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25.泣きつく想い人
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「おはよー」
「ちょっとユズ、大丈夫なの?」
「あー、大丈夫大丈夫」
梓ちゃんには、昨晩にさっくりと事実だけ説明したので、朝イチで心配されてしまった。
「詳しく聞こうにも、すぐに既読つかなくなるし、心配したんだよ?」
「ごめん、前に梓ちゃんに勧めてもらった動画が、予想以上によく眠れて」
「あたし、何か勧めたっけ?」
「耳かき動画」
「そう言えば、勧めたような気もするわ」
いや、最初はどうなのかな?って思ったんだけどね。ちょっとグロっぽいと思ってたんだけど、BGMがなんか眠りを誘うんだよね。しぶとそうなアレがどうスッキリするのか気になって動画の続きをちゃんと見たかったんだけど、足元の湯たんぽがいい仕事をしたのか、するするっと眠っちゃって。……耳かき動画、おそるべし。あと湯たんぽも。
「まさかリアル変態に遭遇するとはね。……ねぇ、ユズ、宝くじ買わない?」
「宝くじって18歳未満でも買えるの?」
「法律上は問題ないらしいわよ。売り場によっては規制してるらしいけど」
「おー、梓ちゃん物知りー!」
「心配してたけど、大丈夫そうね」
梓ちゃんは優しいなぁ。大丈夫だよ。そもそも、変態さんの見せたかっであろうモノは全然記憶にないし。
むしろね、その前にあった七ツ役くんとのアレコレがね。今のこれも空元気だっていう自覚はある。
「それにしても、春先でもないのにね」
「そうだよね。ああいうのって春先限定だよね」
「寒い中でそんな格好……ドMなの?」
「梓ちゃん、ドMの露出狂なんて救いようがないよ」
――――朝のホームルームでは、しっかりと学校の最寄り駅の痴漢出没について注意喚起が出されたけど、私が被害者ということは欠片も出なかった。ありがたやありがたや。変な注目浴びたくないもんね。
・:*:・・:*:・♪・:*:・・:*:・
今日は部活がない。でも、昼休みに顧問の宇戸先生にポスターの続きを描くからと申請した私と梓ちゃんは、美術室へ向かっていた。
「付き合ってもらっちゃってごめんねぇ、梓ちゃん」
「いいのよ。むしろあれだけ相談に乗ったんだから、結末教えなさいよ」
自販であったかい飲み物を買った私達は、宇戸先生が様子見にやってきたときのためにステンシルの型紙の仕上げを装う。
まぁ、先日印刷したフォント見本とクリアファイルとデザインカッターを出すだけなんだけど。
「昨日、例の本屋でね……」
ショッキングな出来事を誰かに話すと言うのは、なかなかに苦しい。でも、順序立てて話すために自分の中で事実を再認識して整理するから、きっと立ち直るためには必要なことなんだと思う。
私は聞き苦しい声にならないよう、極力感情を抑えて説明をした。
七ツ役くんが落ち込んでる丹田くんを見かねて、何があったのか聞いてきたこと。丹田くんが七ツ役くんに恋愛相談していたこと。丹田くんに告白されたけどお断りしたこと。そして、七ツ役くんに告白して玉砕。一応、今まで通りの関係でいることに了承をもらえたこと。
「あ、あずっ、梓ちゃん。わたしね」
持ってたポケットティッシュは空になったので2つ目を鞄から引っ張り出す。もう涙と鼻水が止まらない。
「告白、したこと、後悔、してないんだ」
ぐすぐす、と鼻を鳴らしている私の言葉を、梓ちゃんは黙って聞いてくれてる。
「ふ、ふられちゃった、けど、やっぱり、まだ、好きだし」
ずびーっと鼻をかむ。私のすぐ横に置かれたゴミ箱は、ティッシュの花でいっぱいだ。
「気象予報士だって、諦めない」
「……不純な動機にしては、捨てないのね」
「確かに、七ツ役くんへの、好意が先に、あったけど……、でも、ここで、やめたら、つながりも、なくなりそう、でっ」
ティッシュを目に押し当て、溢れだした涙を吸い取る。できるだけ目が腫れないようにと思って擦らないよう気をつけているけど、この涙の量じゃ、もう無理だよね……。
「まぁ、どうせ七ツ役くんのこと諦める気はないんでしょ。だったら今まで通りに諦めることはないわよ」
「あずさちゃん」
「そんな目で見ないの。あたしは今まで通り、頑張るユズを生温かく見守るだけだから」
「もう!」
生温かく……って、ユズちゃんひどい。でも、いつもみたいにちょっぴり毒舌でツッコミ入れてくれたから、私の口がちょっとだけ笑いの形になった。本当に、ありがたい親友だよ、梓ちゃんは。
「泣いて話してスッキリした?」
「うん……」
「じゃ、ちょっと待ってて。飲み物のお替りと、ついでにハンカチ濡らしてくるわ」
「ごめんね、梓ちゃん」
「このままユズを外に出して、あたしがいじめたなんて言われたら敵わないしね」
うぅ、本当に梓ちゃんてば優しいんだからっ!
「大人しくしてなさいよ。なんだったらそれ進めててもいいから」
「うん」
梓ちゃんが指差したステンシルの材料は、今日は全くと言っていいほど手をつけられていない。切り抜くために、せめて転写だけでもしておくか、と油性マジックに手を伸ばす。
「げっ」
げっ?
