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「なぁーんて、そんなわけないでしょ?………サファイアさん」

 わたしが声をあげると、天井にある小さな柵のついた窓の隙間から影が伸びる。

「お呼びでしょうか、奥さま」
「ルビーさんをウーデラハイト公爵家に回し、護衛を行なわせてください。おそらく宰相さまたちが動き始めるはずです。決して“冤罪”をかけられぬよう、慎重に動いてくださいね」
「承知いたしました」
「あと、わたしが屋敷を出てから何時間経ちましたか?」
「72時間です」
「そう」

 3日間も眠りこけていたなんて普通では考えられないけれど、多分魔道具を使用されてしまったのだろう。あまり状況は芳しくないと見るべきかもしれない。

「質問は以上です。行動、よろしくお願いします」
「承知いたしました」

 影はふっと消え、その代わりと言わんばかりに1枚の紙が落とされる。

(………本当に、政権争いって怖いわね)

 そこに綴られるのは、1週間と3日をかけてサファイアが集めたであろうわたしが望む情報。

「さぁて、蛇が出るか龍が出るか。まあ、龍でしょうけれど………」

 紙に包まれていた銀色の鍵を弄んだわたしは、食べ終えた夕食に手を合わせて部屋の端に食事を避ける。

 シトリンの瞳を隠して大きな息を何度も吸っては吐いてを繰り返す。

 怖い。

 怖くないわけがない。
 目を閉じた瞬間に、何度も何度も最悪の場合が頭の中をいくパターンも駆け抜ける。

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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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