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第七章 アランが父に代わって歴史の表舞台に立つ
第四十九話 懐かしき地獄(2)
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いい機会なので、なぜ剣が武神の号令に便利なのかを説明したいと思う。
大きな波を発することが出来ればなんでもいいのであるが、剣が便利である理由は武器として既に多く流通している以外に二つある。
一つは形状が単純であるため制御が容易であること。
そしてもう一つは混ぜ物として炭素が含まれているからだ。
この炭素が剣を用いた武神の号令において重要な役割を担っている。
世界というものを、それを構成する物質を理解する上で重要なのは以前述べた通り、何と何が引き合うか、何と何が反発するか、いわゆる引力と斥力を理解することである。
剣を使った武神の号令も同じである。様々なものが引き合い、そして反発し合うことであの現象が引き起こされているのだ。
クリスが先ほど実際にやっていたことを例にして説明しよう。
クリスはまず、手から剣へ一定の周期で、かつ勢い良く光魔法を流し込んだ。
鉄はすんなりとこれを受け入れる。クリスがその容易さを実感出来るほどに。これは、鉄が光粒子にとって抵抗値が低い物質だからである。
光魔法は核である元素と、その周囲を回転する多くの光粒子で構成されているが、鉄元素は光粒子に対して強い引力を有しており、光元素から光粒子を奪い取ってしまう。逆に光元素と鉄元素は反発し合う。斥力が生じるのだ。
そして光粒子は鉄元素から別の鉄元素へまるで自由であるかのように移動し続ける。抵抗値とはこの自由度の逆数で決まる数値である。
対し、裸にされた光元素は斥力によって剣の外に押し出されたりするが、ピンボールのように中で跳ね回るものもいる。これが制御を不安定にしている原因の一つであるが、ここにさらなる変化が生じる。
それを引き起こすのは鋼の中に含まれている炭素である。鋼とは炭素をある濃度で含んでいる鉄のことであるが、この世にある鉄はほとんどが鋼である。炭素を含まない純鉄のほうがはるかに珍しい。鉄は炭素を好む物質であり、強く引き込むのだ。ダイヤモンドを鉄で加工すると、ダイヤを構成する炭素が鉄に奪われるほどである。
そしてこの炭素は光魔法の元素と強く引き合うという性質を有している。
光魔法の元素は炭素と結び付くが、当然、近くには斥力を生む鉄元素が大量に存在する。
結び付いた炭素はその斥力の影響を受ける。光魔法の元素に引きずられるのだ。
それによって炭素は鉄の中を移動し始める。激しく振動しながら、である。その間も鉄は炭素を引っ張り続ける。光元素と炭素の関係を引き裂こうとするかのように。
そしてその破局は間も無く訪れる。鉄元素のほうが圧倒的に数が多いからだ。
この際、光元素は凄まじい勢いで弾き飛ばされる。強い引力で結び付いていた状態が、数の暴力によるより強い斥力でちぎられるからだ。
しかしこの現象によって加速を得た光元素は、鉄の中を高速で駆け抜けながら、道中にある光粒子と反応していく。これが振動の原因である。
このままでは不規則な波を発し続けるだけの暴れ馬である。が、安定させれば、言い換えればその挙動に規則性を持たせることが出来れば、その現象は増幅という機能を果たしてくれる。
初めにクリスが行った手から剣へ一定の周期で流し込む作業がその安定化作業なのだ。
流し込まれた光魔法の粒子群は柄から先端に至った後、多くは手元に帰ってくる。これは空気の方が抵抗が高いためだ。剣から手も同様である。ゆえに、光魔法の粒子は根元と先端部を何度も往復することになる。
そして流し込まれ続けるゆえに、剣の内部はあっという間に光魔法の粒子で一杯になる。
この状態は例えるならば、水で満たした洗面器を左右に揺らしているような状態である。水である光粒子はあふれてこぼれ続けるが、手という蛇口から注がれ続けているゆえに容器が空になることは無い。
そして光元素は光粒子と引き合う関係にあるがゆえに、大量に流れ込み続ける光粒子に引きずられることになる。鉄元素に押されるため滑らかな動きでは無いが、光粒子の方が圧倒的に多いため洗面器の中を規則的に往復するようになる。つまり、数の暴力による不規則性をさらなる数の暴力で制御するということだ。
当然、炭素もこの影響を受けることになる。光元素に引きずられるがまま、洗面器の中を、剣の中をゆらめくことになるのだ。
そして結果として光元素と炭素の破局の形に変化が生まれる。光元素が加速発射される方向にある程度の規則性が生まれることになる。鉄元素にも引っ張られているため必ずでは無いが、炭素は光元素の背後を追従するように動くためだ。光元素が発射される方向は進行方向側に偏ることになる。
ならば、感知能力者が剣に求める性質は炭素が均一に分布されているかどうかだろうと思われるだろうが、これは正解では無い。
使い手によって光魔法の性質に差異があるからだ。しかし間違いとも言いきれない。炭素が均一に分布していれば扱いやすいことは間違い無いからだ。
そしてその差異は様々である。既に述べられた炎魔法との配分はもちろん、光魔法自体に最初から鋭い回転が加わっていたり、放出される方向に偏りがあったりする。和の国の鍛冶師達はその特徴を見抜き、専用剣を仕上げる。
しかしアランの国にそのような技術を持つ鍛冶師はいない。刀自体が容易に手に入らない。
さらにクリスの光魔法にも独特の癖があった。
だからクリスは自力で選別せざるを得なかったのだ。
大きな波を発することが出来ればなんでもいいのであるが、剣が便利である理由は武器として既に多く流通している以外に二つある。
