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1章 乙女ゲームに転生したようです

20話 ギルド登録

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ギルド。
それは冒険者を支援する団体であり、また商人を支援する場でもある。依頼人と冒険者の仲介や商人と冒険者の仲介を担っており、国と協力することもあるという大変大きなものだ。
ここでは平民のための身分証明書、いわゆるギルドカードの発行も行っており、それは国外や他領へ出るためのパスポートのような役割も果たしている。

わたくしが今日発行しにいくイオとしての身分証明がこれに該当する。
今の格好は碧眼に栗色のウェーブがかかった髪を一つにまとめており、顔に火傷の痕があるためフードのついた長めのローブで顔を隠している。平民の服を着ており、誰も公爵令嬢エリューシアだとは思わないだろう。
そして今ワタシが向かっている場所こそギルドの王国本部である。もちのろん1人きり。1人で行動しすぎてわたくし全然喋れてないよ。全部一人言。いや口に出してないからセーフ。
イオは平民、それも孤児設定なので豪華な公爵家の馬車に乗るのはいくら拾ってもらった設定でもいかがなものかと歩き続けることさらに数十分。
ようやく見えてきた大きな建物。戸を押しあけるとそこは広い空間が広がっていた。入って正面に受付カウンターがずらりとならびお姉さんが対応している。もう冒険者の人はクエストを受け仕事に行っている人が多いのかあまりいなかった。受付のお姉さんもカウンターの数のわりに少なく、奥にある酒場にもちらほらとしかいなかった。酒場にいる冒険者達は談笑したりお姉さんは書類の処理をしているようだったが、しかしフードを目深にかぶったチビワタシが1人で入ってくると一気に視線が集まる。
見ないでやめて!視線が痛い!沈黙しないで!談笑してていいよぉ。内心そんなことを考えながら仕方がないので一番近いカウンターに向かう。
ワタシはイオ。孤児でたまたまイルファス公爵に魔力もちという事で拾われ魔導院に入ることになった。小さい頃に火事で両親を亡くし頼れる人がおらず1人で生きてきた。顔の火傷はその時におったもの。口は悪いが敬語もつかえるしある程度の知識はあり公爵家で勉強もした。
よし、大丈夫。設定を頭で反芻し役になりきる。

「すみません、ギルドカードの発行をお願いします。」

カウンターが少し高めだったので一生懸命背伸びをしてお姉さんに告げる。

「…はっえ、とー…。」

一瞬の間のあとに歯切れ悪く困った顔をするお姉さん。

「無理でしょうか?」

再度問いかけると、困った顔のまま少々お待ち下さい、と中に入っていく。上司に確認しにいったのだろう。6歳が1人で登録しにくるとは思わないよね。

しばらくして、うさぎミミのはえたかわいらしいお姉さんを連れて戻ってくる。はわー!!ケモミミ!!かわいい!この世界に獣人がいるとは聞いていたけど初めて見たよ…。

「お待たせしました。はじめまして副ギルドマスターのアユルですわぁ。イオちゃんですよね?お話は伺っておりますわぁ。」
「はい、イオです。」

副ギルマス…。このかわいらしくのほほーんとした獣人さんが。まぁ人を見かけで判断しちゃだめだよね。
それに、事情を知っているなら話が早い。

「では、こちらにおいでください~。ここでは目立ちますし、カウンターも高いでしょう?」

お!ありがたい!視線は相変わらずだし背伸びも疲れたしほんとありがたい。


案内されたのは小部屋。副ギルマス自ら相手をしてくれるようだ。ここに向かう途中で声をかけた職員が、何やら箱を持ってきて中身を机に準備していく。ワタシのために申し訳ないがここは甘えておこう。
そして準備されたのは真っ白なカードとリング、それから石が嵌め込まれそのまわりを魔法陣が囲むように描かれた石板のようなもの。

「これはぁギルドカードとギルドリングって言って身分証明になるものよぉ。イオちゃん名義で作りますねぇ。このことを知っているのは私とギルドマスターだけなので安心してくださいねぇ。秘密はちゃんと守りますわぁ。ギルマスは今出掛けているのでぇまたあいさつしたいっていってましたよぉ。」

ゆったりした話方で説明してくれる副ギルマス。なんとなく、だけどわざとな感じがするが指摘するのは野暮だろう。

「ありがとうございます。助かります。」
「じゃあ早速はじめましょうかぁ。」

にっこりと人のいい笑みを浮かべる副ギルマスに、こくりと頷く。

「まず、この石のところに一滴血を垂らしてぇ?」

石板の嵌め込まれた石を指差すので、風の魔法でスッと指先に軽く傷をいれポタッと垂らす。

「あらあら、ほんとに聞いていた通りですのねぇ。コントロールがすごいですわぁ。」

感心したように呟く副ギルマスは、持っていた針を机におく。あ、それでやるものだったのか。まぁいっか。

「それじゃあ作るわねぇ。ちょっと待っててちょうだい。」

石板にカードとリングを置いた副ギルマスはその上に手をかざす。

『彼女の名はエリューシア。イオとして頑張る者。彼女の意をくみ、示せ。』

呪文を唱えると、ポワッと光る石板とその他もろもろ。光がやんだそこにあったのは、青みがかった銀色のカードと、赤色で綺麗な紋様が刻まれたリングだった。

「はい、イオちゃんのカードとリングよぉ。名前もしっかりイオになっているはずだから確認してみてねぇ。
カードはクリアしたクエスト数とかその詳細が表示されるわぁ。リングが身分証ね。両方提示するようになっているところもあるから両方持ち歩いてねぇ?色は結構てきとーについてるっぽいからぁほんと色んな色があるけどあまり気にしないでねぇ。」

差し出されたそれを受け取り、カードはポケットに、リングは指にはめる。大きいと思っていたリングだが、指にはめるとサイズがピッタリに調整された。
すげぇ。色も好きなので満足である。もしかしたらその人の好みに勝手に合わせてくれてるのかもしれない。

「クエストはあまり受けないと思うけどぉ、基本自己責任だから気をつけてねぇ?受注するときに受付嬢の判断で受注させないこともあるし、相談にも乗ったりするけどねぇ。一応のランクはD、C、B、A、S、SSの順で高いって感じでつけてあるからぁ、それを参考にしてねぇ。」

クエストの説明もしてくれたので、いつか大きくなったら行ってみようと思う。止められなければ。

「とりあえず、こんなものかしらぁ?」
「ありがとうございました。副ギルドマスターさん。」
「あらぁ、アユルでいいのよぉ?」
「…アユルさん、ありがとうございました。」

アユルでいいと言われたので、再度言い直すと、ふわっと微笑んでくれるアユルさん。はぁ、かわいい。

「では、今日はこれで失礼します。」
「ええ、また何か困ったことがあったらいつでも来てねぇ。ギルマスも会いたがってたからぁ。」
「はい。」

アユルさんに出口まで送ってもらうと、幾分か和らいだまわりの視線に見送られ、ワタシはまた家までの道のりを歩きはじめた。遠い。
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