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最終章
第五十五話 逢魔の調べ(5)
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蜘蛛のように糸が伸び、広がって網となる。
しかしその網は騎兵隊が放った光弾群によって直後に引き裂かれた。
それを見たキーラは、ならば「これ」ならばと、右手の中に赤い弾を作り始めた。
しかしキーラはすぐに投げるつもりはなかった。
これは網よりも連射が利かないからだ。
そして恐らく、遠距離から投げても網と同じように撃墜される可能性が高い。
ならば、これの使い道は一つしか思いつかなかった。
先頭の騎兵が眼前に近づく。
「――っ!」
騎手が気勢と共に、手にあるランスを突き放たんと引き絞る。
しかし音の情報を遮断しているキーラの心には響かない。
そしてキーラは静かで緩慢なその世界の中で、馬の足元を狙って赤い球を投げつけた。
「――ッ!」
馬が心に響かぬ悲鳴と共に転倒する。
しかしこの時既に、倒れた馬の左右に二体の騎兵。
次弾発射による迎撃は確実に間に合わない。
だがそれでもキーラは右手で爆発魔法の形成を開始した。
騎兵に先手で通用し、かつ最も回転の速い攻撃がこれだからであり、そして仲間を信用しているからであった。
影達はその期待に応えた。生き残るには応えざるを得なかった。
「「でえやっ!」」
左右の騎兵が同時にランスを振るう。
型は双方共に横ぶりのなぎ払い。
しかしぶつからない。アンナとバージルの時のように。高さが違う。
影達は首と腹部を狙って同時に放たれたそれを、協力魔法の盾で受けた。
「「「!」」」
瞬間、機械であった影達の顔に、わずかに復活した心の色が滲んだ。
ランスを弾けなかったからだ。
そして騎兵の狙いがそれ、ランスを押し当てることによる拘束だったからだ。
「ハイラァッ!」
直後、左右の騎兵の間に気勢が割って入った。
いつでも突き出せるように輝くランスを構え、転倒した馬を飛び越えて迫ってくる。
その先端から伸びる殺意が、拘束されている前列の中央の影に突き刺さる。
「……!」
瞬間、その影は復活した恐怖の色と共に仲間に向かって叫んだ。
誰か、と。
が、
「「「……」」」
誰も応えられなかった。
どうすれば何とかなるのか、誰にも分からなかった。
だから、影は、
「……」
これは運命だと、運悪く前列の中央にいたからだと受け入れ、機械に戻った。
放たれたランスが光の盾を突き破り、影の心臓にねじこまれる。
そしてその身を貫いた先端は、後ろにいるキーラの目先で止まった。
「!」
瞬間、キーラは感じ取った。
影の理性が再び蘇ったのを。
そして叫んだのを。
それはランスを通じて騎兵の心にも届いていた。
どうせ死ぬなら道連れだ! と。
そして直後、影は三本のランスを離すまいと抱え込みながらその思いを口から吐き出した。
「隊長ォッ!」
キーラは既に応えていた。
左手で展開した小さな防御魔法を貫かれた影の背に叩き付けていた。
「「「!?」」」
影の体が前に押し出され、三体の騎兵がその姿勢を崩す。
そしてキーラは少し離れたその背に向かって赤い弾を投げ込んだ。
「「「――っ!」」」
轟音と共に響かぬ悲鳴が三つ。
しかし、音の無い影達の心に波紋が立っていた。
その凄絶な死に様に仲間の心は色を取り戻していた。感情が湧き上がっていた。
それは言葉にするならば――
どうせ死ぬならあんな風に逝きたい、そんな感じであった。
しかしその網は騎兵隊が放った光弾群によって直後に引き裂かれた。
それを見たキーラは、ならば「これ」ならばと、右手の中に赤い弾を作り始めた。
しかしキーラはすぐに投げるつもりはなかった。
これは網よりも連射が利かないからだ。
そして恐らく、遠距離から投げても網と同じように撃墜される可能性が高い。
ならば、これの使い道は一つしか思いつかなかった。
先頭の騎兵が眼前に近づく。
「――っ!」
騎手が気勢と共に、手にあるランスを突き放たんと引き絞る。
しかし音の情報を遮断しているキーラの心には響かない。
そしてキーラは静かで緩慢なその世界の中で、馬の足元を狙って赤い球を投げつけた。
「――ッ!」
馬が心に響かぬ悲鳴と共に転倒する。
しかしこの時既に、倒れた馬の左右に二体の騎兵。
次弾発射による迎撃は確実に間に合わない。
だがそれでもキーラは右手で爆発魔法の形成を開始した。
騎兵に先手で通用し、かつ最も回転の速い攻撃がこれだからであり、そして仲間を信用しているからであった。
影達はその期待に応えた。生き残るには応えざるを得なかった。
「「でえやっ!」」
左右の騎兵が同時にランスを振るう。
型は双方共に横ぶりのなぎ払い。
しかしぶつからない。アンナとバージルの時のように。高さが違う。
影達は首と腹部を狙って同時に放たれたそれを、協力魔法の盾で受けた。
「「「!」」」
瞬間、機械であった影達の顔に、わずかに復活した心の色が滲んだ。
ランスを弾けなかったからだ。
そして騎兵の狙いがそれ、ランスを押し当てることによる拘束だったからだ。
「ハイラァッ!」
直後、左右の騎兵の間に気勢が割って入った。
いつでも突き出せるように輝くランスを構え、転倒した馬を飛び越えて迫ってくる。
その先端から伸びる殺意が、拘束されている前列の中央の影に突き刺さる。
「……!」
瞬間、その影は復活した恐怖の色と共に仲間に向かって叫んだ。
誰か、と。
が、
「「「……」」」
誰も応えられなかった。
どうすれば何とかなるのか、誰にも分からなかった。
だから、影は、
「……」
これは運命だと、運悪く前列の中央にいたからだと受け入れ、機械に戻った。
放たれたランスが光の盾を突き破り、影の心臓にねじこまれる。
そしてその身を貫いた先端は、後ろにいるキーラの目先で止まった。
「!」
瞬間、キーラは感じ取った。
影の理性が再び蘇ったのを。
そして叫んだのを。
それはランスを通じて騎兵の心にも届いていた。
どうせ死ぬなら道連れだ! と。
そして直後、影は三本のランスを離すまいと抱え込みながらその思いを口から吐き出した。
「隊長ォッ!」
キーラは既に応えていた。
左手で展開した小さな防御魔法を貫かれた影の背に叩き付けていた。
「「「!?」」」
影の体が前に押し出され、三体の騎兵がその姿勢を崩す。
そしてキーラは少し離れたその背に向かって赤い弾を投げ込んだ。
「「「――っ!」」」
轟音と共に響かぬ悲鳴が三つ。
しかし、音の無い影達の心に波紋が立っていた。
その凄絶な死に様に仲間の心は色を取り戻していた。感情が湧き上がっていた。
それは言葉にするならば――
どうせ死ぬならあんな風に逝きたい、そんな感じであった。
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*荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください
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