Chivalry - 異国のサムライ達 -

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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最終章

第五十五話 逢魔の調べ(2)

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 影達の悲鳴が次々と連鎖するかのように場に響き渡る。

「……っ!」

 その痛々しい声に、キーラは表情を歪ませた。
 一気に数を減らされたからだ。
 キーラが選んだ安全地帯は民家の屋根の上。
 キーラは同じ逃げ場所を選んだ影達と共にその惨状を見下ろしていた。
 そして考え始めた。
 これとどう戦うかを。

「!」

 しかしその思考は直後に中断させられた。
 照準がこちらに向いたのを感じ取ったキーラは叫んだ。

「集合防御!」

 その心と耳に響いた声に、影達は即座に反応した。
 キーラを中心として集まる。
 そして小さな円陣が完成したと同時にキーラは影達と心を深く繋げた。
 自分の技を真似させるために。
 これは街の中で見せた防御の応用版。
 情報を共有し、計算能力を補い合い、そして庇い合うことを目的とした集団防御術。
 全方位から迫る高速の光弾群、その全ての軌道と速度の情報取得を影達に任せた形。
 キーラはその情報処理の要。中央処理装置。
 誰にどの光弾をどのように処理させるかを決定する。
 もちろんキーラ一人では間に合わない。担当範囲の軌道計算が終わった影達は各個に自衛のための情報処理を開始する。
 迫る情報量は膨大。かつて扱ったことの無い量。速度があるため時間も無い。
 だが、寸でのところで全ての工程は完了した。
 そして直後に到着した光弾は、轟音と閃光と共に炸裂したように見えた。

「「!」」

 が、瞬間、感の良いバージルとアンナは驚きに表情を硬直させた。
 全てを防がれた、それが分かった。
 ある者は受け、ある者は払い、そしてある二人、もしくは三人は協力魔法でそれをしのいだ。
 弾いた光弾が他者に当たることも無い。
 これ以上無い、最適解と言えるような防御。
 これもまた芸術であった。
 ゆえに、影達の顔に自然と笑みが浮かびかけた。
 自分が超人になったかのような錯覚を抱くからだ。
 だが直後、その高揚感を消すかのようにアンナの声が場に響いた。

「バージル様!」

 ならば、という思いを込めた呼び声。
 その声に込められたアンナの思惑を受け取ったバージルは、

「応ッ!」

 気勢を返し、そして動いた。
 後ろを向くかのように上半身を限界まで捻りながら、両手で握り直した輝く槍斧をかつぐように左肩に乗せる。
 全身全霊の一撃の型。
 バージルはその形を維持したまま、ちらりと後方に目を移した。
 左後ろから迫ってくるアンナの姿が映る。
 アンナも既に構えていた。
 バージルと同じ、体を捻った全力の型。
 されどバージルとは鏡合わせ。右肩に輝く長剣を乗せた形。左右対称。
 二人の視線が交錯する。
 バージルの瞳に映るアンナの姿がみるみるうちに大きくなる。
 そして、駆けるアンナが通り過ぎるようにバージルの真左に差し掛かった瞬間、 

「でぇやぁっ!」「せぇやぁっ!」

 二人は同時に体に込めた力を解放した。
 捻りの力が横回転となって刃に乗る。
 だが、二人ともその力を相手に向かって傾けた。
 アンナは右下にいるバージルに向かって、バージルは左上に向かって。
 鏡合わせの形で放たれた双方の刃は、二人を結ぶ線上のちょうど中心でぶつかり合うように見えた。
 しかし違った。完全な鏡合わせでは無かった。
 アンナの刃はわずかに上に浮いている。
 対するバージルの刃はわずかに下に沈んでいる。
 ゆえに、刃はぶつかり合わずに重なる。
 ゆえに、放たれた三日月も同じ。
 一枚に重なった二つの三日月。
 防げるものならば魅せてみよ、そんな思いを放ちながら屋根上にいるキーラ達に迫る。
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