空は青く、想いは遠く

長野 雪

文字の大きさ
15 / 27

15.ポスターの想い人

しおりを挟む
「羨ましいぞ、別役! なに青春しちゃってんだよ!」

 石山先輩は、声がでかい。いや、大きいのは声だけじゃなくて身長も態度もなんだけど。

「オレが灰色の高校生活を終えようとしてるときに、どうして告白されただの、好きな人だの、そんなバラ色のハイスクールライフ満喫しちゃってるんだよぉ!」
「石山先輩は、そんなだから灰色なんですよ」

 あぁん、ズバッと切り捨てちゃう梓ちゃんが素敵過ぎる!
 そんな風に悶えていたら、青木先輩が優しく聞いてくれた。

「石山くんの話は置いといてー、別役ちゃんはどうしたいのー?」
「今まで通り、好きな人を眺めてたいです……」

 それも、あのぐいぐい来る丹田くんがいる限り、どうにも叶えられそうにないんだけどね。

「いいねいいねー、恋の悩みって感じで」
「灰色な石山先輩は黙っててください」
「青木ぃ、なんかオレって後輩に嫌われてる?」
「石山はー、過干渉ってやつだと思うよー?」

 あー、せめてポスターのざっくりデザインだけは今日中に考えておきたい。逃避行動? うん、まさにそれだ。

「高齢者講習に絞ってみたら?」
「あ、うん。それもありだね。ありがとう、梓ちゃん。……って冷静だね」
「もうこの話題、飽きて来たから」
「梓ちゃぁん!」

 さすがにクール過ぎる! いや、確かに私のせいで梓ちゃんにも迷惑がかかってるのは承知しているんだけど!

「おーおー、さすが鹿宮。親友と言えどスパッと切るのな」
「部長がこうだからー、来年度も心配なしよねー」

 先輩方もなんかパチパチパチって拍手しちゃってるし、いやいやいや、いいの、それで?

「言ったでしょ? ユズがとっととコクればいいんだって」
「それは、そうかもしれないけど……」

 それができたら苦労しないんだよ、梓ちゃん。
 がっくりと肩を落としながら、私は教習所のパンフレットをめくって、高齢者講習の部分を読み始めた。ふむふむ、チャレンジ講習なんてのもあるんだね。スラローム走行とか楽しそう。うまく絵に落とし込めるかな。

「鹿宮は構図決まったのか?」
「こんな感じですね。標識をいくつも描くと楽しそうだと思ったので」
「鹿宮ちゃんはレタリングとかも好きだしー、いいんじゃないー?」

 話を聞いていると、石山先輩は大型バイク、青木先輩は特殊車両をメインに描くらしい。バイク好きだったはずの石山先輩は、ブルドーザーやショベルカーをざっと下書きした青木先輩を見て、いいなーいいなーとウザいぐらいに連呼していた。どうやら大型特殊車両には男のロマンがあるらしい。よく分かんないけど。油圧ジャッキがどうとか言われても、どれのことを言われてるんだか。

「これって、いつまでに完成させなきゃいけないんだっけ」
「1月末のはずー」
「おー、とっとと終わらすべ」

 そうですよ先輩方。受験があるんだから、息抜きとか言ってないで、そっちに専念してください。ポスターはノルマの関係があるので描いて欲しいけど。
 私もだいたいのデザインが決まったところで、部活の時間も終わりになった。


・:*:・・:*:・♪・:*:・・:*:・


 ストレス、というのであれば、これは確かにストレスなんだと思う。
 ことあるごとに丹田くんは話し掛けてくるし、それを邪魔する宇那木さんたちも合流するし、こんなんじゃ落ち着いて七ツ役くんウォッチングができないよ!

 そんなここ一週間ほどのやさぐれ気分を抱え、部活がないのをいいことにいつもの本屋へと足を向けた。
 丹田くんから一緒に帰らないかと誘いがなかったかって? ここ2、3日はその提案をされる前に教室を出るという技を覚えたのさ! 宇那木さんたちもいい感じに話し掛けて妨害してくれるしね! 共闘関係ビバ!

 今日は会えるといいな、なんて願いつつ、それでも駅までの道で後ろから丹田くんが追いかけてきたら怖いな、なんて遠回りをして本屋に到着すると、いつもの棚の前で七ツ役くんの姿を見つけて、なんか癒された。
 うん、あれだよね。砂漠のオアシス。これであと3日は頑張れるわ。

「今日は天気じゃなくて星の本なんだね」
「あ、別役さん。来年の文化祭の話が出てて、その資料があればなって」

 進学校だからなのか、うちの高校の文化祭は早い。でも、それにしたって準備早過ぎない? 美術部だって新年度にならないと、そんな話しないよ?

「随分と早いね。もう星の話って決まってるの?」
「そうだね。化石や地層の話は地味過ぎるって言われるし、天気も、いまいち来場者の食いつきが良くないみたいなんだよ」
「地学天文部って、他に気象予報士志望の人はいないの?」
「うーん、うちの学年だと俺だけかな。どっちかって言うと星好きが多くて」

 まぁ、私も七ツ役くんて存在がなければ気象予報士なんて志望すらしてないと思うんだけどさ。

「そうなんだ。また惑星? でも、そんなに時間かかるものなの?」

 すると、七ツ役くんはちょっと困ったような顔をして首の後ろを掻いた。

「単なる展示だけだったら1ヶ月もかからないんだけどね。プラネタリウムやりたいって言ってるのがいるからなぁ」
「もしかして、お手製プラネタリウム?」
「うん。そこに音声解説を加えるって。そうすると当日の当番も結構やることたくさんあるから、反対意見も多いんだよね」

 プラネタリウムか。もし、七ツ役くんとこれ以上に仲良くなって、どこかに出かけるとしたら、そういう場所なのかな。……って考えただけで、なんかニヤけそう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【短編】記憶を失っていても

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
 7年以上前の記憶のない平民出身のラチェルは、6年前に娘のハリエットを生んでからグリオス国のアンギュロスの森付近の修道院で働きながら暮らしていた。  そんなある日ハリエットは見たことのない白銀色の大樹を見つけたと、母ラチェルに話すのだが……。  これは記憶の全てを失ったラチェル──シェシュティナが全てを取り戻すまでのお話。 ※氷雨そら先生、キムラましゅろう先生のシークレットベビー企画開催作品です( ´艸`)

【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!ー新たなる王室編ー

愚者 (フール)
恋愛
無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます! 幼女編、こちらの続編となります。 家族の罪により王から臣下に下った代わりに、他国に暮らしていた母の違う兄がに入れ替わり玉座に座る。 新たな王族たちが、この国エテルネルにやって来た。 その後に、もと王族と荒れ地へ行った家族はどうなるのか? 離れて暮らすプリムローズとは、どんな関係になるのかー。 そんな彼女の成長過程を、ゆっくりお楽しみ下さい。 ☆この小説だけでも、十分に理解できる様にしております。 全75話 全容を知りたい方は、先に書かれた小説をお読み下さると有り難いです。 前編は幼女編、全91話になります。

【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する

ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。 夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。 社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。 ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。 「私たち、離婚しましょう」 アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。 どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。 彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。 アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。 こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。

【完結】二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。 優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。 優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。 そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。 絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。 そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。

処理中です...