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ツタと落下と眠り母《ひめ》
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助けを求める声の主を探した私の目が、ある一点を捉えた。
西棟の屋上、小屋根の端に誰かがぶら下がっている。そのすぐ上では2つの人影がおろおろとしているのが見えた。助けようと動くわけでもなく、何をしたら良いのか分からずまごついているようだ。
「ザイル、ヨーク! 何をしている! シオンの所まで手が届かないんだったらロープになるものを探せ!
シオン! これから誰か近くにいるものを向かわせるから、持ち堪えろ!」
私の隣で大声で指示を飛ばしたヴァルは、私のことを放置して屋内へと走り出した。私も後を追おうとして、迷う。彼の後を追ったところで何ができる?
私は踵を返して、今にも力尽きて落ちそうな少年――シオンの真下に急いだ。地上からでも、シオンの腕が小刻みに震えているのが分かる。庇にかろうじて引っ掛かっている手も、限界に近いように見えた。
(……早く、早く)
祈りながらも、万が一の時には私が受け止められないかと考えた。もちろん危険なことだけど、あの少年がそのまま地面に落ちてしまうよりはいいはずだ。
じりじりと救助を待つ時間は長く感じられた。
でも、大きな物音と、どやどやと数人の声がする。ロープを持った数人と、その後ろにいるヴァルの姿が屋上に見えた。
何とか間に合った……と思ったのに、私の安堵はあっさり裏切られた。
乾いた大地を遮るもののないまま渡ってきた風が、砂埃を巻き上げて吹き付けたのだ。私の服の裾をはためかせ、救助に来た人の視界を奪う。
もちろん、限界まで耐えていた少年も例外じゃない。自分の身体が風に揺らされた反動に耐えられなかったのだろうと思う。
でも、そんなことは後付けの推測だ。このとき、私の頭の中はとにかくあの少年を助けることしかなかった。
(『誰』でもいいから手伝って!!)
少年が地面に激突するまで、どれぐらいの猶予があったのかは分からない。私はただ、自分の身体で受け止めようと腕を大きく広げた。
うまく着地点に滑り込めたようで、少年の身体が私の胸にドン、と強い衝撃を与える。さすがに受け止めきれるなんてできなくて、私はたまらず尻もちをついた。いや、尻もちというのは正しくない。後ろに倒れた私は、背中を地面に打ち付けてしまって、ひゅっと呼吸が止まった。一瞬、視界がブラックアウトしたけれど、再びクリアになった視界では、青空の中、自分の上に座る少年と目が合った。すると、少年の黒檀の瞳がじわりと潤む。直後、号泣が響いた。
「――――ありがとう」
私に縋りつく少年の背中を撫でながら、口をついて出たのは感謝の言葉だった。
少年に無情な追い打ちをかけたあの風のあと、もう一陣の風が吹いて建物にぶつかり、自然では考えにくい上昇気流を生み出して少年の落下速度を少しなりとも緩めたのが『視えた』。そして、硬いはずの地面が、まるで着地の衝撃を和らげるかのようにたわんだのも『感じ取れた』。
おそらく、それがなければ、私かこの少年か、あるいはその両方が深刻なダメージを負っていたに違いない。まぁ、私の腰と背中はめちゃくちゃ痛いけど。
*+:。.。:+**+:。.。:+**+:。.。:+**+:。.。:+*
「まったく、なんて馬鹿なことをしやがる!」
罵声が耳に痛い。寝台に身を預けた怪我人に罵声を浴びせるなんて……いや、これは私が悪い。素直に認めたくはないけれど。
「えぇと、大事がなかったので、いいんじゃないかと」
ささやかな反抗で、聞こえないように呟いた自己弁護の言葉は、どうやらヴァルにはきっちり聞こえていたらしい。めちゃくちゃ睨まれた。
