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第六章 アランの力は遂に一つの頂点に
第四十二話 魔王(1)
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◆◆◆
魔王
◆◆◆
ケビンは夢を見た。
複数の何かが話し合っている声のようなものが聞こえる。
ほとんどはただの雑音のよう。しかし、たまに意味のある言葉が意識に入る。感じ取れる。
それ以外には何も無い。
ただただ真っ暗。景色が無い。色が無い。
そして体は動かせない。感覚も無い。
本当に、声が聞こえるだけ。
だからケビンには耳をすますことしか出来なかった。
「作り変えなくちゃ」
「そうだね。これからきっと大変になる」
「あいつと同じことが出来るようにならなくては」
何をするつもりだ? それをケビンは尋ねようとしたが、出来なかった。
◆◆◆
それから暫くの間、意識が消えた。
時間の感覚が無い、夢の無い眠り。
そして気がつけば、声はまだ続いていた。
「やっぱり熱が出た」
「それはしょうがない」
「でもこれであれが出来るようになった」
「もう大丈夫。熱は下がり始めてる」
その後、似たようなやり取りが何度か続いたが、
「ところで、『彼女』はどうする?」
という、何かが放った一言が、全ての雑音を止めた。
「「「……」」」
静寂がしばらく続いた後、何かが声を上げた。
「いいことを思いついた」
と。
その「いいこと」が何なのかをケビンは知りたかったが、直後、『彼』の意識は再び消えた。
◆◆◆
「……ふう」
ある部屋を出たと同時に、サイラスは深く息を吐いた。
たった今、厄介な仕事の一つを終えたからだ。
それはカイルの懐柔。
思ったよりもすんなりとカイルは反乱軍への参加を承諾してくれた。
サイラスが疲れたのは別の理由。
本当の事を話すべきかどうか悩んだのだ。
サイラスはカイルがヨハンの側近であることを知っていた。
脅されていることも知っていた。だからサイラスは先に調査した。
そして、カイルの両親は既に死んでいたことが分かった。
リーザの炎が原因では無い。かなり以前に自殺していたようだ。
そして第二に、カイルに本当の「敵」のことを話すか、それともラルフのように一線を引くかどうかについて、サイラスはかなり悩んだ。
あのヨハンの側近だったのだ、間違いなく強いだろう。しかし、脅されていたとはいえ、教会側の人間を安易に仲間に加えていいものかどうか判断がつかなかったのだ。ラルフのように上手く抱きこめるとは限らない。
しかしこれについては悩んだ意味が無かった。
カイルは「あの女」のことを知っていた。サイラス達と戦ったことも感じ取っていた。
ゆえに、サイラスが部屋に入った直後にカイルは口を開いた。そのことについて尋ねてきた。
その話の後に両親のことを話した。
サイラスは嘘をつかなかった。つくべきでは無いと思った。
それが正解だったのかはまだ分からない。
(結果が出るのはまだ先のこと。今出来るのは積み重ねることだけだ――)
サイラスはそんなことを考えながら、廊下を歩き出した。
サイラスはまだ気付いていない。
なぜ、ラルフには嘘をつくべきだと思っているのか、ということを。
魔王
◆◆◆
ケビンは夢を見た。
複数の何かが話し合っている声のようなものが聞こえる。
ほとんどはただの雑音のよう。しかし、たまに意味のある言葉が意識に入る。感じ取れる。
それ以外には何も無い。
ただただ真っ暗。景色が無い。色が無い。
そして体は動かせない。感覚も無い。
本当に、声が聞こえるだけ。
だからケビンには耳をすますことしか出来なかった。
「作り変えなくちゃ」
「そうだね。これからきっと大変になる」
「あいつと同じことが出来るようにならなくては」
何をするつもりだ? それをケビンは尋ねようとしたが、出来なかった。
◆◆◆
それから暫くの間、意識が消えた。
時間の感覚が無い、夢の無い眠り。
そして気がつけば、声はまだ続いていた。
「やっぱり熱が出た」
「それはしょうがない」
「でもこれであれが出来るようになった」
「もう大丈夫。熱は下がり始めてる」
その後、似たようなやり取りが何度か続いたが、
「ところで、『彼女』はどうする?」
という、何かが放った一言が、全ての雑音を止めた。
「「「……」」」
静寂がしばらく続いた後、何かが声を上げた。
「いいことを思いついた」
と。
その「いいこと」が何なのかをケビンは知りたかったが、直後、『彼』の意識は再び消えた。
◆◆◆
「……ふう」
ある部屋を出たと同時に、サイラスは深く息を吐いた。
たった今、厄介な仕事の一つを終えたからだ。
それはカイルの懐柔。
思ったよりもすんなりとカイルは反乱軍への参加を承諾してくれた。
サイラスが疲れたのは別の理由。
本当の事を話すべきかどうか悩んだのだ。
サイラスはカイルがヨハンの側近であることを知っていた。
脅されていることも知っていた。だからサイラスは先に調査した。
そして、カイルの両親は既に死んでいたことが分かった。
リーザの炎が原因では無い。かなり以前に自殺していたようだ。
そして第二に、カイルに本当の「敵」のことを話すか、それともラルフのように一線を引くかどうかについて、サイラスはかなり悩んだ。
あのヨハンの側近だったのだ、間違いなく強いだろう。しかし、脅されていたとはいえ、教会側の人間を安易に仲間に加えていいものかどうか判断がつかなかったのだ。ラルフのように上手く抱きこめるとは限らない。
しかしこれについては悩んだ意味が無かった。
カイルは「あの女」のことを知っていた。サイラス達と戦ったことも感じ取っていた。
ゆえに、サイラスが部屋に入った直後にカイルは口を開いた。そのことについて尋ねてきた。
その話の後に両親のことを話した。
サイラスは嘘をつかなかった。つくべきでは無いと思った。
それが正解だったのかはまだ分からない。
(結果が出るのはまだ先のこと。今出来るのは積み重ねることだけだ――)
サイラスはそんなことを考えながら、廊下を歩き出した。
サイラスはまだ気付いていない。
なぜ、ラルフには嘘をつくべきだと思っているのか、ということを。
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