Chivalry - 異国のサムライ達 -

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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第七章 アランが父に代わって歴史の表舞台に立つ

第四十七話 炎の紋章を背に(10)

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   ◆◆◆

 ルイスとの話い合いが終わる頃には、外は薄暗くなっていた。。
 出陣の予定時刻はとうに過ぎていた。

「……」

 が、それが二の次になるほどに、アランの意識はルイスが出した「提案」に捕らわれていた。

「……どうします?」

 傍に控えているクラウスが尋ねる。
 その質問の答えは決まっていた。だからアランは即答した。

「悪く無い話に思える。援助してみる価値はありそうだ」

 直後、アランは「だが、」と言葉を付け加えた。

「それに本腰を入れるかどうかは、『実物』を見てからでなくては決められない」

 これにクラウスは「でしょうな」と相槌を打った。

   ◆◆◆

 奇しくも、いや当然というべきか、雲水もアランと同じ考えであった。
 そのことを雲水はルイスに面と向かって伝えたが、

「良かった。ということは興味を持っていただけたということですね」

 ルイスは悲観的な感情を一切滲ませず、一歩前進したという事実に笑顔を浮かべた。
 その笑みに対し、雲水は水を差した。

「個人的に、という意味ではその通りだ。しかし残念だが、良いか駄目かは私の一存で決められることでは無い」

 しかしそれでもルイスは笑みを崩さず、

「それは承知しております」

 雲水に対し、確認を取った。

「ですがとりあえず、雲水殿はこの話を『上』に持ちかけてくれると、そう思っていてよろしいですね?」

 これに雲水は頷きを返し、口を開いた。

「確かに、お前が要求している物の一つは我が国に豊富にある。……お前が言うとおり、我が国では『花火』というそれを用いる娯楽が存在する」

 その言葉を聞いたルイスは、「そうと決まれば、」と口を開いた。

「すぐにこの国を発ち、和の国に向かいましょう。試作品はもう出来ていますので、お見せしたい」

 その言葉に、雲水は尋ねた。

「私はそれでも構わないが、アラン殿とはちゃんと話し合わなくていいのか?」

 ルイスは答えた。

「彼も乗り気であることは既に感じ取っています。答えを聞くまでもありません」

 そしてルイスは「それに、」と言葉を続けた。

「正直なところ、アラン様の御返事は二の次なのですよ」

 その理由をルイスは聞かれるよりも早く答えた。

「この国では『アレ』はあまり手に入りませんから。あなたに断られていたら、この計画は頓挫していたかもしれません。なのでまずは和の国が優先です」

 ルイスはそんな心にも無い事を言った後、笑みを強めた。

「頓挫なぞさせない、あきらめるつもりなど最初から無い」という意思がその笑みに含まれていた。

 そしてそれを感じ取った雲水は、同じような笑みを作りながら口を開いた。

「そうか。ならば私も久しぶりに国に帰るとしよう」

 雲水はそう言った後、場から離れようとしたが、

「……一つ聞きたい」

 最後に質問をぶつけることにした。
 が、それは先ほど思い付いた個人的な関心事であった。

「どうしてお前はこんなことを思い付いた。先の戦いの中でひらめきを得たと言ったが、きっかけは何だ?」

 これにルイスは即答した。

「あなたが見せた『抜刀術』ですよ」

 それでどうしてひらめけたのか、雲水が尋ねるよりも早くルイスは答えた。

「鞘の中で光魔法を爆発させて刃を発射する、正にそのままではありませんか。爆発は光魔法で無くても起こせますし、発射するものは刃である必要性は無い」

 その答えに、雲水は「なるほどな」と納得するしか無かった。
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