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第七章 アランが父に代わって歴史の表舞台に立つ
第五十一話 勇将の下に弱卒なし(3)
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そして舞台には先と同じ絵が、荒れ果てた山肌の中にたたずむケビンの姿だけが残った。
いや、同じなのは見た目だけでは無かった。
直後の動きも既に見せたものであった。
追っ手の死体のもとに駆け寄り、新たな剣を拾う。
一本だけでは無い。投擲のために持てるだけ拾いまくる。
そしてケビンは剣を拾い、脇に抱えながら思った。一つ問題がある、と。
投擲だけではいつまでもはしのげない。雲水のように嵐を、三日月を放つ必要がある。
だが自分は三日月を放つのが下手なのだ。自爆する可能性があるほどに。
ケビンがそこまで考えた直後、
「!?」
ケビンの顔は再び同じ驚きに染まった。
また声が響いたのだ。
(それについてはお任せを)と。
そしてその声色はクラウスと同じであるように聞こえた。
なんだこれは、と、ケビンが戸惑っていると、前方でラルフが再び構えた。
またさっきのと同じやつが来る、それを感じ取る頃にはケビンは既に剣を構えていた。
剣を握る両手を腹の前に置き、剣先を相手の目に向ける、いわゆる正眼の構え。
これまでのものとは違う、熟練を感じさせる堂に入った姿勢。
『ケビンが』脇に集めた剣は足元に捨てられている。
なぜか。
その理由は『ケビンには』分からなかった。
だからケビンは心の中で叫んでいた。
(何が起きている?!)と。
困惑と焦りなどの感情を込めて。
しかしその色は顔に滲まない。
体の自由が一切利かない。
まるで誰かに乗っ取られているかのようだ、ケビンがそう思った瞬間、再び声が響いた。
(それは正確ではありませんが、そのようなものです)と。
そして声は続いた。
(ですがご安心を)と。
クラウスと同じ声をした何者かはそう答えた後、剣を振り上げ、構えを大上段に変えた。
そして剣先が天を指したのと同時に、ラルフは閃光を放った。
光が溢れ、洪水となる。
ケビンから自由を奪った何者かは、迫るその圧倒的攻撃を前に息を深く吸い込んだ後、
「破ッ!」
勢い良く剣を振り下ろした。
三日月が放たれ、洪水とぶつかり合う。
瞬間、完璧だ、とケビンは思った。
同時に声が響いた。
(後は任せましたぞ)と。
「!?」
その直後、体の自由が再び戻った。
一体なんなんだ、ケビンは心の中でそう叫びながら三日月が作り出した安全地帯に向かって踏み込んだ。
「でぇやああっ!」
気勢を上げながら先と同じように剣を振り回す。
剣閃と蛇と波が幾重にも折り重なるその芸術の中で、ケビンは再び同じ声を聞いた。
――あなたは願ったではありませんか。『あの時の二人のように』と。
そして光と轟音が過ぎ去り、青空がケビンの瞳に映ると同時に声は続いた。
――『あの時』から我々は『あの二人』を目標に準備してきたのです。
すると、脳裏に『一人の』女性の姿が浮かんだ。
それはまぎれもなく、シャロンだった。
そうだ。ケビンの中にいる何かは、あの戦いから今日まで積み上げ続けてきた。
魂という機能に手を入れ直し、虫を使えるようにした。
しかしそこで早くも壁にぶつかった。
時が少し遅く感じるほどの高速演算まで手に入れたが、あの女にはまだ歯が立たない、そう思えた。
だからケビンの中にいる何かはあの女を参考にし、同じものを作り上げようとした。
しかし混沌の原理が分からなかった。
だが、たとえ同じでなくとも、完全な写しで無くとも、似せることは出来る。近付くことは出来る。
そう考えたケビンの中にいる何者かは、クラウスの皮を着せた何かを作り上げたのだ。
しかし、時に「第四の存在」と表現されるそれは一体何なのか。
一言で表すならばそれは「意思ある遺伝子」である。
しかしこの表現は正確では無い。要は、思考力を有する遺伝子の管理者が存在する、ということである。
管理者は一人とは限らない。そしてその数は個人差がある。
以前ナチャが軽く話したように、この世界の人類はかつて魂の奴隷であったが、その関係を破綻させたのがこの者達である。ルイスはそれをよく知っている。ルイスはその時代に生まれたのだから。
