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18.注進の想い人
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翌日、なんと梓ちゃんが風邪でお休みだった。まぁ、最近、変にあったかい日があったから、そのせいで体調を崩しちゃったんだろうな。後で見せられるようにちゃんとノートとっておこう。
「別役さん」
「あ、宇那木さん」
体育の時間に声を掛けて来たのは、宇那木さんだった。丹田くん絡みで話すことはあったけど、珍しい。
まぁ、ちょうど柔軟体操の相手がいなかったので、ありがたく誘いに乗ることにする。ほら、いつもは梓ちゃんとやってるからさ。
「ねぇ、別役さん」
「うん?」
「丹田くんと、何かあった?」
ほら来た。こういうふうに控えて欲しい質問をズバンと来ちゃうんだよねー。梓ちゃんみたいにスルーしてくれればいいのに。
でも、体育の時間は男子の耳もないし、丁度いいと言えばいいか。
「あったと言えば、あった」
「聞いてもいい?」
「うーん、簡単に言うと、キレて怒った」
「え? 別役さんが?」
そこまで驚くことかなぁ。私だって、怒るときはあるんだよ?
「うん。……その、ここだけの話にしておいて欲しいんだけど、実は、ずっと片想いしてる人がいてさ。最近、丹田くんがよく話し掛けてくるから誤解されて」
「え! 好きな人!? 誰?」
「さすがにそれは言えないよ。ただ、同じ学校だから、何回か見られてたみたいで。だから、あー、話し掛けて来ないでって言ったの」
宇那木さんの目がキラキラしてるのは、予想外のコイバナを発掘したせいだろうなぁ。どうして女子って他人のコイバナ好きなんだろう。いや、私も嫌いじゃないけど。
「なるほどね。じゃぁ、サダサダは最初から見込みがなかったわけ」
「ねぇ、宇那木さん?」
「うん?」
「その『サダサダ』って、丹田くんのこと?」
「もち」
あー、やっぱそうなんだ。
「どうしたの? 別役さん、なんか遠い目になってるけど」
「あー。あのね。こんなこと言うのもアレなんだけど、前に梓ちゃんと話したときに『サダサダ』って『ダサダサ』ってディスってるみたいだねって、笑っちゃったことがあって」
「……」
あれ、もしかして怒らせた? やっぱり丹田くんシンパには言っちゃいけないことだった?
険しい顔で私を見つめる宇那木さんは、ぽつりと呟いた。
「別役さんってさ、鹿宮とよく一緒にいられるよね」
「んん?」
なんで梓ちゃんの話になるんだろう。あ、宇那木さんと梓ちゃん、ついでに丹田くんも同中なんだっけ。それでか。
「鹿宮って、中学の頃、恐れられててさ」
「そうなんだ?」
へー、それは初耳。そう言えば、梓ちゃんの中学の頃の話なんてあんまり聞いたことないかも。
「やっぱり別役さんってスゴイわ」
「え?」
「フツー、どうして?とか詳しく聞く流れじゃない?」
「そうかな? 今は今だし、中学の頃の話を聞いても、そうなんだ、ってぐらいしか言いようがないかなって思ったんだけど」
「もしかして、知らないから?」
宇那木さんは、じっと私を見つめてきた。あれ、もしかして、梓ちゃんってば、中学の頃にめちゃくちゃヤンチャしてたとか? それはそれで知りたいかも。
背中合わせになって、ぐいっと持ち上げられると、なんだかお腹のあたりが伸びる。ちょっと痛い、いや痛いけど気持ちいい。
「鹿宮のうちってさ、母親がいないのは知ってる?」
「それは梓ちゃんから聞いたことあるよー。お母さんがいない代わりに、お父さんが二人いるって」
「知ってんじゃん!」
あ、なんか怒られたっぽい。背中合わせだから表情は分からないけど。
今度は私が宇那木さんを持ち上げる番だ。んっ、いつもの梓ちゃんより、ちょっと重いかな。まぁ、身長あるし、こんなもん?
