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第一話 太陽に照らされて目覚めるエイジ(6)

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   ◆◆◆

 最初は怖かった。
 それが私の彼に対しての印象。
 だから一緒にクラス委員をやると決まった時はイヤだった。
 だけど、私のその印象は間違っていたことに、彼は気付かせてくれた。

   ◆◆◆

 彼女が自分に対して良い印象を抱いていないことはわかっていた。事実、クラス委員が決まった時、彼女はあまり良い顔をしていなかった。
 だが、俺は好機だと思った。あの時のクソみたいな思い出を清算するチャンス、そう思った。
 しかし今更一年前のことを持ち出されても気持ち悪がられるだけだろうと思った。幸いなことにそのくらいのことは当時の俺でも分かった。
 だから俺は労働で支払うことにした。

   ◆◆◆

「このプリントを教室に運んでおいてくれるか」

 後日、クラス委員として最初の仕事が与えられた。

「すまんが、頼んだぞ」

 そう言ってプリントの束を指差す先生の顔は、ぜんぜん申し訳なさそうじゃなかった。
 つまらない仕事。だから俺はどうするか最初から決めていた。

「え、ちょっと、影野くん?」

 俺は彼女よりは先にプリントの束を掴み、その全てを持ち上げた。

「いいよ、重いから。俺が一人で運ぶよ」

 これがクラス委員の主な仕事。要は雑用係だ。
 ホームルームを仕切るとか、それらしい仕事もあるけど、やりがいは無い。
 時には、ゴミ捨てなんていうクラス委員とは程遠い仕事を押し付けられたりもする。
 ゆえにみんなやりたがらない。立候補するのは就職や進学を有利にするために、内申点を意識している連中くらいだ。
 だから俺は彼女の仕事を積極的に横取りした。
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