、青い火の粉を撒き散らす。
 同時に生じた衝撃波がブレスを吹き飛ばす。
 しかし衝撃波に打たれるのはベアトリスとバークも同じ。

「っ!」

 手加減されていることがわかる爆発音であったが、痛いほどの衝撃波にベアトリスの顔が歪む。
 が、直後、バークは力強く地面を蹴って青い火の粉の中に飛び込んだ。
 だん、と、重い音がベアトリスの耳に響く。
 音を聞かせることも目的の一つであることが瞬時にわかった。
 なぜなら、音と共にバークの心の声が響いたからだ。
 押されるな、踏み込め、と。
 だからベアトリスも次の瞬間にそうした。
 力強く地面を蹴って衝撃波を押し返す。
 その二人の踏み込みの音が消え始めた直後、バークは次の爆発魔法を放った。
 巻き戻しのように、目の前で交差させた両手を大きく開き戻す。
 その動作と共に放たれた青い爆発魔法が炸裂。
 場を青く照らし染めながらドラゴンのブレスを押し返す。
 この爆発で完全相殺。ドラゴンのブレスが途切れる。
 そして響いた二度目の踏み込みの音の直後、バークは突破の最後の一手を放った。
 大きく開いた両手の中に爆発魔法を生み出す。
 高速射撃のものとは違う、威力を重視した大きめの爆発魔法。
 バークは手の平からあふれそうなその弾を、

「破ぁっ!」

 両腕を突き出し、放った。
 正面のドラゴンの腹部で炸裂。
 青い爆炎と共にドラゴンの腹部が引き裂かれる。
 そして生じた腹の穴に二人は走り込んだ。
 そのまま通り抜けて突破。
 直後、

「アルフレッド!」

 ベアトリスは叫んだ。
 直属の部下と思われる兵士が組んでいる防御陣形の奥に、その姿があった。
 アルフレッドもベアトリスを見ていた。視線が交わった。
 だからベアトリスは叫んだ。
 中身がアルフレッドでは無い事はわかってる。これはただの反射的な行動。
 その本能からの呼び声に、反応したかのようにアルフレッドは動いた。
 真横で護衛しているドラゴンの体に手を刺し込む。
 瞬間、ベアトリスは感じ取った。
 ドラゴンに何か命令のようなものを与えたのを。
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