「あと、鹿宮自身も、レズって噂があってさ」
「んー? それは初めて聞いたかな。ホントなのか後で聞いてみよっと」
「ちょっと、危機感とかないの?」
「やだなぁ、クールな梓ちゃんが、私みたいなのを相手にするわけないじゃん」
宇那木さんってば、分かってないよ。もし梓ちゃんが同性愛者だったとしても、絶対に私は梓ちゃんの守備範囲からは外れてるって。
「中学の頃、ホモップルの親にレズの娘がって、散々からかわれたことがあって」
「え? やだひどい!」
「だけど、囃し立ててたヤツらがさ、一週間と経たないうちに、一切そのことを口にしなくなって」
「誰かに注意されたんだね。うん。そういうのよくないもん」
柔軟運動を続けながら、うんうんと頷いている私に、何故か宇那木さんが残念なものを見るような目を向けてきた。
「鹿宮が脅したって噂なんだけどさ」
「梓ちゃんが凄んだどころなんて、想像しただけで怖いね!」
あ、なんかがっくりと項垂れちゃった。そんなに変なこと言ったかな?
「どうかしたの?」
「いや、なんか徒労感が。――――こんなこと言ったなんて、鹿宮に言うなよ?」
「あ、うん。でも、教えてくれてありがとう」
「はぁ?」
「だって、梓ちゃんの中学時代の話なんて、聞くことあんまりないから」
「あ、そ」
とりあえず、真偽はどうあれ、梓ちゃんが中学時代にいじめを受けてたってことだね。すぐに終わったみたいだけど。
そんな話を聞いちゃったら、私のすることなんて一つだよね。
ずばり! 梓ちゃんとズッ友でいること!
ふふふ、クールビューティな梓ちゃんを独り占めなんて、嬉しいな。怖いなんて言われようが、頼れる友達なんだぞ!
とりあえず、明日、梓ちゃんが登校してきたら、レズ疑惑について確認してみよっと。もし本当だったら、今まで梓ちゃんから恋話がなかったのも納得だもんね。あ、もしかして、カミングアウトできなくて、今まで私に相談がなかったとか? ……あり得る! これをきっかけに梓ちゃんがカミングアウトしてくれたら、梓ちゃんの恋愛相談に私がアドバイスするなんて日も遠くないかも!
「別役さん」
「あ、宇那木さん」
体育の時間に声を掛けて来たのは、宇那木さんだった。丹田くん絡みで話すことはあったけど、珍しい。
まぁ、ちょうど柔軟体操の相手がいなかったので、ありがたく誘いに乗ることにする。ほら、いつもは梓ちゃんとやってるからさ。
「ねぇ、別役さん」
「うん?」
「丹田くんと、何かあった?」
ほら来た。こういうふうに控えて欲しい質問をズバンと来ちゃうんだよねー。梓ちゃんみたいにスルーしてくれればいいのに。
でも、体育の時間は男子の耳もないし、丁度いいと言えばいいか。
「あったと言えば、あった」
「聞いてもいい?」
「うーん、簡単に言うと、キレて怒った」
「え? 別役さんが?」
そこまで驚くことかなぁ。私だって、怒るときはあるんだよ?
「うん。……その、ここだけの話にしておいて欲しいんだけど、実は、ずっと片想いしてる人がいてさ。最近、丹田くんがよく話し掛けてくるから誤解されて」
「え! 好きな人!? 誰?」
「さすがにそれは言えないよ。ただ、同じ学校だから、何回か見られてたみたいで。だから、あー、話し掛けて来ないでって言ったの」
宇那木さんの目がキラキラしてるのは、予想外のコイバナを発掘したせいだろうなぁ。どうして女子って他人のコイバナ好きなんだろう。いや、私も嫌いじゃないけど。
「なるほどね。じゃぁ、サダサダは最初から見込みがなかったわけ」
「ねぇ、宇那木さん?」
「うん?」
「その『サダサダ』って、丹田くんのこと?」
「もち」
あー、やっぱそうなんだ。
「どうしたの? 別役さん、なんか遠い目になってるけど」
「あー。あのね。こんなこと言うのもアレなんだけど、前に梓ちゃんと話したときに『サダサダ』って『ダサダサ』ってディスってるみたいだねって、笑っちゃったことがあって」
「……」
あれ、もしかして怒らせた? やっぱり丹田くんシンパには言っちゃいけないことだった?
