Chivalry - 異国のサムライ達 -

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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第六章 アランの力は遂に一つの頂点に

第四十六話 暴風が如く(5)

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 その呼び声には「なぜ」という思いが込められていた。
 これにルイスは一呼吸ほど間を置いた後、口を開いた。
 が、そこから紡がれた言葉は、女が期待していたものでは無かった。

「双方にとって、都合が良いこと悪いこと、両方あった」

 それは先の否定の続きだった。
 そしてルイスはアランの方に視線を向けながら、言葉を続けた。

「しかしどちらの運が良いかで判断するならば、それは間違い無くアランの方だ」

 なぜか。その理由をルイスは述べた。

「アランにとって最大の幸運は雲水が最初にお前にぶつかってくれたこと」

 それは明らかな事実だった。
 女には反論の余地が無かった。
 だからルイスの口は雄弁に回った。

「結果、お前の手に強力な武器が渡ってしまった、という不幸はあった。……が、それを差し引いても『お前が消耗した』という事実と、『アランが学習し、準備をする機会と時間が出来た』という点の方が遥かに大きい」

 ルイスがそう言い終えたのとほぼ同時に、アランから全ての気配が消えた。

「……やはり限界だったか、アラン」

 ルイスはそう言いながら抜け殻になったアランの傍に歩み寄り、

「しかしよくぞこの怪物相手に生き残った」

 庇い立ちながらシャロンの方に視線を向けた。

「!」

 その目に、シャロンは歯を食いしばった。
 なぜなら、明らかな敵意が飛んで来たからだ。
 そしてルイスは機械弓に矢を装填しながら口を開き、

「ここまで弱らせてくれれば十二分」

 勝利宣言と共にその矢尻をシャロンに向かって突きつけた。
 これに、シャロンは構えを整えながら口を開いた。

「……こんな日が、いつか来るかもしれないと思ってた」

 そしてシャロンはこれまで言いたくても言えなかった事を吐き出した。

「いくら時を重ねても、あなたと心が通じたと感じたことは無かった」

 かなり痛烈な告白。
 であったが、ルイスは心揺らさず、答えた。

「私と君とでは生きる目的が全く違うのだから当たり前だな。……私と君を結び付けていたものは同情と利害の一致、ただそれだけだったのだろう」

 これにシャロンは頷きを返し、口を開いた。

「……そうね。もうこんな付き合いは潮時なのではないかと思うことが何度もあった。どうやら、それは間違いだったのね。潮時なんて、とっくに……」

 言いながら、女は少しだけ心が締め付けられるのを感じた。
 そしてそれはすぐに怒りに変わった。
 ルイスの心がやはり微動だにしなかったからだ。
 ルイスが本当に何とも思っていないことが伝わってきたからだ。
 そして直後、

「……ああ、そうだな。だからもう、『今の関係は』終わりにしよう、シャロン」

 ルイスが放ったその言葉が合図となり、

「ルイスッ!」

 シャロンはルイスに向かって踏み込んだ。
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