「大事がなかった、だと? 起き上がれねぇ身体で何を言ってやがる! その程度で済んだからいいようなものの、『大事』があったら、どうなるか分かってんのか!」
そうして続けられる説明は、私が頭を打ってしまったら、という仮定のもとに、起こり得る様々な問題の数々だった。うん、これだけ予測を立てられるってことは、ヴァルは頭の回転が速いってことだよね。
「最悪の場合はまた戦争だぞ! 分かってんのか!」
抵抗が無駄だと悟った私は、ただひたすらに頷いていた。首振り人形と言っても過言じゃない。
そして、ヴァルの説教テーマが、新たに「国民の命を預かる王族の心得」に移行した頃、雷の落ちるこの部屋に勇敢な来訪者が現れてくれた。
「ヴァル様。失礼いたしますぞ」
立派な白鬚を蓄えた老人は、ヴァルの剣幕に怯える様子もなかった。この白鬚には覚えがある。
「ロングウェイ、どうした?」
「はい、都より使者が参っております。どうやら陛下直々に遣わされた者のようで」
ヴァルの顔が一層険しくなったのが見えた。親子で仲が悪いのか、それとももっと別の問題があるのかは分からない。
「分かった。すぐ行く。――――お前はそこで大人しくしていろよ!」
私に特大の釘を刺し、ヴァルは老人――ロングウェイと共に退室していった。
残された私は助かったとばかりに安堵の息を洩らし、そこでようやくロングウェイのことを思い出した。私がこの城へ到着してすぐに会った人だ。おそらくは、この城でヴァルを補佐するような位置にいるのだろう。
とにかく、タイミングよく(説教から)救ってくれたロングウェイ老人に感謝して、私は目を閉じた。
コンコン
目を閉じたんだから、休みたかった。これでヴァルに用事のある人が入れ違いに訪れたのなら、ちょっとぐらい怒ってもいいはずだ。
「どうぞ」
私の許可の声に応じて入ってきたのは、つい先ほど姿を見たばかりの――おそらくは私のお客様だった。
「えぇと、シオン、ザイル、ヨーク、でしたかしら?」
リスティアの王女としては、ヴァルに対するように砕けた言葉を使うのも憚られ、よっこいしょ、と猫を被って優しい声を出すことにする。
「「「ごめんなさいっ!」」」
一斉に頭を下げた3人の素直さが微笑ましくて、私は休息よりも彼らと過ごすことを選んだ。
「いいのよ。それよりも、もう少し近くに来てくれないかしら。入口付近に立たれてしまっては、少し話しにくいわ」
私の提案に顔を見合わせておずおずと近寄る三人の様子に、ヴァルの説教でささくれた心が癒える。
「えぇと、シオン?」
「はい!」
浅黒の肌に、くるくるとカールした黒髪の少年が緊張しきった声を上げる。彼が私が受け止めた少年だ。
「あなたの方に怪我はなかったかしら?」
はい、と力なく頷いたシオンだけれど、指には白い包帯を巻いている。これが怪我でなくて何だというのだろう? おそらく、ぶら下がっている時に擦り傷でも作ってしまった程度の軽いものなんだろうけど。
「ザイル、ヨーク?」
「「はい」」
肩まで伸ばしたサラサラの黒髪を後ろで束ねた少年と、短く切った髪がつんつんと立っている少年が同時に答えた。この国に多い浅黒の肌は二人共通だ。
「えぇと、どちらがザイルで、どちらがヨークかしら?」
私の問い掛けに、二人は顔を見合わせた。いやほら、ヴァルの呼び掛けで名前を覚えただけだし。
「僕です。僕がザイル。こっちがヨークです」
サラサラ頭の方が礼儀正しく答えた。雰囲気を見る限り、彼がこの3人の中でのリーダー役みたい。
「誠に申し訳ありませんでした。その代わりと言ってはなんですが、僕らで出来ることがありましたら、何でも言ってください。せめてもの償いをしたいんです」
ザイルの予想外の申し出に、私は面食らう。彼ら自身で出した償いの方法なのか、それとも他の誰かの入れ知恵なのかは知らないけれど、どうやって彼らの気が済むようにすればいいんだろう。
