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2話
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ぱちり、目を覚ます。
見慣れた天井。私ことフィリア―チェ・リザレの寝室だ。
背中が引きつる。痛みはあまりないことから鎮痛剤でも打ってあるのだろう。目が覚めた時に傷が治っていた記憶がない。
「また、死ねなかった…。」
ぽつりと呟く。目が覚めるといつも思う。あれで死ねていれば楽なのにと。
「お嬢様!目が覚めたのですね!」
ぼんやりと宙を眺めていると侍女の声が聞こえる。
「あれからどれくらい経ちましたか?お母様とお父様は?」
「三日です。その、旦那様と奥様は…。」
「…お父様はいらっしゃるかしら?」
「はっはい!呼んでまいります!」
言いづらそうに言葉を詰まらせた侍女に問うとどこか安堵したように部屋から出て行った。
起き上がることもできずまたしばらくぼうっとしていると、ガチャっとノブを回す音が聞こえる。
「フィリアーチェ…。」
お父様が私の名前を小さく呼び、扉の近くでとまったようだった。
「お父様?」
「すまなかった、フィリアーチェ。痛くはないか?もしかしたら、痕が残るかもしれないと…。」
「こちらこそすみません。これじゃあ嫁の貰い手が…。お母様は大丈夫ですか?」
「そんなことは気にしなくていい!リリアは…。」
私にとってもはや定型となった確認をする。結果は分かっているのに…。
先ほどの侍女のようにお母様の名前を呟いたきり言葉を詰まらせてしまうお父様。
「なんとなく分かっています。大丈夫ですよ。」
「っ…。離婚が成立した。リリアは殺人未遂で…。」
今は牢にいる、と聞こえるかどうかの声量で続ける。結果をみれば、侯爵ともあろうお方が娘一人を前にして言いよどんでしまったのは仕方のないことかも知れない。見た目だけで言えば私は幼い子供だということも要因だろう。
「これからいかがいたしますか?私はこんなだし…。早いところ養子をとるなり再婚なさるなり…無理にでも私と結婚してくださる方を探さなければいけませんね。」
「フィリアーチェ、無理をしなくていい。今はただ休んでくれ。まだ完治していないんだ、元気になったら…。」
「お父様、私は大丈夫です。私のことは気にせずお父様と侯爵家のことを考えて下さい。」
どうせあと十年もすれば死ぬんだから、と心の中で呟く。さすがにこれを生みの親に直接告げるほど親不孝ではない。いや、死にたいと思っている時点で駄目かもしれないが…。
「そういうわけにはいかない!フィリアーチェは俺の子なんだ。俺はフィリアーチェに幸せになって貰いたいと思っている。」
「お気持ちだけ受け取っておきます。そろそろ起きているのがつらいので休んでもいいですか?」
これ以上ここで話していてもなにも進展しないので会話を強制終了させる。起きているのがつらいのも嘘ではない。
「ああ、悪い。今後の話はまた今度しよう。ゆっくり休んでくれ。」
一瞬気まずそうな表情を浮かべたお父様はそういうと寝室から出て行った。
「よく、言うわ…。」
一人になった寝室で呟いた声は案外大きく響き、虚しさに口を閉じる。
今後の話なんてするまでもなく決まっているくせに、毎回お父様は私と話をしたがる。私に対して大なり小なり罪悪感があるのだろう。自分は外に愛人と子供まで作って楽しくしている間に一応正妻だった女との子が他でもない正妻に殺されかけたのだから。
…これからのことは、決まっているのだ。
「私は受け継がなかった綺麗なルビーの瞳…。」
お父様はその内再婚するだろう。相手は伯爵家の未亡人だったか…。子供ができる前に旦那が亡くなってしまい実家に戻っていた幼馴染の女性、だったはずだ。
好きでもない女の面影が残る猫目に端正な顔。好きでもない女と同じアメジストの瞳。唯一自分と同じほのかに赤みがかった胡桃色の髪。それがお父様からみた私の見た目の評価だろう。
対して、これから来る予定の愛人との子は自分の瞳の色を受け継ぎ、愛した人の髪色に愛した人と似たおっとりとした可愛らしさを持つ女の子。
私の居場所がなくなるのは必然なのだ。私だけが、浮いている。
「早く死にたいな…。」
今までの人生、いろいろと試した結論である。
初めの数回の人生は自ら罪を犯して、自業自得で苦しみ死んだ。それ以降は死なないよう善行をしたり大人しくしていたつもりである。でも駄目だったのだ。もう諦めて早く死にたいという結論になるのも仕方がないだろう。
