16 / 27
16.星雲の想い人
しおりを挟む
「別役さんは美術部だっけ。やっぱり作品展示とか?」
「そうなるかな。美術部って、今の1年がいないから、新入生次第になるかもしれないけど」
「そうか。でも、作品展示だけだと楽でいいよね」
「その、星好きの人は、プラネタリウムから譲らなそう?」
「うーん、他の高校の天文部が力入れてやってるのを見ちゃったらしくて、燃えてるんだよね」
うわぁ、それは大変そうだ。その人が全部ぐいぐい引っ張ってくれるならまだ楽だろうけど、それでも一人で全部はできないだろうしね。
「だから、なんか上手く反論できる材料ないかなって」
「プラネタリウムに反対?」
「うーん、ちょっと今から始めても準備にかかる時間が読めないからさ。後輩の負担も大きいだろうし」
「……その人が、どうしてプラネタリウムをしたいのかってところから攻めるといいと思う」
「別役さん?」
あ、いけない。これって口を突っ込み過ぎだよね。あんまり自分の意見を押し付けるのはよくないよくない。押しが強いことで感じる不快感は、丹田くんで十分味わったんだ。反面教師ってやつ。
「なんか、いい方法あるの?」
「あー……、その、私、部外者だから、あんまり口出しはよくない、よね」
「いや、正直煮詰まってるから、なんでも言ってくれると助かる」
七ツ役くんを助けるためなら、そりゃ一肌でも二肌でも脱がないと! 俄然燃えてきた。
「うーん、あくまで私個人の意見だからね。期待しないでね」
誰かの意見に反論するなら、相手が何をどう考えているのかを知る必要がある……というのはお母さんのセリフだ。ただし、感情論で言っている場合はその限りではないらしいけど。
「純粋にやりたいというだけなら、反論っていうのは難しいかもしれないけど、文化祭の出し物なら、狙いを絞った上で説得するのがいいかな」
「狙い?」
「うん。たとえば、出し物を見た人に、もっと星に興味を持ってもらいたい、とか? 興味の入口なら星座にまつわる神話とか、深く興味を持ってもらいたいなら、星座の見つけ方、とか?」
「うんうん」
どうしよう。七ツ役くんが、私の話に興味を持って聞いてくれてる! ちょっと神様時間止めて! この七ツ役くんの顔を堪能するから! 心のスクショに永久保存だから!
「プラネタリウムって、えーと、手軽なのだったら穴開けるあれだよね」
「たぶん」
「そうすると、星雲とかって無理だよね。そこから攻められたりしない? 星座よりも星雲ってそれほどメジャーでないけど、分かりやすい形してるのもあるじゃない」
「おおー、なるほど」
七ツ役くんに天文の話をして『なるほど』いただきました! え、ちょっと待って。もしかして、私、今日死ぬの? それぐらい嬉しいんだけど!
「ちなみに別役さんって、星雲って言われたら何知ってる?」
「え? えぇと、バラ星雲ってあったよね? あと、馬頭星雲ぐらい、かな?」
「もえるき星雲は?」
「萌える気?」
私は首を傾げた。どうしよう。もしかして有名な星雲だったりするのかな。萌える……萌え系? 萌え系の星雲なの?
「あ、やっぱり知らないもんなんだね。ちょっと待って。確か、ここのあたりに――――」
七ツ役くんは重たそうな星の写真集を下の方の棚から引っ張り出すと、パラパラとめくり出した。もしかして、このあたりの本棚を把握してたりするんだろうか。立ち読み歴長いの?
「あぁ、これこれ」
「燃える木星雲?」
「さっき別役さんが言った馬頭観音の近くにあるんだ。同じように光の部分じゃなくて影の部分が木の幹っぽく見えるでしょう」
「うん、幹の周囲が光ってるから、確かに木が燃えてるように見えるかも。面白いね」
私の感想に、七ツ役くんは少し笑って頷いてくれた。
「星雲は確かにあまり知られてないし、そっちで攻めてみてもいいかもしれない。面白い形のもあるしね。ありがとう、参考になったよ」
「どういたしまして?」
ありがとう! 七ツ役くんから「ありがとう」いただきましたー! きゃふー! ドンドンパフパフ! 今日はお赤飯だー! いや、しないけど。
「教えてくれた|星検のおかげで、私も星には詳しくなったし、これぐらいお返ししなきゃ」
「お返しって、もともと星に興味がなかったらうちの部の展示なんて来ないでしょ」
「あはは……」
ごめんなさい。最初はちょっと時間つぶしのために行ったなんて言えないわ、これ。言っても七ツ役くんなら笑って許してくれそうだけどさ。
「なぁ、七ツ役。ホントにユズが来たりするわけー? ……って、うぉ! ホントに居た!」
言っていい? なんでここにいるのかな?
ねぇ、神様? 実は私のこと嫌いでしょ? これだけ七ツ役くんと楽しく語らってるっていうのに、完全お邪魔虫がいるとかさ、どういうこと? 上げて落とす作戦なの? 神てめぇ!
