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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む
第二十四話 神殺し、再び(5)
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だが、この可能性は問題だらけ。
まず、どうやって奴の体を手に入れるか。それがまず難しい。難しすぎると言っていいほどに困難。
ナイアラはこの候補と問題について声に出そうとしたが、クトゥグアが先に口を開いた。
「今の状況で、この森で候補となりえる人間は一人しかいないだろう。お前もよく知っている『あいつ』だ」
ならば捕獲の困難さも認識しているはず、ナイアラがそう思った直後にクトゥグアは言葉を続けた。
「もちろん、簡単な相手では無い。だが、その問題を解決できそうな者を拾うことができた」
『者』を『拾った』?
どういうことだと尋ねる前にクトゥグアは口を開いた。
「紹介しよう。おい、こっちに来い」
「!」
瞬間、ナイアラは反射的に身構えそうになった。
その者の気配はずっと感じ取れていた。森のように広く大きいからだ。だからナイアラはクトゥグアの護衛だと思っていた。
そしてその『者』は呼び声に応じてナイアラのほうに歩み寄り始めた。
その前進はまるで、森が動いて迫ってきているかのような圧迫感であった。
そしてその者はクトゥグアの背後から姿を現した。
「……!」
感じた圧迫感は正しかった。
出てきたのは全身に触手が巻き付いている男。
その触手は背中からイソギンチャクのように四方八方に伸びている。
枝分かれもしているゆえに、まるで巨大な茂みのよう。
触手は常にうごめき、空気中にあるわずかな栄養分でも貪欲に拾い食っている。
海の神々が使役する強力な眷属の一人、そう言われたら信じてしまいそうなほどのおぞましさと圧迫感。
しかしその顔はナイアラの知らない顔であった。
クトゥグアもその者の名を響かせようとはしなかった。人間的な紹介をしようとはしなかった。
だからナイアラは尋ねた。
「その者の名は?」
クトゥグアはめんどくさそうに答えた。
「たしか……ヘルハルト、だったはず」
まるで別人のように形相が変わっているが、それは間違い無くヘルハルトであった。
疲労と狂気、それが色濃く浮き出た顔であった。
そんな顔に対し、クトゥグアは品定めをするような視線を向け、声を響かせた
「こいつは使えるぞ。人格がほとんど崩壊しているからな。しかも妙な執着心があるおかげで制御が容易い。その執着心を刺激するものをチラつかせるだけで誘導できる。もちろん戦闘力も十二分。これ以上のものはなかなか無い、そう断言できる操り人形だぞ」
そう言ったあと、クトゥグアはナイアラのほうに視線を戻し、再び口を開いた。
「これをタダで使わせてやろう。これがあれば、大体の問題は解決するだろう?」
確かに、可能性はぐっと高まる、ナイアラはそう思った。
が、
「……」
ナイアラは即答しなかった。
クトゥグアの得体が知れないからだ。
なぜこいつはバークの能力の秘密を知っていたのか?
こいつがこの森で活発的に情報収集をしている気配は無かった。
なのになぜ?
このままだと良いように利用されるだけでは? そんな警戒心が沸き上がっていた。
が、
「……お前もよくわかっているはずだ。いまは手を組む以外に無い、と」
クトゥグアは同意できる事実を再び響かせた。
現状、ナイアラの部隊に大したことはできていない。
相手の情報伝達の攪乱程度だ。
しかしこいつと組めば大きなことができる。組まなければ状況に大きな変化を起こせない。
それがよくわかっていた。
だからナイアラは、
「わかった。お前と手を組むことにしよう。ただし、条件はこちらから指定させてもらう」
そう答えざるを得なかった。
その答えは予想できていたゆえに、クトゥグアは作り笑いを返しながら、
「賢明な判断だ」
よくある台詞を響かせた。
まず、どうやって奴の体を手に入れるか。それがまず難しい。難しすぎると言っていいほどに困難。
ナイアラはこの候補と問題について声に出そうとしたが、クトゥグアが先に口を開いた。
「今の状況で、この森で候補となりえる人間は一人しかいないだろう。お前もよく知っている『あいつ』だ」
ならば捕獲の困難さも認識しているはず、ナイアラがそう思った直後にクトゥグアは言葉を続けた。
「もちろん、簡単な相手では無い。だが、その問題を解決できそうな者を拾うことができた」
『者』を『拾った』?
どういうことだと尋ねる前にクトゥグアは口を開いた。
「紹介しよう。おい、こっちに来い」
「!」
瞬間、ナイアラは反射的に身構えそうになった。
その者の気配はずっと感じ取れていた。森のように広く大きいからだ。だからナイアラはクトゥグアの護衛だと思っていた。
そしてその『者』は呼び声に応じてナイアラのほうに歩み寄り始めた。
その前進はまるで、森が動いて迫ってきているかのような圧迫感であった。
そしてその者はクトゥグアの背後から姿を現した。
「……!」
感じた圧迫感は正しかった。
出てきたのは全身に触手が巻き付いている男。
その触手は背中からイソギンチャクのように四方八方に伸びている。
枝分かれもしているゆえに、まるで巨大な茂みのよう。
触手は常にうごめき、空気中にあるわずかな栄養分でも貪欲に拾い食っている。
海の神々が使役する強力な眷属の一人、そう言われたら信じてしまいそうなほどのおぞましさと圧迫感。
しかしその顔はナイアラの知らない顔であった。
クトゥグアもその者の名を響かせようとはしなかった。人間的な紹介をしようとはしなかった。
だからナイアラは尋ねた。
「その者の名は?」
クトゥグアはめんどくさそうに答えた。
「たしか……ヘルハルト、だったはず」
まるで別人のように形相が変わっているが、それは間違い無くヘルハルトであった。
疲労と狂気、それが色濃く浮き出た顔であった。
そんな顔に対し、クトゥグアは品定めをするような視線を向け、声を響かせた
「こいつは使えるぞ。人格がほとんど崩壊しているからな。しかも妙な執着心があるおかげで制御が容易い。その執着心を刺激するものをチラつかせるだけで誘導できる。もちろん戦闘力も十二分。これ以上のものはなかなか無い、そう断言できる操り人形だぞ」
そう言ったあと、クトゥグアはナイアラのほうに視線を戻し、再び口を開いた。
「これをタダで使わせてやろう。これがあれば、大体の問題は解決するだろう?」
確かに、可能性はぐっと高まる、ナイアラはそう思った。
が、
「……」
ナイアラは即答しなかった。
クトゥグアの得体が知れないからだ。
なぜこいつはバークの能力の秘密を知っていたのか?
こいつがこの森で活発的に情報収集をしている気配は無かった。
なのになぜ?
このままだと良いように利用されるだけでは? そんな警戒心が沸き上がっていた。
が、
「……お前もよくわかっているはずだ。いまは手を組む以外に無い、と」
クトゥグアは同意できる事実を再び響かせた。
現状、ナイアラの部隊に大したことはできていない。
相手の情報伝達の攪乱程度だ。
しかしこいつと組めば大きなことができる。組まなければ状況に大きな変化を起こせない。
それがよくわかっていた。
だからナイアラは、
「わかった。お前と手を組むことにしよう。ただし、条件はこちらから指定させてもらう」
そう答えざるを得なかった。
その答えは予想できていたゆえに、クトゥグアは作り笑いを返しながら、
「賢明な判断だ」
よくある台詞を響かせた。
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