「はぁ、少し休もう…。」
見慣れた天井。私ことフィリア―チェ・リザレの寝室だ。
背中が引きつる。痛みはあまりないことから鎮痛剤でも打ってあるのだろう。目が覚めた時に傷が治っていた記憶がない。
「また、死ねなかった…。」
ぽつりと呟く。目が覚めるといつも思う。あれで死ねていれば楽なのにと。
「お嬢様!目が覚めたのですね!」
ぼんやりと宙を眺めていると侍女の声が聞こえる。
「あれからどれくらい経ちましたか?お母様とお父様は?」
「三日です。その、旦那様と奥様は…。」
「…お父様はいらっしゃるかしら?」
「はっはい!呼んでまいります!」
言いづらそうに言葉を詰まらせた侍女に問うとどこか安堵したように部屋から出て行った。
起き上がることもできずまたしばらくぼうっとしていると、ガチャっとノブを回す音が聞こえる。
「フィリアーチェ…。」
お父様が私の名前を小さく呼び、扉の近くでとまったようだった。
「お父様?」
「すまなかった、フィリアーチェ。痛くはないか?もしかしたら、痕が残るかもしれないと…。」
「こちらこそすみません。これじゃあ嫁の貰い手が…。お母様は大丈夫ですか?」
「そんなことは気にしなくていい!リリアは…。」
私にとってもはや定型となった確認をする。結果は分かっているのに…。
先ほどの侍女のようにお母様の名前を呟いたきり言葉を詰まらせてしまうお父様。
「なんとなく分かっています。大丈夫ですよ。」
「っ…。離婚が成立した。リリアは殺人未遂で…。」
今は牢にいる、と聞こえるかどうかの声量で続ける。結果をみれば、侯爵ともあろうお方が娘一人を前にして言いよどんでしまったのは仕方のないことかも知れない。見た目だけで言えば私は幼い子供だということも要因だろう。
「これからいかがいたしますか?私はこんなだし…。早いところ養子をとるなり再婚なさるなり…無理にでも私と結婚してくださる方を探さなければいけませんね。」
「フィリアーチェ、無理をしなくていい。今はただ休んでくれ。まだ完治していないんだ、元気になったら…。」
「お父様、私は大丈夫です。私のことは気にせずお父様と侯爵家のことを考えて下さい。」
どうせあと十年もすれば死ぬんだから、と心の中で呟く。さすがにこれを生みの親に直接告げるほど親不孝ではない。いや、死にたいと思っている時点で駄目かもしれないが…。
「そういうわけにはいかない!フィリアーチェは俺の子なんだ。俺はフィリアーチェに幸せになって貰いたいと思っている。」
「お気持ちだけ受け取っておきます。そろそろ起きているのがつらいので休んでもいいですか?」
これ以上ここで話していてもなにも進展しないので会話を強制終了させる。起きているのがつらいのも嘘ではない。
「ああ、悪い。今後の話はまた今度しよう。ゆっくり休んでくれ。」
一瞬気まずそうな表情を浮かべたお父様はそういうと寝室から出て行った。
「よく、言うわ…。」
一人になった寝室で呟いた声は案外大きく響き、虚しさに口を閉じる。
今後の話なんてするまでもなく決まっているくせに、毎回お父様は私と話をしたがる。私に対して大なり小なり罪悪感があるのだろう。自分は外に愛人と子供まで作って楽しくしている間に一応正妻だった女との子が他でもない正妻に殺されかけたのだから。
…これからのことは、決まっているのだ。
「私は受け継がなかった綺麗なルビーの瞳…。」
お父様はその内再婚するだろう。相手は伯爵家の未亡人だったか…。子供ができる前に旦那が亡くなってしまい実家に戻っていた幼馴染の女性、だったはずだ。
好きでもない女の面影が残る猫目に端正な顔。好きでもない女と同じアメジストの瞳。唯一自分と同じほのかに赤みがかった胡桃色の髪。それがお父様からみた私の見た目の評価だろう。
対して、これから来る予定の愛人との子は自分の瞳の色を受け継ぎ、愛した人の髪色に愛した人と似たおっとりとした可愛らしさを持つ女の子。
私の居場所がなくなるのは必然なのだ。私だけが、浮いている。
「早く死にたいな…。」
今までの人生、いろいろと試した結論である。
初めの数回の人生は自ら罪を犯して、自業自得で苦しみ死んだ。それ以降は死なないよう善行をしたり大人しくしていたつもりである。でも駄目だったのだ。もう諦めて早く死にたいという結論になるのも仕方がないだろう。
「はぁ、少し休もう…。」
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