梓ちゃんがそんなこと言うなんて珍しい。廊下になんかあったのかな、と私は首を巡らせて……凍り付いた。
そこには、ひどく困惑した表情の、七ツ役くんが立っていた。
「ちょっとユズ、大丈夫なの?」
「あー、大丈夫大丈夫」
梓ちゃんには、昨晩にさっくりと事実だけ説明したので、朝イチで心配されてしまった。
「詳しく聞こうにも、すぐに既読つかなくなるし、心配したんだよ?」
「ごめん、前に梓ちゃんに勧めてもらった動画が、予想以上によく眠れて」
「あたし、何か勧めたっけ?」
「耳かき動画」
「そう言えば、勧めたような気もするわ」
いや、最初はどうなのかな?って思ったんだけどね。ちょっとグロっぽいと思ってたんだけど、BGMがなんか眠りを誘うんだよね。しぶとそうなアレがどうスッキリするのか気になって動画の続きをちゃんと見たかったんだけど、足元の湯たんぽがいい仕事をしたのか、するするっと眠っちゃって。……耳かき動画、おそるべし。あと湯たんぽも。
「まさかリアル変態に遭遇するとはね。……ねぇ、ユズ、宝くじ買わない?」
「宝くじって18歳未満でも買えるの?」
「法律上は問題ないらしいわよ。売り場によっては規制してるらしいけど」
「おー、梓ちゃん物知りー!」
「心配してたけど、大丈夫そうね」
梓ちゃんは優しいなぁ。大丈夫だよ。そもそも、変態さんの見せたかっであろうモノは全然記憶にないし。
むしろね、その前にあった七ツ役くんとのアレコレがね。今のこれも空元気だっていう自覚はある。
「それにしても、春先でもないのにね」
「そうだよね。ああいうのって春先限定だよね」
「寒い中でそんな格好……ドMなの?」
「梓ちゃん、ドMの露出狂なんて救いようがないよ」
――――朝のホームルームでは、しっかりと学校の最寄り駅の痴漢出没について注意喚起が出されたけど、私が被害者ということは欠片も出なかった。ありがたやありがたや。変な注目浴びたくないもんね。
・:*:・・:*:・♪・:*:・・:*:・
今日は部活がない。でも、昼休みに顧問の宇戸先生にポスターの続きを描くからと申請した私と梓ちゃんは、美術室へ向かっていた。
「付き合ってもらっちゃってごめんねぇ、梓ちゃん」
「いいのよ。むしろあれだけ相談に乗ったんだから、結末教えなさいよ」
自販であったかい飲み物を買った私達は、宇戸先生が様子見にやってきたときのためにステンシルの型紙の仕上げを装う。
まぁ、先日印刷したフォント見本とクリアファイルとデザインカッターを出すだけなんだけど。
「昨日、例の本屋でね……」
ショッキングな出来事を誰かに話すと言うのは、なかなかに苦しい。でも、順序立てて話すために自分の中で事実を再認識して整理するから、きっと立ち直るためには必要なことなんだと思う。
私は聞き苦しい声にならないよう、極力感情を抑えて説明をした。
七ツ役くんが落ち込んでる丹田くんを見かねて、何があったのか聞いてきたこと。丹田くんが七ツ役くんに恋愛相談していたこと。丹田くんに告白されたけどお断りしたこと。そして、七ツ役くんに告白して玉砕。一応、今まで通りの関係でいることに了承をもらえたこと。
「あ、あずっ、梓ちゃん。わたしね」
持ってたポケットティッシュは空になったので2つ目を鞄から引っ張り出す。もう涙と鼻水が止まらない。
「告白、したこと、後悔、してないんだ」
ぐすぐす、と鼻を鳴らしている私の言葉を、梓ちゃんは黙って聞いてくれてる。
「ふ、ふられちゃった、けど、やっぱり、まだ、好きだし」
ずびーっと鼻をかむ。私のすぐ横に置かれたゴミ箱は、ティッシュの花でいっぱいだ。
「気象予報士だって、諦めない」
「……不純な動機にしては、捨てないのね」
「確かに、七ツ役くんへの、好意が先に、あったけど……、でも、ここで、やめたら、つながりも、なくなりそう、でっ」
ティッシュを目に押し当て、溢れだした涙を吸い取る。できるだけ目が腫れないようにと思って擦らないよう気をつけているけど、この涙の量じゃ、もう無理だよね……。
「まぁ、どうせ七ツ役くんのこと諦める気はないんでしょ。だったら今まで通りに諦めることはないわよ」
「あずさちゃん」
「そんな目で見ないの。あたしは今まで通り、頑張るユズを生温かく見守るだけだから」
「もう!」
生温かく……って、ユズちゃんひどい。でも、いつもみたいにちょっぴり毒舌でツッコミ入れてくれたから、私の口がちょっとだけ笑いの形になった。本当に、ありがたい親友だよ、梓ちゃんは。
「泣いて話してスッキリした?」
「うん……」
「じゃ、ちょっと待ってて。飲み物のお替りと、ついでにハンカチ濡らしてくるわ」
「ごめんね、梓ちゃん」
「このままユズを外に出して、あたしがいじめたなんて言われたら敵わないしね」
うぅ、本当に梓ちゃんてば優しいんだからっ!
「大人しくしてなさいよ。なんだったらそれ進めててもいいから」
「うん」
梓ちゃんが指差したステンシルの材料は、今日は全くと言っていいほど手をつけられていない。切り抜くために、せめて転写だけでもしておくか、と油性マジックに手を伸ばす。
「げっ」
げっ?
梓ちゃんがそんなこと言うなんて珍しい。廊下になんかあったのかな、と私は首を巡らせて……凍り付いた。
そこには、ひどく困惑した表情の、七ツ役くんが立っていた。
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