Iron Maiden Queen

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む

第二十四話 神殺し、再び(64)

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 敵はアリスの魂を取り返す素振りも見せなかった。
 大神官を守りながら全力で後退。
 その動きが周囲に伝搬したいるかのように、周囲の敵達も後退を開始。
 全体に伝わるまで時間はあまりかからなかった。
 そしてアルフレッドに対しての銃撃がやむころには、敵は全軍退却の様相になっていた。

「全軍突撃!」

 敵の逃げ腰を同じく察知したルイスの号令が後方から響き渡る。
 直後、

「「「雄雄雄雄ォッ!」」」

 耳に痛いほどの味方の気勢が森を揺らした。
 低い地鳴りのような味方の足音が響き始め、頭上にいる巨大ドラゴンが巨大光弾の発射準備に入る。
 アリスの魂をさっさと破壊して自分も追撃に参加するべきだろう、アルフレッドはそう思った。
 が、

「待てアルフレッド! 壊すな!」

 ルイスの静止の声が真後ろから響いた。
 アルフレッドが振り返ると、ルイスは理由を答えた。

「お前はその魂の中身を調べろ。有益な情報が入っている可能性がある」

 そう言ってルイスはアルフレッドの横を走り抜けようとしたが、すぐに足を止めて再び口を開いた。

「ああ、そうだ。それが終わったら、その魂はお前の好きにしていいぞ」 

 好きにしていい、その言葉にアルフレッドは少し困った。
 この魂は攻撃的だ。他者に危害を加える可能性がある。
 自分が何か失敗すれば、それが起きる可能性は高い。
 だから誰か優秀な精霊使いの手を借りたい。具体的に言えばルイスさんのような。
 アルフレッドはそれを言おうとしたが、

「「――っ!」」

 直後に響いた巨大光弾による轟音に、二人は同時に耳を押さえた。
 アザトースの断末魔の悲鳴のような声も混じっていた。
 ゆえに、ルイスはすぐに走り出した。

「では任せたぞ!」

 その走り出しは鋭く、引き留める暇も無かった。
 だからアルフレッドは「しょうがない、やるか」と、気を引き締め直した。
 すると、アルフレッドの頭の中で声が響いた。

(無理に助けなくてもよかったのに)

 少しめんどくさそうなアリスの声。
 それは確かにその通りに思えた。
 ゆえにアルフレドは肯定の思いを返した。

(俺も最初はそのつもりだったよ。間違い無く改造されてるだろうと思ってたし、これ以外に写しが無い保証は無いからね。実際こうして手に取って調べてみても、やっぱりそうだった。これはもう見た目が似ているだけの別人だ)

 これにアリスは、

(そうね、わたしもそう思うわ)

 と相槌を打ち、

(でもルイスの言う通り、役に立つ情報があるかもしれない。隅々まで調べてみましょう)

 と響かせた。
 それはそのつもりだが、アルフレッドは「その後」のことが気になっていた。
 だからアルフレッドはそれを尋ねた。

(でもどうしようか? 元のアリスに戻すように直したほうがいいかな?)

 正直難しいけど、そんな思いがその言葉には含まれていた。
 アリスはその思いに対して答えた。

(ここまで改造されていると、今のわたしと照らし合わせて修復する以外のやり方では直せないかもね。でもそれだと、ただのわたしの写しになりそうだけど)

 問題はそこであった。
 この問題に対し、アリスは(わたしは二人になっても気にしないけどね)と言おうとしたが、それよりも速く頭上から声が響いた。

(やっぱりお困りのようだね、お二人さん)

 全てお見通しのような口調のナチャの声。
 見上げると、そこには使い走りの分身と思われる一匹のムカデがいた。
 ムカデは続けて声を響かせた。

(僕は直しておいたほうがいいと思うよ? 神の木を取り戻したらまた管理人が必要になるからね。それはこの地域のことをよく知っているアリスのほうが都合がいい)

 それは思わず「確かに」と答えそうになるほどに納得できる言葉であった。
 アルフレッドはそれを声に出そうとしたが、ムカデは続けて声を響かせた。

(修復作業は僕も手伝おう。でも今は無理だ。この追撃戦が終わるまではね。それまでは二人で適当にやっておいてくれ)

「適当に」という部分がやや投げやりで、本当に適当な口調と印象であったが、アルフレッドは特に不満も抱かずに頷きを返した。
 だがムカデはその頷きも見ずに、さっさと振り返って去ってしまった。
 だがそれにもアルフレッドは不満を抱かず、いつもの調子でアリスに向かって心の声を響かせた。

(じゃあ、早速始めようか、アリス)

 戦闘の直後に休みも入れずに細かい作業に入ろうとする、それはアルフレッドらしいと言えばその通りであった。
 だが、アリスにはそれは許可できないことであった。
 だからアリスは「やれやれ」というような口調で言った。

(まずはあなたの手当が先よ)

 打撲に切り傷に火傷、ケガが無いところを探す方が難しい有様であった。
 ベアトリスがこの場にいれば同じことを言ったであろう。
 しかしアルフレッドは自分のことなど二の次と考えているようであった。
 その証拠に、アルフレッドは、

(ああ、そうか。そのほうがいいかな?)、

 などと疑問形の口調で響かせた。
 その答えに、アリスは、

(……やっぱりルイスが言う通り、育て方を間違えたのかしら?)

 と、アルフレッドに聞こえないように呟いた。
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