「……そうね、話し相手になってくれないかしら? 私の怪我がある程度よくなるまででいいの。なんでもいいから、話してくれない?」
困ったように互いを窺う3人に、庇護欲なのかしれないが、私はいつの間にか王女らしい話し方というより、幼子に対する話し方になっていた。
「たとえば、あ、敬語とかはいらないわ。そうね、三人でいつもどういうことをして遊んでいるのか、とか」
曖昧な笑みを浮かべて、それでも口を開こうとしない三人に対し、私はやり方を変えることにする。
「……そうね、無理な話よね。あぁ、私はここで一日を暇に無駄に過ごさなきゃいけないのね」
拗ねた様子を見せると、慌てて口を開いた少年がいた。ザイルだ。
「待ってください。えぇと、どれがいいでしょうか。僕らの自己紹介ですか? 最近の僕らの遊びですか? それともこの城の暴露話とか?」
うん、焦ったことがよく分かる。最後の選択肢はどう考えてもよくないだろう。一番興味があるけれど。
「そうね、自己紹介じゃつまらないから、『他己紹介』というのはどうかしら? 他の人のことを紹介するの」
私の提案に、今までしおらしく、ほとんど発言していなかったヨークが意地の悪い笑みを浮かべた。
「そーゆーことなら、オレから言わせろよ。――――シオンは十二歳。あのモーリィおばさんの息子なんだけど、本人は要領悪くて失敗ばっかするんだ。一言で表すとドジだな。ザイルはお貴族様の息子……って言っても、貴族になったのは父親の代だから、元商人の気質が強くて損得勘定がうまい。お前、十五歳だっけ?」
「なんだよ、ドジって! ヨークだって失敗することあるじゃないか」
「そうだ、自分がれっきとした貴族に生まれたからと言って、周りを見下すのはどうかと思う。ここに送られた点では同じ穴の貉でしょう!」
あまりにひどい紹介に、反論する二人。そこから口論に近い言い合いが続いてしまったので、私は彼らの言葉を吟味しながら情報を整理していくことにした。
西棟の屋上、小屋根の端に誰かがぶら下がっている。そのすぐ上では2つの人影がおろおろとしているのが見えた。助けようと動くわけでもなく、何をしたら良いのか分からずまごついているようだ。
「ザイル、ヨーク! 何をしている! シオンの所まで手が届かないんだったらロープになるものを探せ!
シオン! これから誰か近くにいるものを向かわせるから、持ち堪えろ!」
私の隣で大声で指示を飛ばしたヴァルは、私のことを放置して屋内へと走り出した。私も後を追おうとして、迷う。彼の後を追ったところで何ができる?
私は踵を返して、今にも力尽きて落ちそうな少年――シオンの真下に急いだ。地上からでも、シオンの腕が小刻みに震えているのが分かる。庇にかろうじて引っ掛かっている手も、限界に近いように見えた。
(……早く、早く)
祈りながらも、万が一の時には私が受け止められないかと考えた。もちろん危険なことだけど、あの少年がそのまま地面に落ちてしまうよりはいいはずだ。
じりじりと救助を待つ時間は長く感じられた。
でも、大きな物音と、どやどやと数人の声がする。ロープを持った数人と、その後ろにいるヴァルの姿が屋上に見えた。
何とか間に合った……と思ったのに、私の安堵はあっさり裏切られた。
乾いた大地を遮るもののないまま渡ってきた風が、砂埃を巻き上げて吹き付けたのだ。私の服の裾をはためかせ、救助に来た人の視界を奪う。
もちろん、限界まで耐えていた少年も例外じゃない。自分の身体が風に揺らされた反動に耐えられなかったのだろうと思う。
でも、そんなことは後付けの推測だ。このとき、私の頭の中はとにかくあの少年を助けることしかなかった。
(『誰』でもいいから手伝って!!)