一つは形状が単純であるため制御が容易であること。
そしてもう一つは混ぜ物として炭素が含まれているからだ。
この炭素が剣を用いた武神の号令において重要な役割を担っている。
世界というものを、それを構成する物質を理解する上で重要なのは以前述べた通り、何と何が引き合うか、何と何が反発するか、いわゆる引力と斥力を理解することである。
剣を使った武神の号令も同じである。様々なものが引き合い、そして反発し合うことであの現象が引き起こされているのだ。
クリスが先ほど実際にやっていたことを例にして説明しよう。
クリスはまず、手から剣へ一定の周期で、かつ勢い良く光魔法を流し込んだ。
鉄はすんなりとこれを受け入れる。クリスがその容易さを実感出来るほどに。これは、鉄が光粒子にとって抵抗値が低い物質だからである。
光魔法は核である元素と、その周囲を回転する多くの光粒子で構成されているが、鉄元素は光粒子に対して強い引力を有しており、光元素から光粒子を奪い取ってしまう。逆に光元素と鉄元素は反発し合う。斥力が生じるのだ。
そして光粒子は鉄元素から別の鉄元素へまるで自由であるかのように移動し続ける。抵抗値とはこの自由度の逆数で決まる数値である。
対し、裸にされた光元素は斥力によって剣の外に押し出されたりするが、ピンボールのように中で跳ね回るものもいる。これが制御を不安定にしている原因の一つであるが、ここにさらなる変化が生じる。
それを引き起こすのは鋼の中に含まれている炭素である。鋼とは炭素をある濃度で含んでいる鉄のことであるが、この世にある鉄はほとんどが鋼である。炭素を含まない純鉄のほうがはるかに珍しい。鉄は炭素を好む物質であり、強く引き込むのだ。ダイヤモンドを鉄で加工すると、ダイヤを構成する炭素が鉄に奪われるほどである。
そしてこの炭素は光魔法の元素と強く引き合うという性質を有している。
光魔法の元素は炭素と結び付くが、当然、近くには斥力を生む鉄元素が大量に存在する。
結び付いた炭素はその斥力の影響を受ける。光魔法の元素に引きずられるのだ。
それによって炭素は鉄の中を移動し始める。激しく振動しながら、である。その間も鉄は炭素を引っ張り続ける。光元素と炭素の関係を引き裂こうとするかのように。
そしてその破局は間も無く訪れる。鉄元素のほうが圧倒的に数が多いからだ。
この際、光元素は凄まじい勢いで弾き飛ばされる。強い引力で結び付いていた状態が、数の暴力によるより強い斥力でちぎられるからだ。
しかしこの現象によって加速を得た光元素は、鉄の中を高速で駆け抜けながら、道中にある光粒子と反応していく。これが振動の原因である。
このままでは不規則な波を発し続けるだけの暴れ馬である。が、安定させれば、言い換えればその挙動に規則性を持たせることが出来れば、その現象は増幅という機能を果たしてくれる。
初めにクリスが行った手から剣へ一定の周期で流し込む作業がその安定化作業なのだ。
流し込まれた光魔法の粒子群は柄から先端に至った後、多くは手元に帰ってくる。これは空気の方が抵抗が高いためだ。剣から手も同様である。ゆえに、光魔法の粒子は根元と先端部を何度も往復することになる。
そして流し込まれ続けるゆえに、剣の内部はあっという間に光魔法の粒子で一杯になる。
この状態は例えるならば、水で満たした洗面器を左右に揺らしているような状態である。水である光粒子はあふれてこぼれ続けるが、手という蛇口から注がれ続けているゆえに容器が空になることは無い。
そして光元素は光粒子と引き合う関係にあるがゆえに、大量に流れ込み続ける光粒子に引きずられることになる。鉄元素に押されるため滑らかな動きでは無いが、光粒子の方が圧倒的に多いため洗面器の中を規則的に往復するようになる。つまり、数の暴力による不規則性をさらなる数の暴力で制御するということだ。
当然、炭素もこの影響を受けることになる。光元素に引きずられるがまま、洗面器の中を、剣の中をゆらめくことになるのだ。
そして結果として光元素と炭素の破局の形に変化が生まれる。光元素が加速発射される方向にある程度の規則性が生まれることになる。鉄元素にも引っ張られているため必ずでは無いが、炭素は光元素の背後を追従するように動くためだ。光元素が発射される方向は進行方向側に偏ることになる。
ならば、感知能力者が剣に求める性質は炭素が均一に分布されているかどうかだろうと思われるだろうが、これは正解では無い。
使い手によって光魔法の性質に差異があるからだ。しかし間違いとも言いきれない。炭素が均一に分布していれば扱いやすいことは間違い無いからだ。
そしてその差異は様々である。既に述べられた炎魔法との配分はもちろん、光魔法自体に最初から鋭い回転が加わっていたり、放出される方向に偏りがあったりする。和の国の鍛冶師達はその特徴を見抜き、専用剣を仕上げる。
しかしアランの国にそのような技術を持つ鍛冶師はいない。刀自体が容易に手に入らない。
さらにクリスの光魔法にも独特の癖があった。
だからクリスは自力で選別せざるを得なかったのだ。
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*荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください
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*他のサイトでも公開します
*10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします
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