婚約破棄が始まりの鐘でしたのよ?

水鳥楓椛

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◻︎◇◻︎

 今から5年前、この王国には周辺諸国でも一目置かれる好青年がいた。

 白銀の美しい髪に、空を抜き取ったかのような透き通ったアクアマリンの瞳を持つ青年は、辺境の地で鍛え抜かれた舞のように美しく、それでいて残酷なまでの強さを誇る剣術を扱うことができた。

 名をリオネル。

 彼の英雄は、貴公子は、国によって殺された———。

▫︎◇▫︎

「うふふっ、こんなに簡単に引っかかって大丈夫なのかしら。この国の未来が心配だわ」
「そんなこと、微塵も思っていないだろうに」
「あら?何をおっしゃいますの?わたくしもこの国の貴族の娘。故国の心配くらいちゃんと致しますわ」

 銀髪の少女の言葉に、金髪の青年は苦笑する。

 ここは、とある舞踏会会場の2回部分。ドレープを何十にも重ねて優美さを演出しているカーテンの後ろ側。
 そこにいる1人の青年と1人の少女は、自国へと思いを馳せ、小さく吐息をこぼす。

 ラトビア王国は建国2000年以上の大国であり、周辺諸国よりも圧倒的な軍事力と経済力を持つ国であった。
 いくつもの国を属国とし完膚なきまでの実力差で全てを収めるその姿は百獣の王をも思わせる。

「まあでも、間違いなくこの国は終焉を迎える。楽しい舞踏会ができるのも今日までさ。何と言っても、1週間後の夜会ではアレを起こすのだから」
「そうですわね」

 全ての貴族の行動が、言葉が、余す事なくしっかりと記憶されていく。
 その風景を、その現状を、金髪の青年は寂しそうに、心苦しそうに、見つめ、そして諦めたように嘆息する。

「1人でも気がつけば………、いや、全ての人間が気づかなければならなかったんだ」
「気が付いたとしても、それはもはや全てが手遅れですわ。生き残るのは我が派閥の家紋半分のみ。その事実は覆せませんわ」
「分かっている」

 少女と青年の言葉を咎める人間は存在していない。
 舞踏会会場の2階に潜む人々は、終焉に向けた列車にこれ幸いにと乗り込み、人生の楽をしようと他人を嘲笑う者たちに憐れみの笑みを浮かべたのだった。

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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