少年が地面に激突するまで、どれぐらいの猶予があったのかは分からない。私はただ、自分の身体で受け止めようと腕を大きく広げた。
うまく着地点に滑り込めたようで、少年の身体が私の胸にドン、と強い衝撃を与える。さすがに受け止めきれるなんてできなくて、私はたまらず尻もちをついた。いや、尻もちというのは正しくない。後ろに倒れた私は、背中を地面に打ち付けてしまって、ひゅっと呼吸が止まった。一瞬、視界がブラックアウトしたけれど、再びクリアになった視界では、青空の中、自分の上に座る少年と目が合った。すると、少年の黒檀の瞳がじわりと潤む。直後、号泣が響いた。
「――――ありがとう」
私に縋りつく少年の背中を撫でながら、口をついて出たのは感謝の言葉だった。
少年に無情な追い打ちをかけたあの風のあと、もう一陣の風が吹いて建物にぶつかり、自然では考えにくい上昇気流を生み出して少年の落下速度を少しなりとも緩めたのが『視えた』。そして、硬いはずの地面が、まるで着地の衝撃を和らげるかのようにたわんだのも『感じ取れた』。
おそらく、それがなければ、私かこの少年か、あるいはその両方が深刻なダメージを負っていたに違いない。まぁ、私の腰と背中はめちゃくちゃ痛いけど。
*+:。.。:+**+:。.。:+**+:。.。:+**+:。.。:+*
「まったく、なんて馬鹿なことをしやがる!」
罵声が耳に痛い。寝台に身を預けた怪我人に罵声を浴びせるなんて……いや、これは私が悪い。素直に認めたくはないけれど。
「えぇと、大事がなかったので、いいんじゃないかと」
ささやかな反抗で、聞こえないように呟いた自己弁護の言葉は、どうやらヴァルにはきっちり聞こえていたらしい。めちゃくちゃ睨まれた。
「大事がなかった、だと? 起き上がれねぇ身体で何を言ってやがる! その程度で済んだからいいようなものの、『大事』があったら、どうなるか分かってんのか!」
そうして続けられる説明は、私が頭を打ってしまったら、という仮定のもとに、起こり得る様々な問題の数々だった。うん、これだけ予測を立てられるってことは、ヴァルは頭の回転が速いってことだよね。
「最悪の場合はまた戦争だぞ! 分かってんのか!」
抵抗が無駄だと悟った私は、ただひたすらに頷いていた。首振り人形と言っても過言じゃない。
そして、ヴァルの説教テーマが、新たに「国民の命を預かる王族の心得」に移行した頃、雷の落ちるこの部屋に勇敢な来訪者が現れてくれた。
「ヴァル様。失礼いたしますぞ」
立派な白鬚を蓄えた老人は、ヴァルの剣幕に怯える様子もなかった。この白鬚には覚えがある。
「ロングウェイ、どうした?」
「はい、都より使者が参っております。どうやら陛下直々に遣わされた者のようで」
ヴァルの顔が一層険しくなったのが見えた。親子で仲が悪いのか、それとももっと別の問題があるのかは分からない。
「分かった。すぐ行く。――――お前はそこで大人しくしていろよ!」
私に特大の釘を刺し、ヴァルは老人――ロングウェイと共に退室していった。
残された私は助かったとばかりに安堵の息を洩らし、そこでようやくロングウェイのことを思い出した。私がこの城へ到着してすぐに会った人だ。おそらくは、この城でヴァルを補佐するような位置にいるのだろう。
とにかく、タイミングよく(説教から)救ってくれたロングウェイ老人に感謝して、私は目を閉じた。
コンコン
目を閉じたんだから、休みたかった。これでヴァルに用事のある人が入れ違いに訪れたのなら、ちょっとぐらい怒ってもいいはずだ。
「どうぞ」
私の許可の声に応じて入ってきたのは、つい先ほど姿を見たばかりの――おそらくは私のお客様だった。
「えぇと、シオン、ザイル、ヨーク、でしたかしら?」
リスティアの王女としては、ヴァルに対するように砕けた言葉を使うのも憚られ、よっこいしょ、と猫を被って優しい声を出すことにする。
「「「ごめんなさいっ!」」」
一斉に頭を下げた3人の素直さが微笑ましくて、私は休息よりも彼らと過ごすことを選んだ。
「いいのよ。それよりも、もう少し近くに来てくれないかしら。入口付近に立たれてしまっては、少し話しにくいわ」
私の提案に顔を見合わせておずおずと近寄る三人の様子に、ヴァルの説教でささくれた心が癒える。
「えぇと、シオン?」
「はい!」
浅黒の肌に、くるくるとカールした黒髪の少年が緊張しきった声を上げる。彼が私が受け止めた少年だ。
「あなたの方に怪我はなかったかしら?」
はい、と力なく頷いたシオンだけれど、指には白い包帯を巻いている。これが怪我でなくて何だというのだろう? おそらく、ぶら下がっている時に擦り傷でも作ってしまった程度の軽いものなんだろうけど。
「ザイル、ヨーク?」
「「はい」」
肩まで伸ばしたサラサラの黒髪を後ろで束ねた少年と、短く切った髪がつんつんと立っている少年が同時に答えた。この国に多い浅黒の肌は二人共通だ。
「えぇと、どちらがザイルで、どちらがヨークかしら?」
私の問い掛けに、二人は顔を見合わせた。いやほら、ヴァルの呼び掛けで名前を覚えただけだし。
「僕です。僕がザイル。こっちがヨークです」
サラサラ頭の方が礼儀正しく答えた。雰囲気を見る限り、彼がこの3人の中でのリーダー役みたい。
「誠に申し訳ありませんでした。その代わりと言ってはなんですが、僕らで出来ることがありましたら、何でも言ってください。せめてもの償いをしたいんです」
ザイルの予想外の申し出に、私は面食らう。彼ら自身で出した償いの方法なのか、それとも他の誰かの入れ知恵なのかは知らないけれど、どうやって彼らの気が済むようにすればいいんだろう。
「……そうね、話し相手になってくれないかしら? 私の怪我がある程度よくなるまででいいの。なんでもいいから、話してくれない?」
困ったように互いを窺う3人に、庇護欲なのかしれないが、私はいつの間にか王女らしい話し方というより、幼子に対する話し方になっていた。
「たとえば、あ、敬語とかはいらないわ。そうね、三人でいつもどういうことをして遊んでいるのか、とか」
曖昧な笑みを浮かべて、それでも口を開こうとしない三人に対し、私はやり方を変えることにする。
「……そうね、無理な話よね。あぁ、私はここで一日を暇に無駄に過ごさなきゃいけないのね」
拗ねた様子を見せると、慌てて口を開いた少年がいた。ザイルだ。
「待ってください。えぇと、どれがいいでしょうか。僕らの自己紹介ですか? 最近の僕らの遊びですか? それともこの城の暴露話とか?」
うん、焦ったことがよく分かる。最後の選択肢はどう考えてもよくないだろう。一番興味があるけれど。
「そうね、自己紹介じゃつまらないから、『他己紹介』というのはどうかしら? 他の人のことを紹介するの」
私の提案に、今までしおらしく、ほとんど発言していなかったヨークが意地の悪い笑みを浮かべた。
「そーゆーことなら、オレから言わせろよ。――――シオンは十二歳。あのモーリィおばさんの息子なんだけど、本人は要領悪くて失敗ばっかするんだ。一言で表すとドジだな。ザイルはお貴族様の息子……って言っても、貴族になったのは父親の代だから、元商人の気質が強くて損得勘定がうまい。お前、十五歳だっけ?」
「なんだよ、ドジって! ヨークだって失敗することあるじゃないか」
「そうだ、自分がれっきとした貴族に生まれたからと言って、周りを見下すのはどうかと思う。ここに送られた点では同じ穴の貉でしょう!」
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