婚約破棄が始まりの鐘でしたのよ?

水鳥楓椛

文字の大きさ
7 / 8

7

しおりを挟む
 アレクの言葉にこくんと頷いたオリヴィアは、静かに涙を流す。

 長い5年だった。
 短い1週間だった。

 復讐を誓った日はあんなにも遠く感じられるのに、決行の鐘が鳴り響いてからは、あまりにも日々が早く流れ去っていった。
 明日からの日々は、どのように流れていくのだろうか。
 胸の中に不安しかないと言えば嘘になるが、そのくらい、オリヴィアの心の中は不安でいっぱいだ。

「リヴィア、俺を頼って。君のためなら、俺はなんだってできる」

 切実な声に、オリヴィアは一瞬きょとんとする。

「………愛しているんだ。俺が君のそばにあり続けたのは、共に復讐を誓ったからじゃない。ただ、———愛しているからだ。直向きなところも、努力家なところも、完璧主義なところも、何もかも愛してる」

 オリヴィアをそっと離し、彼女の前で跪いたアレクは困ったようにくしゃっと笑う。
 その笑みは、もう何年も見ていなかった在りし日の、無垢な笑み。

「リヴィア、俺の女王。大丈夫、君ならなんだってできる。………足手纏いにしかなれない俺は、復讐を終えた君にとって不要な産物だってわかってる。王家の血筋を色濃く引いている俺が君の隣に立つことが、国民へ悪い影響をあたる可能性が高いこともわかっている。———でも、絶対に邪魔しないから、君の足手纏いにならないように努力するから、だからっ、婚約者じゃなくなってしまった俺を、俺でも、君のそばに置き続けてはくれないだろうか………」

 アレクの今にも泣きそうな声に、言葉に、オリヴィアはきょとんとした顔をした。

「………なんで、あなたはわたくしがあなたを捨てる前提でお話を進めているのですか?」
「え?だって、俺、旧王家の王子さまだよ?元王さまのお気に入りの王子さまだよ?国民にめちゃくちゃ嫌われてるよ?それに、最後1週間の大詰めの期間、父上の視線を君から除けるためとは言え、婚約も破棄しちゃったし………、」
「………………そんなことでわたくしがあなたを捨てるとお思いで?」
「え、だって、リヴィアって現実主義者だし………、」

 しどろもどろなアランに、オリヴィアは満面の笑みで絶対零度の眼差しを向ける。

「わたくしを勝手に薄情者に仕立て上げないでくれるかしら。というか、あなたはわたくしがお慕いしている人を差し置いて、他の人間を隣に置くような倫理観や道徳感のへったくれもないような情けのない人間だと思っているのですか?心外ですわ。わたくしの夫となるお方はわたくしが決める。そこに、他の人間の意見などは不要です」

 オリヴィアは力強い口調で言い切ると、アレクと視線を合わせるために、床に膝をついた。

「あなたを愛しています、アレク。わたくしと共に、この国のために命を捧げてくださいませ」

 オリヴィアが柔らかな花のような美しい微笑みを浮かべた瞬間、アレクは涙を流す。

「あぁっ、まかせろっ、」

 震えるくちびるで歪ながらにも幸せそうな笑みを作った王配は、後に、この国を発展させる大いなる研究結果を出したらしい。
 自らの両親の行いを払拭するかの如く、馬車馬のように働き、たったの5年で結果を出して見せた彼は、美しく賢い女王の側だけにあり続けたらしい———。

*************************

読んでいただきありがとうございました🐈🐈🐈

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

愛を騙るな

篠月珪霞
恋愛
「王妃よ、そなた一体何が不満だというのだ」 「………」 「贅を尽くした食事、ドレス、宝石、アクセサリー、部屋の調度も最高品質のもの。王妃という地位も用意した。およそ世の女性が望むものすべてを手に入れているというのに、何が不満だというのだ!」 王妃は表情を変えない。何を言っても宥めてもすかしても脅しても変わらない王妃に、苛立った王は声を荒げる。 「何とか言わぬか! 不敬だぞ!」 「……でしたら、牢に入れるなり、処罰するなりお好きに」 「い、いや、それはできぬ」 「何故? 陛下の望むままなさればよろしい」 「余は、そなたを愛しているのだ。愛するものにそのような仕打ち、到底考えられぬ」 途端、王妃の嘲る笑い声が響く。 「畜生にも劣る陛下が、愛を騙るなどおこがましいですわね」

婚約破棄のお相手は

あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、ギリアム王子が平民の婚約者に婚約破棄を宣言した。 幼い頃に「聖女では」とギリアムの婚約者として引き取られたものの、神聖力が発現しなかったロッティナ。皆は婚約破棄されるのも当然だと思っていたが……。

その支払い、どこから出ていると思ってまして?

ばぅ
恋愛
「真実の愛を見つけた!婚約破棄だ!」と騒ぐ王太子。 でもその真実の愛の相手に贈ったドレスも宝石も、出所は全部うちの金なんですけど!? 国の財政の半分を支える公爵家の娘であるセレスティアに見限られた途端、 王家に課せられた融資は 即時全額返済へと切り替わる。 「愛で国は救えませんわ。 救えるのは――責任と実務能力です。」 金の力で国を支える公爵令嬢の、 爽快ザマァ逆転ストーリー! ⚫︎カクヨム、なろうにも投稿中

婚約破棄を伝えられて居るのは帝国の皇女様ですが…国は大丈夫でしょうか【完結】

恋愛
卒業式の最中、王子が隣国皇帝陛下の娘で有る皇女に婚約破棄を突き付けると言う、前代未聞の所業が行われ阿鼻叫喚の事態に陥り、卒業式どころでは無くなる事から物語は始まる。 果たして王子の国は無事に国を維持できるのか?

花嫁に「君を愛することはできない」と伝えた結果

藍田ひびき
恋愛
「アンジェリカ、君を愛することはできない」 結婚式の後、侯爵家の騎士のレナード・フォーブズは妻へそう告げた。彼は主君の娘、キャロライン・リンスコット侯爵令嬢を愛していたのだ。 アンジェリカの言葉には耳を貸さず、キャロラインへの『真実の愛』を貫こうとするレナードだったが――。 ※ 他サイトにも投稿しています。

襲ってきた王太子と、私を売った婚約者を殴ったら、不敬罪で国外追放されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

【短編】捨てられた公爵令嬢ですが今さら謝られても「もう遅い」

みねバイヤーン
恋愛
「すまなかった、ヤシュナ。この通りだ、どうか王都に戻って助けてくれないか」 ザイード第一王子が、婚約破棄して捨てた公爵家令嬢ヤシュナに深々と頭を垂れた。 「お断りします。あなた方が私に対して行った数々の仕打ち、決して許すことはありません。今さら謝ったところで、もう遅い。ばーーーーーか」 王家と四大公爵の子女は、王国を守る御神体を毎日清める義務がある。ところが聖女ベルが現れたときから、朝の清めはヤシュナと弟のカルルクのみが行なっている。務めを果たさず、自分を使い潰す気の王家にヤシュナは切れた。王家に対するざまぁの準備は着々と進んでいる。

処理中です...