つまり、ケビンの中にいる管理者はかつて忌み嫌い、そして放置し、ほこりをかぶっていた魂という機能に手を入れ直したのだ。魂というものを既に道具として利用している他の者達のように。
いや、同じなのは見た目だけでは無かった。
直後の動きも既に見せたものであった。
追っ手の死体のもとに駆け寄り、新たな剣を拾う。
一本だけでは無い。投擲のために持てるだけ拾いまくる。
そしてケビンは剣を拾い、脇に抱えながら思った。一つ問題がある、と。
投擲だけではいつまでもはしのげない。雲水のように嵐を、三日月を放つ必要がある。
だが自分は三日月を放つのが下手なのだ。自爆する可能性があるほどに。
ケビンがそこまで考えた直後、
「!?」
ケビンの顔は再び同じ驚きに染まった。
また声が響いたのだ。
(それについてはお任せを)と。
そしてその声色はクラウスと同じであるように聞こえた。
なんだこれは、と、ケビンが戸惑っていると、前方でラルフが再び構えた。
またさっきのと同じやつが来る、それを感じ取る頃にはケビンは既に剣を構えていた。
剣を握る両手を腹の前に置き、剣先を相手の目に向ける、いわゆる正眼の構え。
これまでのものとは違う、熟練を感じさせる堂に入った姿勢。
『ケビンが』脇に集めた剣は足元に捨てられている。
なぜか。
その理由は『ケビンには』分からなかった。
だからケビンは心の中で叫んでいた。
(何が起きている?!)と。
困惑と焦りなどの感情を込めて。
しかしその色は顔に滲まない。
体の自由が一切利かない。
まるで誰かに乗っ取られているかのようだ、ケビンがそう思った瞬間、再び声が響いた。
(それは正確ではありませんが、そのようなものです)と。
そして声は続いた。
(ですがご安心を)と。
クラウスと同じ声をした何者かはそう答えた後、剣を振り上げ、構えを大上段に変えた。
そして剣先が天を指したのと同時に、ラルフは閃光を放った。
光が溢れ、洪水となる。
ケビンから自由を奪った何者かは、迫るその圧倒的攻撃を前に息を深く吸い込んだ後、
「破ッ!」
勢い良く剣を振り下ろした。
三日月が放たれ、洪水とぶつかり合う。
瞬間、完璧だ、とケビンは思った。
同時に声が響いた。
(後は任せましたぞ)と。
「!?」
その直後、体の自由が再び戻った。
一体なんなんだ、ケビンは心の中でそう叫びながら三日月が作り出した安全地帯に向かって踏み込んだ。
「でぇやああっ!」
気勢を上げながら先と同じように剣を振り回す。
剣閃と蛇と波が幾重にも折り重なるその芸術の中で、ケビンは再び同じ声を聞いた。
――あなたは願ったではありませんか。『あの時の二人のように』と。
そして光と轟音が過ぎ去り、青空がケビンの瞳に映ると同時に声は続いた。
――『あの時』から我々は『あの二人』を目標に準備してきたのです。
すると、脳裏に『一人の』女性の姿が浮かんだ。
それはまぎれもなく、シャロンだった。
そうだ。ケビンの中にいる何かは、あの戦いから今日まで積み上げ続けてきた。
魂という機能に手を入れ直し、虫を使えるようにした。
しかしそこで早くも壁にぶつかった。
時が少し遅く感じるほどの高速演算まで手に入れたが、あの女にはまだ歯が立たない、そう思えた。
だからケビンの中にいる何かはあの女を参考にし、同じものを作り上げようとした。
しかし混沌の原理が分からなかった。
だが、たとえ同じでなくとも、完全な写しで無くとも、似せることは出来る。近付くことは出来る。
そう考えたケビンの中にいる何者かは、クラウスの皮を着せた何かを作り上げたのだ。
しかし、時に「第四の存在」と表現されるそれは一体何なのか。
一言で表すならばそれは「意思ある遺伝子」である。
しかしこの表現は正確では無い。要は、思考力を有する遺伝子の管理者が存在する、ということである。
管理者は一人とは限らない。そしてその数は個人差がある。
以前ナチャが軽く話したように、この世界の人類はかつて魂の奴隷であったが、その関係を破綻させたのがこの者達である。ルイスはそれをよく知っている。ルイスはその時代に生まれたのだから。
つまり、ケビンの中にいる管理者はかつて忌み嫌い、そして放置し、ほこりをかぶっていた魂という機能に手を入れ直したのだ。魂というものを既に道具として利用している他の者達のように。
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