険しい顔で私を見つめる宇那木さんは、ぽつりと呟いた。
「別役さんってさ、鹿宮とよく一緒にいられるよね」
「んん?」
なんで梓ちゃんの話になるんだろう。あ、宇那木さんと梓ちゃん、ついでに丹田くんも同中なんだっけ。それでか。
「鹿宮って、中学の頃、恐れられててさ」
「そうなんだ?」
へー、それは初耳。そう言えば、梓ちゃんの中学の頃の話なんてあんまり聞いたことないかも。
「やっぱり別役さんってスゴイわ」
「え?」
「フツー、どうして?とか詳しく聞く流れじゃない?」
「そうかな? 今は今だし、中学の頃の話を聞いても、そうなんだ、ってぐらいしか言いようがないかなって思ったんだけど」
「もしかして、知らないから?」
宇那木さんは、じっと私を見つめてきた。あれ、もしかして、梓ちゃんってば、中学の頃にめちゃくちゃヤンチャしてたとか? それはそれで知りたいかも。
背中合わせになって、ぐいっと持ち上げられると、なんだかお腹のあたりが伸びる。ちょっと痛い、いや痛いけど気持ちいい。
「鹿宮のうちってさ、母親がいないのは知ってる?」
「それは梓ちゃんから聞いたことあるよー。お母さんがいない代わりに、お父さんが二人いるって」
「知ってんじゃん!」
あ、なんか怒られたっぽい。背中合わせだから表情は分からないけど。
今度は私が宇那木さんを持ち上げる番だ。んっ、いつもの梓ちゃんより、ちょっと重いかな。まぁ、身長あるし、こんなもん?
「あと、鹿宮自身も、レズって噂があってさ」
「んー? それは初めて聞いたかな。ホントなのか後で聞いてみよっと」
「ちょっと、危機感とかないの?」
「やだなぁ、クールな梓ちゃんが、私みたいなのを相手にするわけないじゃん」
宇那木さんってば、分かってないよ。もし梓ちゃんが同性愛者だったとしても、絶対に私は梓ちゃんの守備範囲からは外れてるって。
「中学の頃、ホモップルの親にレズの娘がって、散々からかわれたことがあって」
「え? やだひどい!」
「だけど、囃し立ててたヤツらがさ、一週間と経たないうちに、一切そのことを口にしなくなって」
「誰かに注意されたんだね。うん。そういうのよくないもん」
柔軟運動を続けながら、うんうんと頷いている私に、何故か宇那木さんが残念なものを見るような目を向けてきた。
「鹿宮が脅したって噂なんだけどさ」
「梓ちゃんが凄んだどころなんて、想像しただけで怖いね!」
あ、なんかがっくりと項垂れちゃった。そんなに変なこと言ったかな?
「どうかしたの?」
「いや、なんか徒労感が。――――こんなこと言ったなんて、鹿宮に言うなよ?」
「あ、うん。でも、教えてくれてありがとう」
「はぁ?」
「だって、梓ちゃんの中学時代の話なんて、聞くことあんまりないから」
「あ、そ」
とりあえず、真偽はどうあれ、梓ちゃんが中学時代にいじめを受けてたってことだね。すぐに終わったみたいだけど。
そんな話を聞いちゃったら、私のすることなんて一つだよね。
ずばり! 梓ちゃんとズッ友でいること!
ふふふ、クールビューティな梓ちゃんを独り占めなんて、嬉しいな。怖いなんて言われようが、頼れる友達なんだぞ!
とりあえず、明日、梓ちゃんが登校してきたら、レズ疑惑について確認してみよっと。もし本当だったら、今まで梓ちゃんから恋話がなかったのも納得だもんね。あ、もしかして、カミングアウトできなくて、今まで私に相談がなかったとか? ……あり得る! これをきっかけに梓ちゃんがカミングアウトしてくれたら、梓ちゃんの恋愛相談に私がアドバイスするなんて日も遠くないかも!
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