「そうなるかな。美術部って、今の1年がいないから、新入生次第になるかもしれないけど」
「そうか。でも、作品展示だけだと楽でいいよね」
「その、星好きの人は、プラネタリウムから譲らなそう?」
「うーん、他の高校の天文部が力入れてやってるのを見ちゃったらしくて、燃えてるんだよね」
うわぁ、それは大変そうだ。その人が全部ぐいぐい引っ張ってくれるならまだ楽だろうけど、それでも一人で全部はできないだろうしね。
「だから、なんか上手く反論できる材料ないかなって」
「プラネタリウムに反対?」
「うーん、ちょっと今から始めても準備にかかる時間が読めないからさ。後輩の負担も大きいだろうし」
「……その人が、どうしてプラネタリウムをしたいのかってところから攻めるといいと思う」
「別役さん?」
あ、いけない。これって口を突っ込み過ぎだよね。あんまり自分の意見を押し付けるのはよくないよくない。押しが強いことで感じる不快感は、丹田くんで十分味わったんだ。反面教師ってやつ。
「なんか、いい方法あるの?」
「あー……、その、私、部外者だから、あんまり口出しはよくない、よね」
「いや、正直煮詰まってるから、なんでも言ってくれると助かる」
七ツ役くんを助けるためなら、そりゃ一肌でも二肌でも脱がないと! 俄然燃えてきた。
「うーん、あくまで私個人の意見だからね。期待しないでね」
誰かの意見に反論するなら、相手が何をどう考えているのかを知る必要がある……というのはお母さんのセリフだ。ただし、感情論で言っている場合はその限りではないらしいけど。
「純粋にやりたいというだけなら、反論っていうのは難しいかもしれないけど、文化祭の出し物なら、狙いを絞った上で説得するのがいいかな」
「狙い?」
「うん。たとえば、出し物を見た人に、もっと星に興味を持ってもらいたい、とか? 興味の入口なら星座にまつわる神話とか、深く興味を持ってもらいたいなら、星座の見つけ方、とか?」
「うんうん」
どうしよう。七ツ役くんが、私の話に興味を持って聞いてくれてる! ちょっと神様時間止めて! この七ツ役くんの顔を堪能するから! 心のスクショに永久保存だから!
「プラネタリウムって、えーと、手軽なのだったら穴開けるあれだよね」
「たぶん」
「そうすると、星雲とかって無理だよね。そこから攻められたりしない? 星座よりも星雲ってそれほどメジャーでないけど、分かりやすい形してるのもあるじゃない」
「おおー、なるほど」
七ツ役くんに天文の話をして『なるほど』いただきました! え、ちょっと待って。もしかして、私、今日死ぬの? それぐらい嬉しいんだけど!
「ちなみに別役さんって、星雲って言われたら何知ってる?」
「え? えぇと、バラ星雲ってあったよね? あと、馬頭星雲ぐらい、かな?」
「もえるき星雲は?」
「萌える気?」
私は首を傾げた。どうしよう。もしかして有名な星雲だったりするのかな。萌える……萌え系? 萌え系の星雲なの?
「あ、やっぱり知らないもんなんだね。ちょっと待って。確か、ここのあたりに――――」
七ツ役くんは重たそうな星の写真集を下の方の棚から引っ張り出すと、パラパラとめくり出した。もしかして、このあたりの本棚を把握してたりするんだろうか。立ち読み歴長いの?
「あぁ、これこれ」
「燃える木星雲?」
「さっき別役さんが言った馬頭観音の近くにあるんだ。同じように光の部分じゃなくて影の部分が木の幹っぽく見えるでしょう」
「うん、幹の周囲が光ってるから、確かに木が燃えてるように見えるかも。面白いね」
私の感想に、七ツ役くんは少し笑って頷いてくれた。
「星雲は確かにあまり知られてないし、そっちで攻めてみてもいいかもしれない。面白い形のもあるしね。ありがとう、参考になったよ」
「どういたしまして?」
ありがとう! 七ツ役くんから「ありがとう」いただきましたー! きゃふー! ドンドンパフパフ! 今日はお赤飯だー! いや、しないけど。
「教えてくれた|星検のおかげで、私も星には詳しくなったし、これぐらいお返ししなきゃ」
「お返しって、もともと星に興味がなかったらうちの部の展示なんて来ないでしょ」
「あはは……」
ごめんなさい。最初はちょっと時間つぶしのために行ったなんて言えないわ、これ。言っても七ツ役くんなら笑って許してくれそうだけどさ。
「なぁ、七ツ役。ホントにユズが来たりするわけー? ……って、うぉ! ホントに居た!」
言っていい? なんでここにいるのかな?
ねぇ、神様? 実は私のこと嫌いでしょ? これだけ七ツ役くんと楽しく語らってるっていうのに、完全お邪魔虫がいるとかさ、どういうこと? 上げて落とす作戦なの? 神てめぇ!
0
あなたにおすすめの小説
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【短編】記憶を失っていても
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
7年以上前の記憶のない平民出身のラチェルは、6年前に娘のハリエットを生んでからグリオス国のアンギュロスの森付近の修道院で働きながら暮らしていた。
そんなある日ハリエットは見たことのない白銀色の大樹を見つけたと、母ラチェルに話すのだが……。
これは記憶の全てを失ったラチェル──シェシュティナが全てを取り戻すまでのお話。
※氷雨そら先生、キムラましゅろう先生のシークレットベビー企画開催作品です( ´艸`)
【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!ー新たなる王室編ー
愚者 (フール)
恋愛
無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!
幼女編、こちらの続編となります。
家族の罪により王から臣下に下った代わりに、他国に暮らしていた母の違う兄がに入れ替わり玉座に座る。
新たな王族たちが、この国エテルネルにやって来た。
その後に、もと王族と荒れ地へ行った家族はどうなるのか?
離れて暮らすプリムローズとは、どんな関係になるのかー。
そんな彼女の成長過程を、ゆっくりお楽しみ下さい。
☆この小説だけでも、十分に理解できる様にしております。
全75話
全容を知りたい方は、先に書かれた小説をお読み下さると有り難いです。
前編は幼女編、全91話になります。
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
【完結】二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました
三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。
優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。
優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。
そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。
絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。
そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる