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84.職権乱用な招待(後)
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「アレがそんな素直に言うことをきくタマには思えんがね」
「そこは根気よく、としかご説明のしようがありません」
「根気……か」
意味ありげに呟いた上で、真正面から見据えられると、非常に居心地が悪い。相手は何と言っても王城魔法使いの筆頭……というより、あのヨナの上司だ。無詠唱で魔法を使われたら察知できないし、まぁ、察知されたところで抵抗のしようもないけど。
そこまで考えたところで、右手のバングルの存在を思い出した。護身用という話なので、一応つけっぱなしにしているんだけど、これ、GPS的な機能も内蔵っぽかったよね。既に私がここにいること、バレててもおかしくないよね? 大丈夫?
「ヨナにも同じように変に身構えることなくそう話せているのなら、稀有な存在としか言えぬな。アレの力量は知っているのだろう?」
「希代の魔法使いという話は伺っておりますし、初対面からそう時間を置かずに長距離の転移魔法を見せつけられましたから」
「ふうむ……、それを知ってなお遠慮ない物言い、加えて頭もよく回る。そういうところがヨナの琴線に触れたか」
「……」
沈黙は金。沈黙は金。絶対に前世知識のことなんて匂わせたらだめだ。既に王太子妃殿下とのお茶会でやらかしているんだから、ここは貝になろう。二枚貝だ。ハマグリ食べたい。
「あぁ、そうだった。強引な招待の詫びをしなければな。何か確認したいことや、聞きたいことはあるか?」
これ、余計なことを聞きすぎても、後で守秘義務とか秘密の保持とかで大変になるやつじゃない? むしろ罠?
かと言って、水を向けられた以上、何も尋ねないわけにもいかなそう。私はなんとか頭を絞る。あまり差し障りのない話題は何だろう?
「えぇとですね、塔から出ないまま、魔法騎士の方と連絡を取る方法ってありますか? 確か、エウロさんとおっしゃる方なんですけど」
「請われれば手段を講じるが、その理由はなんだ?」
「王都の色々なお店に詳しそうなので、オススメを教えていただけたらなぁ、と」
「そういうことなら問題ないが、いや、問題か?」
思案を巡らせるように顎に手を当てた筆頭の答えを待っていると、突然響いたドォンという大きな振動に、私は思わず目を瞑った。
「どういうことか聞いてもいいか、筆頭」
目を開けると、筆頭の姿を隠すように……いや、筆頭から私の姿を隠すように、なのかな、見覚えのある背中が聳え立っていた。もちろん、話題に上がっていた希代の大魔法使いサマだ。
……ただ、非常に空気がよろしくない。おそらく怒り心頭に発する、といった感じなのだろう。端的に言えば、彼の周囲の空気が揺らいでいる気がする。いや、違うな。漏れだした魔力がパリパリ言ってる! 漏電! 漏電してるってこれ! ブレーカー落として!
「何、お前が人間らしさを少なからず持ち合わせるようになったというのでな。その原因となったらしいご令嬢を招待させていただいたまでよ」
「誰の許可を得て?」
「お前があまりにも大事に大事に隠すのでな。少々強引な招待になったのは否定せんが」
二人の間に流れる空気……というより、とにかくヨナの暴発しそうな魔力が怖くてそっと後退りして距離を取る。
「――――リリアン、この爺に何を吹き込まれたか知らないが、お前も逃げる気か」
「特に話もされてないけど、逃げたくもなるわよ! ヨナの魔力が漏れてるの! 自覚ないの!? 巻き添えなんてごめんだからね!」
なんだ、後ろに目でもついてるのか。怖い怖い。
そして、私が威勢よく怒鳴りつけたのを見て、なぜか筆頭がくつくつ笑っている。随分と余裕デスね? 貴方が元凶なんですからね?
「……塔に帰るぞ」
「ヨナ、仕事はどうした?」
「制圧対象すべてカエルに変えてきた。あとは残りの人員でどうとでもなる」
制圧対象が何なのかは知らないが、カエルの駆除をさせられるヨナの同僚の幸せを祈っておこう。私のせいではないけど、ある意味その人たちもとばっちり被害者だ。
「なるほど。――――リリアン嬢、今度は豆を甘く煮た甘味を用意しておくから、お茶を飲みにくるといい」
そして、筆頭はヨナをさらに煽るのをやめてもらえませんかね? これから一緒に塔に戻る私が死にそうな目に遭いそうです!
「そこは根気よく、としかご説明のしようがありません」
「根気……か」
意味ありげに呟いた上で、真正面から見据えられると、非常に居心地が悪い。相手は何と言っても王城魔法使いの筆頭……というより、あのヨナの上司だ。無詠唱で魔法を使われたら察知できないし、まぁ、察知されたところで抵抗のしようもないけど。
そこまで考えたところで、右手のバングルの存在を思い出した。護身用という話なので、一応つけっぱなしにしているんだけど、これ、GPS的な機能も内蔵っぽかったよね。既に私がここにいること、バレててもおかしくないよね? 大丈夫?
「ヨナにも同じように変に身構えることなくそう話せているのなら、稀有な存在としか言えぬな。アレの力量は知っているのだろう?」
「希代の魔法使いという話は伺っておりますし、初対面からそう時間を置かずに長距離の転移魔法を見せつけられましたから」
「ふうむ……、それを知ってなお遠慮ない物言い、加えて頭もよく回る。そういうところがヨナの琴線に触れたか」
「……」
沈黙は金。沈黙は金。絶対に前世知識のことなんて匂わせたらだめだ。既に王太子妃殿下とのお茶会でやらかしているんだから、ここは貝になろう。二枚貝だ。ハマグリ食べたい。
「あぁ、そうだった。強引な招待の詫びをしなければな。何か確認したいことや、聞きたいことはあるか?」
これ、余計なことを聞きすぎても、後で守秘義務とか秘密の保持とかで大変になるやつじゃない? むしろ罠?
かと言って、水を向けられた以上、何も尋ねないわけにもいかなそう。私はなんとか頭を絞る。あまり差し障りのない話題は何だろう?
「えぇとですね、塔から出ないまま、魔法騎士の方と連絡を取る方法ってありますか? 確か、エウロさんとおっしゃる方なんですけど」
「請われれば手段を講じるが、その理由はなんだ?」
「王都の色々なお店に詳しそうなので、オススメを教えていただけたらなぁ、と」
「そういうことなら問題ないが、いや、問題か?」
思案を巡らせるように顎に手を当てた筆頭の答えを待っていると、突然響いたドォンという大きな振動に、私は思わず目を瞑った。
「どういうことか聞いてもいいか、筆頭」
目を開けると、筆頭の姿を隠すように……いや、筆頭から私の姿を隠すように、なのかな、見覚えのある背中が聳え立っていた。もちろん、話題に上がっていた希代の大魔法使いサマだ。
……ただ、非常に空気がよろしくない。おそらく怒り心頭に発する、といった感じなのだろう。端的に言えば、彼の周囲の空気が揺らいでいる気がする。いや、違うな。漏れだした魔力がパリパリ言ってる! 漏電! 漏電してるってこれ! ブレーカー落として!
「何、お前が人間らしさを少なからず持ち合わせるようになったというのでな。その原因となったらしいご令嬢を招待させていただいたまでよ」
「誰の許可を得て?」
「お前があまりにも大事に大事に隠すのでな。少々強引な招待になったのは否定せんが」
二人の間に流れる空気……というより、とにかくヨナの暴発しそうな魔力が怖くてそっと後退りして距離を取る。
「――――リリアン、この爺に何を吹き込まれたか知らないが、お前も逃げる気か」
「特に話もされてないけど、逃げたくもなるわよ! ヨナの魔力が漏れてるの! 自覚ないの!? 巻き添えなんてごめんだからね!」
なんだ、後ろに目でもついてるのか。怖い怖い。
そして、私が威勢よく怒鳴りつけたのを見て、なぜか筆頭がくつくつ笑っている。随分と余裕デスね? 貴方が元凶なんですからね?
「……塔に帰るぞ」
「ヨナ、仕事はどうした?」
「制圧対象すべてカエルに変えてきた。あとは残りの人員でどうとでもなる」
制圧対象が何なのかは知らないが、カエルの駆除をさせられるヨナの同僚の幸せを祈っておこう。私のせいではないけど、ある意味その人たちもとばっちり被害者だ。
「なるほど。――――リリアン嬢、今度は豆を甘く煮た甘味を用意しておくから、お茶を飲みにくるといい」
そして、筆頭はヨナをさらに煽るのをやめてもらえませんかね? これから一緒に塔に戻る私が死にそうな目に遭いそうです!
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